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#56.弟には勝てない(母/娘) ※ストーリー改変


「ねえママ。どうして私だけなの」

昔からすごく疑問に思っていること。
悪いのは断然弟の方なのに。

弟は男の子だから。
あんたは女の子だから。
私はいつもそう言われておしまいだった。

昔の言葉に【男は仕事 女は家庭】と言う、令和の今では考えられない古い言葉がある。
性別役割分業とも言う当時の日本の美意識らしい。

幼少期をその考えの元で育ったお母さんは子供の私達を叱る時もそれに則(のっと)った罰を与えていた。

男の弟へ与える罰の典型例。
それは家事や手伝いを増やす事。
言わば将来労働へ向けた体力作りとして体を使うものがほとんどだ。それか悪さをした手または足を1回だけ叩く程度のものだった。

「なら私は?」
「そりゃもちろん」

(……えぇ)

家庭のお仕置きといえばそう。
それはやっぱり“お尻ペンペン”だ。

私が悪さをするとその報いは全てお尻に返される。

弟もそれはよく知っていたから、個人的な悪事はまだしくも、姉弟喧嘩の時は私にとって最低最悪なものだった。

言わなくてもわかると思うけど、私だけお尻を出して、弟はそれを見ているだけ。

昔の言葉には【喧嘩両成敗】って言葉もあるから喧嘩の時は罰せられる所を互いに見合うこれもお母さんの方針。

言い争いが見つかると、事情聴取の後に手を出した弟の腕が1回叩かれ、次は私が睨まれる。

「どうして弟は手を叩くだけなの?」

「弟は男だからお尻ペンペンはやらない、お尻ペンペンは女の子のお仕置きでアンタは女の子だから」

「なにそれ不公平」

「わがまま言わないの、さぁ次はあんたよ」

やだやだと抵抗するも私はそのままお母さんの膝に吸い寄せられていく。手首はまるで綱引きの様に。腕はピンと張られて。

それでも力は加えられて「お尻よ」と持ち上げれる。

どんなに踏ん張っても大人の力に勝てる訳の無い私の末路は数秒引き伸ばされただけで特に変わりは無かった。

限界を迎えた手首が痺れて力を抜くと私はふっとお母さんの膝にうつ伏せに乗せられる。
そうして嫌という程うんとうんとお尻のお仕置きを貰う事となる。

「ねえ嫌!」
目の前で弟が見ている。
私の嫌がる姿を見てニタニタと。
先に手出したのあっちじゃん、なんで私の方がこんな思いしなきゃならないの。 

私にとってこの惨めな感情と格好は本当に嫌なものだった。

リビングのソファに深く座るお母さん。
その膝に泣く泣くうつ伏せにされると、スカートを捲られてパンツを下にずらされて私はお尻を剥き出しにされる。
このお仕置きの準備の時点で暴れちゃうし既に恥ずかしくて庇っちゃうのに。
お母さんは「よく見てもらいなさい」と弟を呼んで私に許しを請わせる。最低な母親だ。

喧嘩の恨みが残る弟は中々私を許さない。
いい気味だ、ざまあみろと言う元気する感じる。

私のお尻は真っ赤になるまで横から注目を受け続けるのだ。

「まだだよおねえちゃん」
ぱちんぱちんと浴びる平手に歯を食いしばって耐える。肘付き用に高くなったソファの端を両手で掴んで耐えて、足先同士を絡めて体を固めて何とか耐える。

痛くない。痛く。
こんなの全然痛くない…。でも。

でも。

……

「うゎぁん痛いよー!ままぁー!」
見られている事も頭からすっぽ抜けて私はいつもこうなってしまうんだ。

泣いてしまうと少しの休憩を与えてくれる。
けれどそれは弟からの注目を無理に思い出させるに過ぎない。

私のあわてふためく顔や無力な姿をにんまりほくそ笑んでやがる奴が居ると思うと悔しい。悔しい。悔し過ぎる。だから私はお尻ペンペンなんかに屈さない。負けない。どんなに痛くても私は弟にごめんなさいなんて言わない。絶対。絶対に。

そう誓いを立てる瞬間でもあった。

「いくよ」
再開するお仕置き。 「ぁん!!」
休んでも始まればすぐにお尻は火を吹いた。

あっ待って。お尻痛い。痛すぎる。だめ。

嗚呼!!あぁっやっぱりダメだ。

「痛いっ!!痛いよ、あぁん!ままっ!やめて」
「まだ許してもらえてないでしょ?」
「もうヤダ、見るな!バカ、あっち行けぇ!」

微かに残る羞恥心を怒りのままにぶつける。

私はお母さんへ弟を部屋の外へ出すように訴えた。
そんな事一度も叶ったことないのに。

「なんてこと言うの!減らず口!」 「きゃあっ」

ばちん。音が変わった。一層力を込められる。
そうすると直ぐに私は泣き出しそうになって。それから10打たれる内に必ず限界がやって来る。

思わず泣き声を漏らしてしまう。

「ひひっ」
こっちを向く影がニヤニヤと見つめている。
弟の手前、強く強くいようと誓ったはずなのに。

それはお母さんから受けるペンペンに容易く挫かれ、遂にはこう叫んでしまうのだ。

「ごめんなさい!ごめんなさいーーッ!!!」

数えずともきっと過ぎた100お尻叩き。
見られながらわんわんと泣いて許しを請う私はさらに数を重ねられる。
「謝るのは私じゃないでしょ」と続けられて。

腫れるお尻。体力の尽きた手足。泣きじゃくってしまう顔。懸命によじる身体。
そして、受け入れてしまうお尻ペンペン。

もう“恥ずかしい”さえ何も頭に残されていない。

とにかく終わって欲しい。
その一心で私はごめんなさいの冒頭に弟の名前をくっつけた。

「ウウッ…ヒクッ…ッグス」

「おねえちゃん。反省できたの?」
「した!した、しました!」
「もうしない?」「しませんっ!!」
「本当に?」「はいっ!はい、、!」

「うーん。…まだかな」
「えぇ?!!」

「ひひ、もう少しママのお膝で泣いておいでよ」

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