【好チーム同士の一戦】カタールW杯 グループD 第1節 デンマーク×チュニジア|マッチレビュー
前回大会王者フランスがいるグループD。その背中を追う2つのチームが衝突。
デンマークは最近メキメキと力をつけている好チームだ。攻守で組織的で色んな手札を持っている。対するチュニジアも非常に好チームだった。ただ引いてカウンターを狙う戦いをするのではなく、しっかり保持も出来るチーム。
そんな好チーム同士の一戦は当然好ゲームだった。点数こそ入らなかったが、ゲーム内容は色んな駆け引きがあり、戦術的にもレベルの高いゲームとなったので是非見て欲しいとオススメしたい!
それではゲームを振り返っていきましょう。
▪️慌てずひっくり返したチュニジア
序盤から非常に強度の高いスピード感のあるゲーム展開となった。
デンマークが積極的にプレッシングに出た。しかしチュニジアは慌てることなく、むしろプレスをしっかり受け止めながら、利用しながら、前進していった。
デンマークは2トップに加えて、中盤のエリクセンを前に押し出すことでチュニジアの3バックへプレスに出た。しかしなかなかファーストプレスがチュニジアのボールの出所を抑えることはなかった。
チュニジアは3バックがボールを持つと、GKもしっかり使いながらビルドアップ(GKダーメンのビルドアップスキルがもう少し高かったらもっと前進できた印象!)。
これによりデンマークの3人の前プレをずらしていった。またそこにCHがボールに関与してボールを動かす。
こうしてチュニジアは後方でボールを動かしている間にWBが高い位置へ上がり、デンマークの5バックをピン留め。デンマークはプレスにでる出る3人とピン留めされたDFラインがやや間伸びしていく。
その中盤に空いたスペースを利用して縦パスを差し込む狙いも持ちつつも、序盤の1番の狙いは長いボールからのセカンド回収からの前進だった。
前線で待つ9番のジュバリや25番スリマリはフィジカルも強く長いボールの体制も高い。またデンマークはDFラインと前が分断された状態なのでなかなかセカンドボールも拾えずに、チュニジアが前向きで勢いを持って敵陣に進入していった。
敵陣に入れば背後を積極的に狙い、ボールをロストすればすぐさまトランジションで試合序盤押し込む展開に持ち込んだ。
▪️ビルドアップを活性化させたホイビュルク
勢いよくプレッシングに出て攻勢に出たデンマークは、それを逆手にチュニジアに押し込まれてしまい、出鼻をくじかれてしまうことに。
しかしデンマークも十分な実力のあるチーム。しっかり我慢する時間を凌ぎ、反撃の準備を整えていった。
デンマークは前半30分ごろからボールを保持時間を増やし、ハイテンポのゲーム展開を落ち着かせにいく。
◎最終ラインに数的優位を
チュニジアはボール非保持の振る舞いは5-2-3のミドルブロックを形成し、最終ラインの厚みを保ちながら、デンマークのボールを外へ外へ追いやることだった。
デンマークのボール保持はチュニジアと同様に5バックのWBを高い位置に押し出して、後方を3バックと2CHでボールを動かすことだった。
チュニジアの3トップはそこまでボールに出ないので、ある程度デンマークの3バックには時間が出来た。しかし問題はそこから先。中央を締められておりなかなか前進の糸口をつかめかった。
そこで動き出したのがCHのホイビュルクだった。この男やっぱりめちゃくちゃいい選手。潰せるし走るし、ビルドアップの出口も用意しちゃう。攻守でデンマークを支える男だ。皆さん要チェックです。
中盤のホイビュルクが3バックのラインまで落ちてボールをピックアップする。これによりデンマークの最終ラインが4バックとなり、チュニジアの3トップにズレを作り出す。
ボールを受けたホイビュルクが最終ラインから鋭い縦パスを打ち込んで前進するシーンも。また右CBアンデルセンお得意のロングフィードからチュニジアの最終ラインをブレイクするシーンも。少しづつデンマークの攻撃が活性化されていった。
また斜めに落ちるホイビュルクの動きに合わせて、エリクセンもサイドに流れて揺さぶりにかかる。エリクソンが左の大外レーンに流れることで、左WBのメーレをより高い位置へ押し出す。そんな左WBメーレがボールを受けて左サイドを抉るシーンが増えていった。
◎ハーフスペースからの前進に
デンマークの保持率が上がっていくと、中盤のホイビュルクは最終ラインに落ちるアクションを辞めて中盤にとどまる選択をするようになった。
チュニジアの5バックの手前。中盤2枚の脇であるハーフスペースからの侵入を行うために、チュニジアの選手たちのより中へ意識を向けるために、ホイビュルクがサイドに流れたり、列を降りる動きを辞めたのだ。
それによりチュニジュアのハーフスペースが開いていった。後半は特にね。
左のハーフスペースには前半負傷したデライネに代わって入ったデライネが。右のハーフスペースは右WBニッセンが中に入ってボールを引き出し(WBが中に入るとオルセンがサイドに流れる流動性も見せたデンマーク)、敵陣で前向きの状況を作り攻め込むことに成功していったデンマーク。
後半よりデンマークがゲームを支配していった。
◾️保持もできるチュニジアの強み
より自陣に下がることとなったチュニジアだが、決してやられっぱなしの展開には持ち込まなかった。ロングカウンターからチャンスを作る。また守備の強度や粘り強さは試合が終わるまで保たれていた。
選手交代による強度を保ったことはもちろん、デンマークのボールを取り上げた時しっかりボールを保持する時間を作れたこともチュニジアにとっては大きかった。
チェニジアはプレス耐性も十分あるチーム。奪ったボールを
しっかり逃し、自分たちが落ち着く時間も作った。そしてそれは体力を回復する時間にもなり終始強度を落とさずに、危ないシーンでは体が張れたし、厚みを持ったカウンターからチャンスも作り出せたと思う。
おわり
はじめにも触れたがこの試合スコアが動くことはなかった。デンマークは後半得点を取るべく、最終ラインの枚数を一枚減らして4-3-3へ変更しより前に出た。得点は奪えなかったもののこのチームの完成度というか、いろんな引き出しのあるチームだなと思わせてくれた。正しくクラブチーム化されたチームだった。
チュニジアの戦いぶりは正直驚かされた。状況に応じてこちらも色んな引き出しのある好チームだった。残りのグループリーグも楽しませてもらえそうだ。
この両チームが世界王者にどんな戦いぶりを見せるのか本当に楽しみだ。