見出し画像

あのこは貴族

混沌の2021年に本作品が見られたタイミングに感謝。オリンピックも何もかもすっ飛ばされた今、作り手の意図がいい意味でぶっ壊され、研ぎ澄まされた感じに仕上がったんじゃないかな。

冒頭、タクシー運転手に皮肉を言われる華子と、そのセリフから作品のテーマ(ジェンダーや階層)がそっと織り込まれてる。ただ、格差社会に焦点を置いているかというと、そうでもなくて「違う世界/階層で生きる人々の邂逅」と「出会いによる化学反応」についてがメインなのかなと。私自身、美紀っぽさも華々しくもないけれど共感する場面がそこここにあって複雑な気持ちになってしまった。

KO大学に入学した美紀が感じるいわゆる外部生、内部生の壁は「愚行録」にもあったはず。私はありがたいことに中学~高校と私立に進学させてもらっていたので、内部生/外部生の仕組みや、タガが外れたお金持ちの同級生はちらほら見かけていた(誕生日プレゼントが島、夏休み中は軽井沢別荘で過ごす、親が芸能人、モンスーンカフェ借り切って誕生会やるような方々)

原作小説を追って読み比べると2度おいしい。監督と脚本家の手腕なのか、省略されたエピソードも上手に昇華されていると思う。


好きだったところ
・幸一郎と華子の初デートがまさに「恋に落ちた王女様」
・お見合いどう?といった義兄との会話の合間にジャムをなめる華子。家事手伝いとして(家事はしないが)刺繡や着物の整理をする姿。彼女の箱入りっぷりを丁寧に描いている
・華子と美紀との再会は道端で。原作のようなレストランにはいかず、美紀の部屋へ招かれる。タクシーではなく、自分の足で歩いて帰る華子
・自転車ふたり乗りをする美紀、また帰路に同じような2人組女子に出くわす華子、手の振り方が皇室
・体温のない男、幸一郎。唯一寝床のシャツに浮き出た肩甲骨だけがアイデンティティを感じさせるあたり(傍にいるのは美紀)

門脇麦、水原希子、高良健吾、山下リオ。若手の静かな演技が光っているし、彼らの才能を引き出した監督も素晴らしい。バイオリニスト逸子を演じた石橋 静河もよかった。最後の正装はずるいでしょう、惚れるね。


女と女の闘いなんて砂上の楼閣。友情も愛情も砂みたいにもろい。たまにお互い水をあげる、それだけで十分なんだけどね。華子と美紀は何年たっても笑顔で会えるんだろうな。幸一郎というハブがいてよかった!と思える関係性、とても尊い。


よかったnote感想


原作レビュー


門脇麦インタビュー



いただいたサポート費用はnoteのお供のコーヒー、noteコンテンツのネタ、映画に投資します!こんなこと書いてほしい、なリクエストもお待ちしております。