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もも
2019年12月31日 13:58
第8話『石が流れて木の葉が沈む』 妹からのLINE。 もちろん未読無視だ。見る必要がない。ブロックするのを忘れていた。 そのそばから電話。これも、妹。 出たくない。出たくない。出たくない。 無視を決め込んだ私に、母から電話。こういう手を使うのは予測の範囲内。 はい? 「もしもしお姉ちゃん、お母さんだけど。」 はい。で? 何ですか? 「何ですかって、もう、何で
2019年12月29日 15:04
第7話 『雨の降る日は天気が悪い』 仕事を辞めた。 寿退社でもヘッドハンティングでもなく、ただ、辞めた。辞めたくて辞めた。 意地になって、やめるもんかって思って、今の仕事を続ける気持ちはなかった。そこまで仕事に縛られる必要はないと思うし、私の代わりはいくらでもいる。 しばらくは失業保険をもらいながら生活することにして...と考えている。 自宅暮らしだから、家賃や光熱水費は困らな
2019年12月22日 17:41
第6話『空しきけぶり』 あれから、30年だ。 まさか自分が中年になっているなんて...思ってはいたけれど、こんなに早いものだったなんて、信じられない。信じられなくても、時は過ぎる。 まだ、私は一人でいる。結婚はしていない。何回かしようか...と考えたことはあるが、踏み切れないままの私に諦めをつけ、相手が去っていった。誰のせいでもない。 最近では友だちの結婚披露宴の招待はなく、職場の
2019年12月4日 13:18
第5話『道草を食う』 小さい頃から早起きが苦手で、学生時代は遅刻魔だった私は、未だに朝に弱く、会社へもギリギリだ。 大音量の目覚まし時計。それも3個。これらを毎朝、必死に止める。1個目の枕元の物は軽い目覚めを。一瞬の目覚めの後、再び眠る。3分後くらいに2個目が激しい音で、クローゼットでけたたましく騒ぐ。そして3個目はキッチンで私を呼ぶ。早く起きろと私を呼ぶ。 3個目が鳴ると、ようやく私