見出し画像

#1妊娠

妻と結婚

私(ヨキッチ)と妻(ミミ)は「転職したら結婚しよう」と約束していたため、私が転職先の内定をもらったときから、結婚式の準備を進め、転職してすぐに結婚した。控えめに言ってとても順風満帆な生活だった。

ヨキッチら家を買う

 どこかで「人は暇なときに余計なことをしてしまう」と聞いたことがある。私は転職したばかりで、仕事もプライベートもとても暇だった。駅に近い素敵な賃貸マンションに引っ越したばかりなのに、私は「将来子どもを育てる予定があれば、早い時期から計画的に終の棲家(すみか)を探すべきだ」と考えて、毎晩深夜まで物件を探した。
 特にミミよりも私のほうが家が欲しいという思いが強く、お互いの希望条件を話し合う際に何度もケンカをしてしまった。
 ある日、不動産業者とミミと私の3人で物件を探しているときに、ある程度条件にあった良い物件が見つかった。実際に内見をして、「良い物件だね」と話したが、いざ本当に購入するか相談を始めると、突然、ミミは泣いてしまって、話しができる状態ではなくなった。
 家に帰宅してから、ミミに泣いた理由を尋ねると「まだ子どもが居ないのに家を買ってしまった後に、子どもができなかったときのことを想像してしまった。実際にそうなった場合に、将来子ども部屋として使おうと思っていた空き部屋がある家に、生涯住むのは辛い。」と答えてくれた。
 確かにその通りだ。私はそれから物件探しを止めた。
 1ヶ月後、あんなことがあったのを忘れて、ふとよく使っていた物件探しのサイトで、いつもの希望条件を入力すると、これまでの中で1番条件の良い物件がヒットした。早速、ミミに報告し「もし子どもができなかったり、何か問題があれば家を売ればいいよ」と伝えると、トントン拍子に話が進み、家の購入が決まった。

妻が妊娠

 家を購入・転居して2ヶ月後、ミミから妊娠の報告があった。待ち望んでいた妊娠にお互い喜んだ。
 ミミは毎日たまひよのアプリで妊娠の経過を確認している。たまひよアプリには同じ時期に妊娠した者だけが閲覧できる掲示板が存在し、そこで互いの状況を確認したり、時には悩み事を相談するらしい。楽しそうな掲示板だけど、実際には辛辣なコメントやドロドロとした家族の揉め事などが投稿がされ、ミミは読む度に気分が落ち込むと言っていた。(そんな掲示板見なければいいのに…)

出生前検査

 ミミは妊婦健診で定期的にお腹の中の赤ちゃんの様子を検査する。出生前検査は次の3通りある。

  1. 妊婦健診で全員が受ける普通の超音波検診

  2. 染色体を調べる遺伝子学的検査(希望性)

  3. 精密胎児超音波検査(希望性)

ミミが受けた検査は1と3のみ。
 私は2の検査も勧めたが、「こどもに何か問題があることを知るのが怖い」という理由から検査を断られた。ミミにばかり負担がかかってしまっているし、物件探しの一件から、精神的に不安定な様子であったため、これ以上強く意見は言えなかった。
 ちなみに少し古いデータになるが2の検査の内、流産のリスクがない非確定的検査の受検率はアメリカでは約70%(2010年)に対して、日本では1.7%(2008年)しかないらしい。アメリカでは全妊婦に受験の選択肢が提供されるべきという国の方針があり、公費で受検できる。一方で、日本では全妊婦への選択肢提示は推奨されておらず、受検費用の補助制度も存在しない。もちろん、ミミも病院から検査の案内はなかった。倫理的問題もあると思うが、個人的には重要な決定については常に選択肢は多いほうが良いと考えている。すべて医師の裁量に委ねられるのは不公平だ。





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?