手放してくれた、優しくてずるいあなたへ
手放された、と気づいた瞬間、喉まで苦さがせり上がってきた。
わたしは、執着心が強い。気に入った曲は繰り返し聴いてしまうし、好きな食べものは何日続いても飽きない。
だから、手放されない限り手放せない。醜く腐っていくのを放置して、誰かが指摘してくれるまで気づけない。
きっと、とっても鬱陶しかっただろうな。
いつも与えてもらうばかりで、今度は自分が何かしたかった。
元気だったらそれでいい。ただもしも困ってたら何か役に立てないかな、と思った。
余計なお世話だったかもしれない。
少なくともわたしの役目じゃなかった。
結局最後の最後まで与えてもらうばかりだった。
できることなんて全然なかったのに、ただ自惚れてた。
ほんと空回りばかりで申し訳ない。
美化された記憶がうしろ髪を引く。
言ってもらった言葉を思い出して、踏ん張れた日が何日あったことだろう。
不安でわんわん泣いてるところを、どれだけ受け止めてもらっていたんだろうか。
それでも、前を向く。
人を慮れる素敵な人になるし、笑顔溢れる豊かな人生を送ってみせます。
どうか、あなたも。
日常からそっと逃避行する時間に使わせていただきます。