【AoE2:DE】何故AOE"2"なのか
今回は何故、AOMでもAOE3でもなくAOE2を遊ぶのかという事について考えてみたいと思います。
続編というか新しいナンバーが出ているのにもかかわらず、いまだに20年以上前のゲームである2を気に入って遊び続けている理由は何でしょうか。
このノートの前身、ニコニコブロマガ(リンクは移転先)にも同じテーマで書きました。
あれから考えは変わっていないので目新しいことは書けませんが、ちょっとだけパワーアップしたAOE2に対する知識と文章力を使って加筆修正します。
前回と同じくチラシの裏にでも書いておくべき内容ですが、どのシリーズを遊んでいいか分からない、何故3が出ているのにAOE2がそんなに人気なのか不思議だ、という方の参考にもなればと思います。
個人的な感想にせよ客観的な意見にせよ、2が好きな理由をはっきりと書いた記事は珍しいのではないでしょうか。
なおこの記事は、各ナンバーのタイトルの優劣を比較しようという話ではなく、何故私個人がAOE2が好きなのかということを考察する、という記事になっています。
■AOE2レビューとAOE3レビュー
今回は1万3千文字も使って、延々と2と3の比較をしていきますが、結局既プレイヤーにしか分からない事を沢山書いてしまうと思います。買う人向けに書こうとしても、もう長年AOEに触れてきているので、今更まっさらなポジションから俯瞰してみるという事が不可能なのです。
しかしそれではAOEシリーズの事を知らない人にとっては意味がないので、今どっちを遊ぼうか悩んでいる方のために、先に結論から書いてしまおうと思います。
巨大な建築物を土台から作っていくような重厚さや押し引きを楽しみたいのであればAOE2を、ボードゲームのような一発逆転やダイナミックなシーソーゲームを楽しみたいならAOE3をおすすめします。
AOEは一般的な他のゲームシリーズと違って、3が2の完全アップグレード版というわけではありません。
確かに3の方が後に発売されていますが、中世を扱うか近世を扱うかという違いがあってアウトプットの方法も違うため、全く別のゲームになっているのです。
もちろんどちらも名作です。
そして私はどちらも好きですが、プレイするならAOE2、観戦するならAOE3だと思っています。
理由はこれから書いていきます。今回は何故AOE2を遊ぶのかという理由をゲームデザイン方面から考えて行くというテーマなため、どちらかというとAOE2寄りの意見が多めとなります。
もしAOEシリーズをまだ遊んでないよと言う方は、この記事を読むのは半分辺りまでにして、ゲームを遊んでからもう一度来ていただければと思います。
結論をもう少しだけ知りたい人は一番最後のまとめをお読みください。
■本題の前に
本題に入る前にもう2つ書かせてください。AOEシリーズのタイトルについての軽い説明と、今回の記事のスタンスについてです。
・AOEシリーズと私のAOE歴
まずは各タイトルの軽い説明と、私のAOE歴をちょっと書いておこうと思います。
- 初代AOE: 97年リリースで、テーマは古代。
遊んだことがない。ちらちらと動画を見ていたので雰囲気は知っている。
- AOE2: 99年リリースで、テーマは中世。
発売当初から家のデスクトップPCに入っていた。プレイ時間4桁。マルチで遊んでいたのは2019年の1年間のみ。
- AOM: 03年リリースで、テーマは神話。
体験版が出た当初触り、その後キャンペーンは中国のものまで含めて全部クリアした。
- AOE3: 05年リリースで、テーマは近世。
2010年代の日本の大会動画を追っていた。キャンペーンは全部クリアした。DE版はリリース当初重すぎたために手を出してない。
- RON: 03年リリース。太古から未来までを扱うRTSで、Civ2やCivアルファケンタウリのデザイナーが作った。厳密にはAOEとは関係ないが似ている。
キャンペーンはやっていないが、ゲームシステムが好きでよく遊んでいた。
だいたいこんな感じです。がっつりやっているのはAOE2だけで、AOE3は大会動画を200本近く見るほどには好きでした。ただマルチには行っていません。プレイ時間を見るとAOE2が2000時間以上で、あとは初代を除けばそれぞれ200時間程度はやっています。
他にもストロングホールド、Halo Wars、ちょっと最近のRTSだとノースガルズにも手を出してみましたが、どれも数時間程度しか触っていません。直近の新作ストロングホールドも10時間もしないうちに投げました。
こうしてみると私はシングルプレイを相当長くやっていて、よく言われている"3はマルチがくそだから"、という理由でAOE2を遊んでいるわけではないと言えそうです。動画を作る前はマルチをやったことなかったわけです。
・スタンス
これから書くことはどちらかのソフトに優劣をつけるような客観的な意見ではなく、私個人がなぜAOE3よりAOE2を遊ぶのか、なぜ気に入っているのかを考察していくものにとどまる、ということをご留意ください。AOEシリーズは基本的にどれも好きです。
つらつらと2と3の相違点を書きだすことになりますが、比較してああだこうだということではなくて、2の方が個人的に好みな理由を探るという話になります。
プレイ歴の通り、決して前評判や第一印象だけでなんとなく食わず嫌いをしているというわけではありませんので、その点はご理解いただければと思います。
……と思っていたのですが、2020年10月に出たAOE3DEはまともにプレイしていません。リリース直後に喜んで買ってダウンロードしたのですが、もっさりしすぎていて遊ぶ気になれず、おそらく改善したことでしょうが、それからまだ起動していません。
そのため、もしかしたら"そこはDEで改善されたよ"という部分も出てきてしまうかもしれません。ゲームデザインの範囲に話を収めようと思いますが、エアプが語るなと思われるような言い回しをしてしまったらすみません。
因みにオンラインゲーム自体はFPSや某戦車ゲーム等色々やっていたので、嫌いではないです。
■3やMとの違い
AOE2を遊ぶ理由を考えるために、AOE3と比べてどうか、AOMであればどうかという方向で書いていきます。
AOE3の内容に触れながらAOE2と比較します。
・AOE3独特の要素
よくAOE2プレイヤーがAOE3がダメという時に話題に上がるのが、カードの存在です。
AOE3では近世から近代初期を扱うため、"植民地での争い"がテーマとなっています。プレイヤーは未開の地を探索して財宝を手に入れたり、現地民と交易したりできます。
アサシンクリード3やデカプリオ主演の映画『レヴェナント』のような世界観です。
勢力の尖兵となって植民地を獲得するのがプレイヤーの目的という設定ですので、"本国"からの支援を受けることができます。
支援は"カード"という形でゲームに登場し、プレイヤーは独自のデッキを作ることができ、ゲーム中に好きなタイミングで使うことができます。カードには強力な資源ブーストや技術、軍隊を受け取るなどの効果があります。
カードを切るには一定の"経験値"を溜める必要があって、これは植民地での活躍度合いという設定です。経験値は敵を倒したり財宝を見つけたり、現地民と交易をしたりすると溜まっていきます。
こういう要素によって、マップ毎に財宝の種類が違う、交易路の通り方が違う、文明によってカードの強さが違うといった動きが加わり、ゲームに多様性が生まれてきます。
ここまで聞くと、RTSにさらにカード要素まで加わってなんだか面白そう!と思えるのですが、初期状態だとデッキ枚数やカードに制限がかかっていて、好きにデッキを組むには本国、ゲーム内でいうホームタウンを発展させる必要があります。
ホームタウンをレベルアップさせるには、"経験値"が大量に必要です(このシステムはDE版では廃止された?ようですが、当初の話ということでこのまま話を続けさせてください)。
レベルはマルチとシングルで別物、さらに文明毎に分かれていて、どうやらマルチでまともに戦うにはまず文明のレベル上げという作業があるようで、それを知った時点でまぁマルチにはいかなくていいかな、という印象を2015年くらいに私は持ってしまいました。
「比較的短い1ゲーム中にすべてが完結しているのがAOEの魅力だ」と思うと、AOEとゲーム要素がマッチしていないように感じてしまうのです。
逆にキャンペーンプレイ中はホームタウンレベルのシステムは嵌っているように感じました。自分が好きな兵科を重点的にアンロックしていくのは面白く、キャンペーンを通して同一の勢力を操っている感覚が増すからです。内政、軍事どちらかを優先したいかと選択できるのも良かったです。
ただキャンペーンから離れると微妙になってしまいます。因みにRONではキャンペーンモードのみカードが使える仕様でした。
とはいえ3独特の要素は、ゴッドパワーこそありますがAOMでは影の薄い点です。
つまりカードや財宝にまつわる要素だけが、AOE2を遊び続ける理由だというわけにはならないでしょう。
・軍事、兵科と研究
AOE3がちょっと、と言われるもう一つの要素は兵科です。
3は舞台が近世ということもあって、軍隊は火薬がメインになっています。
鉄砲が主力なっているのが受け入れられないというのは、よく言われていた点です。
こればかりはきっちりとテーマを守った結果であり、剣や石弓などの中世から受け継がれた兵科も同居していることもあって、私としては気になりません。
ただ、AOE2のエンドコンテンツ的な扱いであった火薬という要素が早い段階で使えるというのは、2がベースにある私にとっては違和感を覚える点です。
それに伴って、AOE2と比べてゲーム中に時代の進歩が実感しづらい点も、ライトユーザーに取っては不満になるのではないでしょうか。
時代進化時に軍隊や町の要素がガラッと変わるだとか、圧倒的に強力な軍隊を作成できるとか、そういう感覚が希薄です。
これはゲームデザインレベルの話でもありますが、時代進化のリスクがAOE2よりも比較的大きく設定されている点は、好みが分かれるでしょう。"2の時代"が"3の時代"に勝つという事はAOE2では滅多に起こりえませんが、AOE3ではよく起こりますし戦略として十分に成り立ちます。直感に反するデザインはプレイヤーを混乱させます。
また、エンドコンテンツの存在感は、プレイヤーの戦略思考と達成感に影響しているように思えます。
AOE2では最強ユニットを使用する機会が多く設定されています。これは後に書く人口制限の話によるものだとは思いますが、近衛騎士や重石弓射手は良く登場します。
HDに入ってからの調整では騎士一強という環境ではなくなりました(AOM辺りから重騎兵の存在感は落ちた)が、最強ユニットをどれだけ使用できるかと言う面ではAOE2の方に軍配が上がることでしょう。AOE3の帝国の時代(5の時代)は、あらゆる手を打ったあとの最終手段という印象があります。
ただこういったこともAOMであれば解決されることです。
AOMは剣と弓と馬が主流だし、エンドコンテンツ的なユニットであるコロッサスやオシリスなんかも(遊んでいてよく場に出てくるという意味で)非常に存在感があります。
・経済
これもAOMであれば解決される点ですが、AOE3は経済が独特です。
伐採所などの回収施設がない、食糧は長らく動物資源に頼る、交易やカードと言ったエクストラな資源回収方法があるという要素です。
一つ前の話ともかぶりますが、AOE3は町を発展させているという感覚が希薄です。
AOE2であれば掘っ立て小屋状態の陣地で動物や木の実などの消費資源を採集し、時代が進むと石造りの建物や畑ができていくなどして、街がどんどん育っていきます。
しかしAOE3では町の人が時間経過とともに陣地から離れていきます。また建物を攻略できる兵科もおおく、拠点の防御力はAOE2と比べて低くなっています。城の存在感も、圧倒的にAOE2の方があるといえるでしょう。重歩兵や砲兵が強く比較的早い段階から登場するAOE3は、陣地構築のリスクとリターンが釣り合わない状況が多い印象です。
簡潔に言うなら自分が作った街、自分が広げた領土という感慨に浸りにくいのです。
AOE2は畑を展開するにしても交易を回すにしても、面として安全な領域を確保しなければいけません。もちろん確保の方法は、ピンポイントな場所に城を建てたりするという物ですが、それを支点として軍隊を派遣したり壁を張ったりすることで面を守ることを意識します。
一方でAOE3は動物にしても農場や工場にしても、(限度はありますが)そこまで広いエリアを所有しなくても内政できます。内政攻撃も鹿の群れに軍隊を派遣したり、突っ込んで工場を破壊するなど、どちらかと言えばピンポイントなものです。
確かにAOE3はスピーディーでダイナミックなゲームが楽しめますが、陣地や前線を定めた分厚いやり取りを好むプレイヤーはAOE2に行くのではないでしょうか。
2.ゲームデータについて
AOE3では近世らしく、三兵戦術が基本となって軍事ユニットがデザインされています。
銃や弓を操って一帯を支配する歩兵、馬にのって突撃したり攪乱する騎兵、敵の陣容を崩す砲兵という感じです。
そこにそれぞれ軽重の概念が加わり、軽ユニットは同兵科の重ユニットに対して有利に動くことができます。
・文明毎の名前と性能差
こう見ると兵科を跨ってアンチ関係が組みあがっていくAOE2より、AOE3はシンプルで分かりやすいと言えます。
しかし文明毎に呼び名とステータスが違う、アンチ関係もボーナスダメージという形ではなく与えるダメージ何倍、受けるダメージ何割減という形であるという点でややこしくなっています。
圧倒的に文明数の多いAOE2ですが、中世と言う時代もあってどの文明も大体同程度の発展度合いであり、軍容もそこまで変わるわけではありません。しばしば指摘される多少の矛盾(日本の遠投やフンの近衛騎士など)を無視しているというのが非常に良い点で、これが分かりやすさに貢献しています。
何といっても(AOMからすでにそうですが)AOE3の軍隊はややこしいのです。
ややこしい一方文明数が少ないので、AOE2と比べてどれだけ文明を理解するかという点に重きが置かれている印象を受けます。それは数値的な意味でも扱えるユニットや技術的な意味でも内政構築でもそうです。
例えばこのややこしさがどういう所に関わってくるかと言うと、"手持ちの軍隊を見えている敵の軍隊にぶつけて勝てるかどうか"という判断をするときです。
基本性能やダメージ倍率が文明毎に細かく違ってしまえば、同じ兵科同じ軍量だったとしても、違う結果になることでしょう。戦闘が成功するか否かがプレイヤーの感覚、経験によるところが大きいのです。
AOE2に比べてAOMやAOE3は理解度や経験を文明同士で共有しづらい作りになっていると言って良いでしょう。格ゲーのキャラのような印象です。
また数値の巨大化は強弱や優劣の判断をしづらくする要因です。
AOE3はユニット1つあたりのコストが高く、能力も相応に高く設定されています。数値の領域を広げ能力の項目を増やせばそれだけ細かくユニットの差別化が図れる余裕が生まれますが、これから戦闘をしていいのか、するにしてもどれだけ倒せば勝ちとしていいのか、軍優先か研究優先かといった「ゲーム中に比較しながら選択する案件の難度」は跳ね上がることでしょう。
ゲームは選択に対しての結果が分かりやすければ分かりやすいほど良いでしょう。例えばポケモンはだいたい1ターン、遠くても3ターン程度で選択に対しての結果が分かります。選択も限られていて、スパンもせいぜい5分程度です。
"自分の選択に対して結果を得て評価を下して改善策を考える"というある種のPDCAサイクルを回していくということがゲームを攻略する、上達するということならば――その点において様々なゲームジャンルの中でも特にRTSは分かりにくい部類になりますが――、AOE2は結果を得るまでの時間が長く関連性を見いだすのが難しく、AOE3の作りは選択の難しさを上げていると言えます。
・技術の恩恵
AOE2はユニットステータスの数値が小さく、ダメージ計算が俗にいうアルテリオス計算式(ダメージ=攻撃力ー防御力)のため分かりやすくなっています。
技術研究の恩恵が大きくなるのもこのダメージ計算の特徴でしょう。これはAOMからの仕様変更のため、AOE2を遊ぶ大きな要因かと思われます。
射程や攻撃力が1増えたときの軍事力の上昇量は圧倒的にAOE2が上です。
詳しい仕組みは分かりませんが、AOMやAOE3は2桁がデフォルトの射程で、それゆえに射程が伸びたことの効果が実感しづらいのです。ロイテルなどの軽騎兵であれば明らかに扱いやすくなったと実感できるのですが、それ以外で私のような素人が技術の恩恵を感じられるのはドッペルゾルドナーとかでしょうか。
とにかく技術の恩恵が感じやすい、分かりやすいというのは、プレイしていて気持ちがよい要素です。選択の難度も下がります。
それは"時代進化という技術研究"でも同様で、AOE3のプレイ動画を見ている感じでは、例え時代が負けていても勝つことができます。
AOE2ではよほど差をつけているか、トップレベルの実力がなければまず進化を考えた方が良い設計になっています。時代が上がればアンチユニットに対して多少無理ができたり少数のユニットでそこそこの軍隊を殲滅できたりします。
こういう点でもAOE2の方がプレイしていて、前時代的なユニットにぼこぼこにされるという舞台的な理不尽さを感じることが少ないのではないでしょうか。
AOE3は敵の強力な一手に対しての対応策が多く、つまり従来(AOE2)の強力な一手がそこまで強力ではない、という点でも好みは分かれるところでしょう。
もちろん"これをすれば勝てる"というのはAOE2にもAOE3にも有りません。ですがゲームとしてその環境を体現する方法が微妙に違っており、それがプレイヤー好みを分けるのでしょう。
プレイする側からすると、AOE2の方が3よりも気軽にプレイすることができるのです。
悪い言い方をすればAOE2は定石の反復練習、脳死の決め打ちをするゲームとなりますが、RTSはそもそもが余裕のないゲームなので、プレイ中には将棋やボードゲームのようにそこまで深く思考することはできないのです。格ゲーに似ているかもしれません。
■3.ゲーム全体のデザインについて
・想定されていたプレイ時間
AOE2はもともとWin98のゲームであり、今と比べたらものすごく低スペックな環境を想定して作られたゲームです。
キャンペーンの人口上限を見れば明らかで、AOKのキャンペーンは人口上限が75人、AOCのキャンペーンでもだいたいが125人です。
またCD版からテキストを引き継いでいる、HD版のゲーム設定画面の人口の説明欄でも50人推奨とあります。マルチで8人対戦をした場合の事を言っているのでしょう。
一体どういうことかと言うと、AOE2はもともとコンパクトなゲームを想定していたということです。
その規模に応じて射手の射程や騎士の体力を設定していたのです。近衛騎士も場に出せれば最強で、だからこそ聖職者の存在感が増します。
さらに言うと、50人上限という事は経済はおそらく35人程度で、軍事ユニットは15人程度でしょう。
もちろん製作当時は(初代があったとはいえ)戦術も何も研究されていない時代ですから、おそらく騎士を数体作りながら小競り合いしつつだんだん発展していって、などと考えていたことでしょうが、とにかく、15分~20分で人口上限がきて、長くても30分程度(1.5倍速、実時間20分程度)でササッとおわるゲームを目指したのではないでしょうか。短い休み時間にさっくり遊べるボードゲームやDCGと似た作りです。
アラビアでも7金4金があれば充分事足りたのでしょう。
どの資源も有限なのはわざわざ無限にする意味がなかったという理由があったことだと思います。
しかしパソコンのスペックが急激に上がって200人がデフォルトになると、短くてもゲーム時間で40分、長ければ2時間を超えるゲームが一般的となってしまいました。
そう考えると、AOE2はいくつもの要因が偶然重なってできたゲームとも言えます。
制作側からしたら当初想定していたユニットの扱いから随分離れたところになったと思われますが、プレイヤー側からしたら結果的にはそれが良かったのではないかと思います。
そんな中で2から10年近く経ってからAOE3は開発されたわけですが、3はだいたい20分程度でさっくり終わるようになり、先にも書いたように、5の時代に到達することも滅多にありません。AOE2の現状を踏まえて作られたのではないでしょうか。
・重厚さを求めるプレイヤー
ただ、なぜAOE2プレイヤーがわざわざ50人から200人に人口上限を増やして遊んでいるかと言えば、(ゲーム内時間で)20分程度でゲームが終わってしまうのは物足りないからだと考えられます。
1時間で1ゲームならばさっくり終わる方であり、1時間たったときの盤面はとても厚みがあるものとなっています
我々プレイヤーは1時間程度(1.7倍速、実時間30分から40分程度)のゲームを求めているのだと思われます。
それはメジャーなルールが200人であるということからうかがえます。今や500人でも余裕で8人対戦できるスペックを持つPCも珍しくありません。
一時期300人や250人モードも流行らせようという動きがありましたが、結局200人に落ち着いたところを見ると、この規模のゲームを求めているのです。
翻ってAOE3はどうでしょうか。
ゲーム内時間4分程度で植民の時代(2の時代)に上がり、8分で要塞の時代(3の時代)に上がります。マシンスペックが上がったことも鑑みて、人口上限によるゲーム規模の制限ではなく、進行自体を縮めることによってスピーディーなゲームにしたのです。
しかし内政時間が短いというのは一長一短です。
1の時代の内政時間は、配られた手札となる自陣を把握してゲーム展開を組み立てる時間でもあります。戦略を立てる時間が短いのです。
AOE3はマップ生成をある程度固定(資源配置や地形のばらつきが少ない)することでこの短所を取り除き、文明相性でゲーム展開を予想することを可能としていますが、これも覚えなければいけない要素としてプレイヤーの前に立ちはだかります。
確かに昨今のライフスタイルを考えれば、すぐに戦闘が始まる、すぐに次ゲームに行けるというのは重要視される要素かもしれませんが、だとすればAOEシリーズなどやっていません。それこそボードゲームをやったり、確実に1ゲーム20分で終わるAPEXをやればいいのです。
AOEシリーズの魅力と言えば、内政を作って軍隊を整えて征服する、という一連の大きな流れを1ゲームで体験できるという点が1つあると言えます。 クリアに数時間かかるのは重いけど、数分で終わっちゃうのもなんだかあっけなくて、という人が遊ぶのがAOEシリーズなのです。
そこを突き詰めると、双方が一生懸命作った街で生み出された軍隊がぶつかり続け前線の位置が前後して勝つ、という点に魅力を感じる人であればAOE2を選ぶと言えそうです。
・短時間で起こるダイナミックなゲーム展開
もちろんAOE3にも魅力があって、これはやはりどちらが好みか、ということに落ち着きます。
AOE3の魅力は先にもかきましたがスピーディーでダイナミックなゲーム展開です。
展開が早い分、ユニットのコストはAOE2よりも重めで、性能も高く設定されています。また軍隊の持つパワーに対して町の中心などの防御力が低い反面、カード、5人生産、民兵、BB、革命など、一気に兵数を高める事ができる要素が大量にあって、カウンターもしやすくなっています。
例えば当たらなければどうという事はないAOE2の投石機とちがって、AOE3のファルコネット砲は致命的なダメージを歩兵に与えることができます。
また、文明によっては突然兵種が変わるという(AOE2で例えるなら全斥候が弓騎兵になるような)カードもあって、一気に兵数が逆転する、軍事バランスが傾く、といった大逆転の一手が多く用意されているのもAOE3の特徴です。
先に書いたファルコネット砲についても非常にコストが重いので、敵が持っているのを見つけたら危険な存在として意識することになりますが、倒すことができれば逆転できる要素となります。
苦境を耐えて起死回生というのは物語の王道展開であり、AOE3はよく再現しています。
ボードゲーム的に見ても、運と言うわけではありませんが、逆転要素が用意されているのは"らしい"といえます。
ただ私からすると、自分でやるのは疲れそうという印象を抱きます。
初めにもかきましたが、AOE3の対戦動画は大好きです。
どこで勝ったのか、どこで逆転したのかというのがみていて非常に分かりやすく、さほどゲームに詳しくなくても感動することができます。
ただいざやってみようとなると各文明の兵種の多さから始まって、読みの多様さ、早すぎるゲーム展開といった要素についていけそうもなく、自分でやんなくていいや、となってしまいます。
これだけは本当に言いたいのですが、確かにAOE2よりAOE3のほうが見ていて面白いのです。
数分で内政タイムが終わるし、必ずと言っていいほどドラマが生まれるし、戦略が物を言うからです。ボードゲームのトークンのように右上に表示される交易所の存在や、両者に公開されるデッキという存在、高性能高コストなユニットたちの動向など、両陣営の戦略的な選択を視覚的に分かりやすくしています。
ただそれだけに自分のような下手くそがやっていても微妙だし、たぶんマルチ行かないと楽しめないんだろうな、というわけです。
でも考えようによっては時代に即していると言えなくはありません。近世という時代は、とにかく前時代的な軍隊に縛られた時代です。
ロシア大公国やムガール帝国に見られたように、たとえ技術革新や装備の刷新がなくとも、大局的な経済力やその国特有のパワーでどうとでもなるのが近世です。
動物が不思議な力で家に吸い寄せられて謎の仕組みによって資源を自動生産する非科学的な極東勢力も登場しますが、基本的には時代の特徴を上手くAOEというゲームに反映されているのではないでしょうか。
4.シンプルかどうか
・選択のシンプルさ
観戦して分かりやすいのはAOE3ですが、プレイして理解していこうという身に立ったときに、より優しいのはAOE2だと思えます。
文明毎の差異は文明ボーナス、ユニーク、技術の有無だけで、ユニット性能やデッキ内容に気を配る必要はありません。射手は多くの文明で共通の性能で、射手をパワーアップさせる技術の性能も重要性も同じです。
マップ毎に定番戦術は変化しますがある程度はランダムで、家畜動物が沸く位置を調べるという作業も必要ありません。
剣が得意、弓が得意などの文明特徴も分かりやすく、AOE3のようにラッシュが得意、ブームが得意というような高次元な優劣や相性をつける必要がないのも入りやすいように思えます。
AOE2は他のナンバーと違って重大で吟味すべき選択を迫られることがありません。
もちろん戦術選択などは重要ですが、ここで言うのは修正不可能な時代進化時の指導者選択、ゴッドパワーやカードを行使するタイミング、政治形態の選択といった要素です。
これらは確かに多彩な戦略や面白い戦術を生み出すかもしれませんが、これからやり込もうかという人にとっては無限の選択肢があるように見えてしまい、選べなくなってしまう、遊ばなくなってしまうというルートを辿ってしまう可能性を高めるのではないでしょうか。
私がおそらく更に色々と覚えようと思えなかった点は、ここが大きいのではないかと思えます。
・盤面のシンプルさ
盤面という言葉は様々な意味で使われますが、AOE2はユニットや文明などの"駒"にしても、読み合いにしても、単純にマップ(文字通り盤、ボード、将棋で言うなら将棋盤)と言う意味でもシンプルです。
このマップというか"ボード"がシンプルだというのも、案外重要なのではないでしょうか。
AOE2はMODでグリッドを入れてしまえば射程や建物サイズがまるっとわかってしまうほど簡素です。
AOE2は射程や建造物のサイズの基となる1マスが大きく設定してあり、それを9つに区切ったスケールでユニットが移動するという形式になっています。
AOM以降のシリーズではその9つに区切ったレベルの細かさがデフォルトになっていてます。これによってなめらかに町づくりを進めることができますが、AOE2プレイヤーにとっては曲者だと思われます。
建物の予約をするとき、1マスが大きく設定してあれば、1マス右に建てるかそれとも左に寄せるかという小さな選択をする場面が生まれます。しかし小さく区切ってあると膨大な選択幅から最適な位置に建てなければいけないというプレッシャーが生まれます。
分かりやすいところで言うと、柵や壁のコストです。AOM以降の壁は柱と面で構成されていて、ダメージ判定も建造コストの計算も直感的ではありません。
ボードのシンプルさは様々なところに影響していくと考えられます。
射程を伸ばす技術の話でも1マスの価値は大きくなりますし、街を構成する建造物も散逸しにくくなります。引いてはそれが陣地を明確に決めることになり、ゲーム性に関わってくるのです。
例えば幅1マスの細い隙間があったとして、AOE3はそれは偶然から生まれた裏道のように認識されることでしょうが、AOE2ではきっちり通路となります。細分化されていない盤によって、逆にルートや陣地が厳密になるのです。
RTSゲームの魅力の一つは、ボードゲームに通ずるものがあると思っています。(ボードゲームデザイナーがデザインしているのだから当たり前だとも言えますが)題材、戦略性、運、それぞれの次元で、大体ストラテジー系ボードゲームと似通っているのではないでしょうか。
こまごまとした自分の手の届く範囲の領域で高次元なやり取りをする、というのが醍醐味と言えるでしょう。
そういう視点で見ると、AOE3はトークンやカード、先鋭化した文明デザイン、ゲーム時間という点でボードゲーム性を出してきましたが、AOE2はシンプルな見た目や分かりやすく仕切られた盤面で出していると言えます。
1時間半を超えるビックゲームを終えてマップを見比べた時、何が起こったのか把握しやすいのはAOE2ではないでしょうか。完全な素人目ですが、AOE3は長時間のゲームになるともうプレイヤーも観衆も論理的に把握できるレベルを超え、まさにカオスと呼ぶに相応しい盤面になることが多いように思えます。
16bitカラーだったとしても、マップがマス目で区切られていたとしても、それは決して前時代の象徴というわけではなかったのです。
■AOE4について
このようにAOEシリーズを分析すると、AOE4に対しても色々と見えてくるものがあります。
今回の記事の基となった2018年12月に書いた中では、私はAOE4について次のように書いていました。
AOE4はこのまま時代が進むのであれば、AOEが持つボードゲーム的な魅力は損なわれそう。近代の戦争を舞台にしてこじんまりしたダイナミックな物語という性質がどれだけAOE4に現れてくるのか、RTSとして面白いかという面では微妙(要約)
AOEファンにとって幸せな事に、時代は再び中世に戻ることになるようで、そういった意味では一安心です。
しかし、AOE2のファンは注意しなければいけないことがいくつかあると思っています。
今回の記事を踏まえ、次回は主にAOE4について書く予定です。
トレーラーから想像されるゲーム性や現行タイトルとの差、プレイヤーの移行など、ゲームのみにとどまらずプレイヤー環境まで書ければと考えています。
■まとめ
さて、ながながと書いてきましたが、なぜ自分が好きなのがAOE3ではなくAOE2なのか、まとめてみたいと思います。
- 分かりやすい
- 中世と言う時代設定とそれに伴ったデザインが自分好み
- ゲームのスケールがちょうどいい
言ってしまえばこの3点に限ると思います。AOE3には逆転の要素が沢山あります。革命や交易独占もその一種です。
それを考慮して全部覚え直すくらいなら、自分が遊び慣れてるAOE2でいいんじゃないか、ということです。
私は「無限の組み合わせが生み出す奥深さ」よりも、「単純なデザインが生み出す奥深さ」の方が好みなのでしょう。
これらは似ているようで違います。
2も3も同じところを別の方法で目指した結果、全く違う物になったというように思えます。
■終わりに
AOE3よりAOE2の方が実際遊びやすいというのは、おそらくまぎれもない事実で、というのもプレイヤー数は圧倒的にAOE2の方が多いのです。それはHD時代もDE時代も変わりません。
何かしらの違和感をAOE3に感じることでしょう。それは私が書いたことかもしれませんし、まだ何か理由があるのかもしれません。
そしてプレイヤー数が多いという事は、新たな楽しみを発掘する要因となります。それはマップ作りやシナリオ、新戦術、大会などです。
とりあえず私は見てる分にはAOE3が面白いけど、やってる分にはAOE2が面白いと感じた理由はこの辺りです。
皆さんはどのタイトルがなぜ好きなのでしょうか。
それを考えてみると、自分が好きなタイトルの魅力を再発見できるかもしれません。
今回書いたことはあくまでシングルプレイ中心でマルチと言っても実際にやったことあるのはAOE2だけという私が感じている部分ですので、AOMやAOE3の現役プレイヤーや両方プレイした人は違った感想を持っているかもしれません。
是非聞いてみたい部分ではありますが、今回はここで閉めたいと思います。お読みいただきありがとうございました。
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