見出し画像

【足りなかったボールを奪う術】|アストン・ヴィラ×マンチェスター・シティ|23/24プレミアリーグ第15節|マッチレビュー

シティにとっては、それはそれは苦しい90分。試合を振り返るには非常に辛い90分。しかし、こういう戦いを振り返るからこそ普段見えないチームの一面や課題を見ることが出来るのも、一つのチームを長らく観察することの楽しみの一つなんですよね!

それでは結果、内容共にアストン・ヴィラに圧倒された試合を振り返っていきましょう!

▪️圧縮された[4-4-2]プレス

この日シティのアンカーに入ったのはジョン・ストーンズ。累積で出場停止のロドリに代わってストーンズがそのポジジョンに入った。ストーンズの他にジャック・グリーリッシュに累積で出場停止に。ドクは怪我の影響でベンチ外となった。

ボールを保持するとそんな彼と2CHを形成したのがCBのアカンジだった。シティはアカンジの偽CBを用いて、ロドリが不在でもいつもの形、後方[3-2]の陣形でヴィラのプレスを超えて、相手陣形に入る扉を探っていった。

これに対してヴィラは非常にコンパクトでラインの高い[4-4-2]の陣形でシティボールに圧力をかけにいった。

中盤のカマラはアルバレスをマンマーク気味で監視。

サイドハーフのマッギンとベイリーは中央のレーンへのパスコースもケアしながら、シティの可変した3バックの脇の選手へプレッシング。

2トップ(ワトキンスとプレス時一列前に上がったティーレマンス)は背中で中盤を消しながらルベン・ディアスやGKエデルソンへ圧力。ボールが一方のサイドへ動けば逆サイドの遮断をする役割も担った。

この非常のコンパクトなハイラインプレスの前にシティは何度も自陣でボールを引っ掛けられてショートカウンターを何度も浴びることとなった。

このプレスを掻い潜る一つの方法としてハイラインの背後を狙うアクション。前半20分まではシティもそんなアクションから前進するシーンも見られた。しかし頻繁にそれを試みようとしなかった。その要因、考察は後ほど話していきますね。

▪️持たせたのか?持たれたのか?

シティはボール非保持局面でも劣勢を強いられた。

シティはヴィラが後方でボールを持つとストーンズがアンカーに入った[4-1-4-1]陣形。もしくはストーンズが最終ラインに入る[5-2-3]or[5-4-1]といつも以上に後方に重いブロックを形成した。

相手を捕まえに行くボール非保持の方向性はいつもと同じだが、ボールの出所を抑えるマンマークではなく、ボールの出し所を抑えるようなブロックでヴィラの前進を妨げにいった。

これに対してヴィラはこの試合ではGKマルティネスと右CBディエゴ・カルロスのボールの出所=時間が与えられる2人を中心にシティの出し所を抑えたブロックをずらして前進していった。

トップのハーランドはヴィラの左CBパウ・トーレスを監視。パウ・トーレスの配給力を考えれば彼にボールを渡さない狙いは理解できる。

そうなるとフリーとなるのが右CBに入ったディエゴ・カルロス。しかしカルロスも決して配給力のない選手ではない。フリーとなったカルロスはゆっくりボールを運んでシティのアルバレスもしくはフォーデンを引きつけてボールをリリース。トップ下のティーレマンスが列を降りてフリーでボールを受けるシーンも。

またGKマルティネスから高い位置に上がった左SBディニュへのパスがシティのファーストプレスを超える出口になることも。

それに合わせて左SHのマッギンが内側に。アンカーストーンズの脇で。もしくは右IHのリコ・ルイスの背後でマッギンがボールをおさめて前進するシーンも。このマッギンの内側に入るアクションがこの日一番シティが捕まえられないシーンであり、何度もプレスを超えられる出口となったしまった。

この様にいつもと違ったボールの出所ではなく、ボールの出る先を抑えたシティのブロックはヴィラからボールを奪う術とはならずに、徐々にヴィラがボールを持つ時間が増えていった。

シティはボールの出所にはいつも以上に慎重に、いつもより出ていかない戦術を採用したことで相手にボールを持たせた状況を作ったとも言える。

しかし後方で持てる選手(時間を与えられた選手)を中心にプレスのずれを作り、しっかり何度もフィニッシュシーンまで持ち込んだヴィラのプレーを見る限り、シティがボールを持たせたという評価はできないだろう。

そしてフィニッシュに持ち込まれた後に、ヴィラの早いトランジションプレスを受けて即時奪還されたこともシティにとっては苦しい展開を招く大きな要因となった。

▪️ボールを奪う術が足りなかったことが敗因!?

前からの制限もかからない。攻め込まれて引き込まれてもボールを奪えない。跳ね返した後にカウンターやボール保持にも繋げられない。

この日のシティは一度ヴィラに渡してしまったボールを取り戻す術が足りなかった。

押し込まれるとストーンズも最終ラインに入る5バックを形成。

5バックになったことでクロスに対しての跳ね返す厚みは出来たものの、セカンドボールの回収率の低下やカウンターの鋭さもなくなり、何度もヴィラにボールを即時奪還され二次攻撃を受けることに。

ハーランドも最終ラインに落ちて守備に周るシーンもあり、ただただヴィラの攻撃を耐え凌ぐしか出来ない時間帯もあった。

この様にボールを奪う術がまるっきりないような状況に陥ってしまったシティ。

このボールを奪う術がないことが、私はシティのダイナミックな攻撃を減少させた要因になったのではないかと考察している。

前述したようにヴィラはプレスをかけた際のラインが非常に高かった。だからこそそのハイラインの裏を狙う攻撃をもっと見せても良かったのではないか?と試合を見た人は多く感じたはず。私もそのうちの1人だ。

しかしシティはその選択をあまりしなかった。それはなぜか?

ハイラインの背後へ長いボールを供給すれば1発で決定機も演出できるシーンも期待できる一方で、”簡単にボールをロストしてしまう”という両面があると思う。

この日のシティはボールを奪い返す術が足りなかった→だからできる限り自分たちがボールを保持したら相手にボールを渡したくない→渡してしまったら前からも、下がってもヴィラからボールを取り合えげる術がいつも以上に少なかった→ロングボールを背後へ狙う回数が少なかった!?

この様にボールを奪えないことがシティの攻撃力も低下させていったように感じた。相手にボールをいくら渡しても、自分たちでボールを奪い返す術がありますよ!という状態を作れていれば、もっとヴィラのハイラインを狙うようなアクションは多く見られたかもしれない。

▪️おわり

試合は74分ヴィラのベイリーが決めたゴールが決勝点となりホームチームが勝点3をゲットして90分が終わった。

本当にシティにとっては苦しい苦しい90分だった。しかしそれでも先制点を許した後でもピッチで戦う選手たちは誰1人としても諦める姿勢は見せずに、最後までゴールを目指していた姿は勇気付けられたし、再びこのチームは立ち上がり、この試練を乗り越えてまた強くなってくれる期待を感じられた。

そしてボールを持てる大切さに加えて、どうやってボールを取り上げるのか?ということもサッカーにおいて本当に大切なんだと感じさせられる試合でもあった。

どうやってボールを相手から取り上げるのか?という方法はいくつもあるはず。

ハイプレスで能動的に奪う。ブロックを敷いてミスを誘発させて受動的に奪う。ボールを保持する時間を増やして相手の攻撃機会を減らしていく。

シティはどの形でも、いろんな形でボールを取り上げることが出来るチームだ(ブロックを敷いて相手からボールを奪う形は昨季新たに加えたシティの一つの大きな武器に)。

この試合に関してはもう少しどの方法でボールを奪うのか?という方向性を色濃く示すべきだったのかなと感じる。

前から行くんだったら行くし、ブロックを敷くんだったらもっとラインを下げて相手の攻撃を待ち構えてブロックの網をかける。

出来ることが多いからこそ、手札が多いこそ迷いを与えるのもサッカーの難しさで面白さなんですけどね。

さぁ超過密日程の12月。試合は次から次へとやってきます!下を向いている暇はないので、次節は久しぶりに勝利を是非見せてほしい!


この記事が参加している募集

サッカーを語ろう

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?