見出し画像

をかしや (お酒と和菓子)

 COVID-19 の世界的な感染拡大に伴い、東京都に緊急事態宣言が出された2020年の春、ひとと距離をとる必要性により、をかしやは休業を余儀なくされている。をかしやの真髄はお客の間近で和菓子をつくる工程を見せ、出来立てを食べてもらうところにあるからだ。今は毎日心から祈っている。一日も早く、平穏な日常が戻って来ますように。

  初めて訪れたのは梅雨どきだった。はしご酒、三軒め。地下鉄を乗り継がなくてはならない都心で飲んでいると、帰路が長くて休まらない。地元で飲みなおそうと、中央線沿線の三人で帰ってきた。二軒目で日本酒に切り替えてお蕎麦をすする頃には、ほろ酔いから醒めて冴えてくる。心地よい状態のまま、ひっそりとした路地をまがって、小さなバーで燗酒、〆に和菓子。大人になると、そんなことができる。それをおもしろがっているあたりは、まだ子供のままだ。

画像1

ここから先は

2,606字 / 3画像
この記事のみ ¥ 300

サポートしていただいたら、noteに書く記事の取材経費にしたいと思います。よろしくお願いいたします。