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ジャック・ブルースが日本のファンに贈った最晩年の名演「JACK BRUCE, CHAR &GOTA ABSOLUTE LIVE JAPAN!! #1」が配信ライヴで蘇る

6月25日(金)20時から音楽ライブ/コンサート動画配信サービス【FAVER】でジャック・ブルース、Char、Gota(屋敷豪太)が2012年に行ったスペシャルライヴ「JACK BRUCE, CHAR &GOTA ABSOLUTE LIVE JAPAN!! #1」のライヴ配信が決定しました。

解散から53年、今なお語り継がれているエリック・クラプトン(ギター)、ジャック・ブルース(ベース)、ジンジャー・ベイカー(ドラムス)による伝説のロックトリオ、クリームの楽曲にオリジナル・メンバーのジャックと日本が誇るCHAR &GOTAが挑んだ伝説のパフォーマンス。

今回のFAVER noteは音楽ライターの早坂英樹さんに「JACK BRUCE, CHAR &GOTA ABSOLUTE LIVE JAPAN!! #1」に音楽史におけるクリームの功績や、JACK BRUCE, CHAR &GOTA公演に至るまでのインサイドストーリーについて書いていただきました。
■6/25(金)20:00〜配信開始の視聴チケット🎫 は、FAVER.tv で発売中!!  お求めはこちらをクリック■


“活動期間僅か865日”不世出のトリオ・クリームが今でも伝説であり続ける理由

ここ数年イギリスの伝説的トリオ、クリームを回顧する機会が何度となくあった。2010年代半ばに結成から“リリース50周年”というキリの良さから、次々とアルバムのデラックス・エディションと呼ばれる拡充盤がリリースされたこと。そして残念なことだが、ジャック・ブルースが2014年、ジンジャー・ベイカーが2019年に相次いでこの世を去ったことで、彼らの功績を改めて噛みしめた人は少なく無いと思う。

メンバー2人が失われ、それでもクリームの伝説は続いている。新しいところでは昨年2020年、バンド解散最後のツアー4公演を収めた完全版となる『グッバイ・ツアー – ライヴ1968』が公式リリースされグループの終焉の全貌が明らかとなった。

この完全版ライヴボックスは、今まで繰り返し見聞きしてきた“定説”やまことしやかに語られてきた“噂”をより解像度を増した形で自分なりに理解し「改めてクリームとは何だったのか?」思いを馳せるにはいい機会となった。

クリームはポピュラー音楽史における特異点、つくづく奇妙なバンドだと思う。ギター、ベース、ドラムスの異なる3つの楽器が三者三様に主役を主張し、凌ぎを削りながらギリギリのラインで音楽を成立させる荒唐無稽さ。あまりにも純粋に互いの承認欲求が演奏に全振りされた結果、ロック・ファンにとってお馴染みの常套句となる「爆音で演奏するハードロックの始祖」や「ロックバンドに即興(インプロヴィゼーション)を取り入れたライヴ・バンドのパイオニア」という歴史的評価も得た。

彼らは結成した1966年に半年で約100本、67年には160本、5月に解散を決断した68年でさえ70本ものショウをこなし毎回のようにバチバチのバトルを続け、それでいて僅か2年半の短い活動期間で全く趣向の異なるクラシックと呼ばれるスタジオアルバムを3枚も残している。

かつてのインタビューで「クリームとは?」と問われたジャック・ブルースは“ジャズ・バンド”と答え、エリック・クラプトンは“ロックンロール・バンド”と答えたという。要は全く異なる音楽性を持つ3人が違う方向を向き、認識のズレをもろともせずに、微妙なバランスを保ちながら大音量で猪突猛進し続けたワケだから行き着く先は、最初から見えていたのだと思う。よって“燃え尽き”というより音楽的“達成”の果ての解散のようにも感じる。

2012年ジャック・ブルースが日本に来てクリームの再演を実現してくれた理由

そんなクリームのレガシーを振り返る2012年のBillboard Live TOKYOで行なわれたジャック・ブルース、Char、Gota(屋敷豪太)によるスペシャルライヴ「JACK BRUCE, CHAR &GOTA ABSOLUTE LIVE JAPAN!! #1」が、9年の時を経てオンラインで蘇ることとなった。

3.11以降世界の名だたるミュージシャンが来日し、傷ついた日本の音楽ファンに演奏をとおして寄り添ってくれたが、そのなかで手を挙げてくれた一人がジャック・ブルースだった。

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「ABSOLUTE LIVE JAPAN!! #1」はジャック・ブルースによる最晩年のクリーム楽曲のフル・パフォーマンスという点もさることながら、ファンにとっては2011年の東日本大震災以降の閉塞感漂う世の中を勇気づけてくれた意味でも特別な企画といえる。

日本との接点として、ジャックが昨今のブームのはるか昔60年代から日本食を嗜む“食通”(味噌汁や天ぷらを自分で調理するとか…)なんて話もたびたび紹介されたが、過去にも幾度か日本人ミュージシャンとの共演なども経験しており、長年の良好な関係から生まれた日本への親近感がこの企画の原動力になったようだ。

共演者にもそれぞれの思いがある。Charは自らの数あるルーツとしてエリック・クラプトンの存在も公言している。「ヤードバーズ時代からどっぷりクラプトンにハマった」と語るくらいの筋金入りで中学生でクリームもカバーしてコンテストに出ていたという逸話があるくらいだ。

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2003年には日本武道館でジャック・ブルース、Char、サイモン・カークによる共演の計画があったが、ジャックの肝臓がんの緊急移植手術により立ち消えになった話もある。手術から見事に帰還したジャックには2005年にエリック・クラプトン、ジンジャー・ベイカーとのクリームの奇跡の再結成ライヴというサプライズが待っていたが、この来日でCharとの幻のスーパーライブの物語も回収されることとなった。

さらにドラムのGota(屋敷豪太)の存在も大きい。ex.シンプリー・レッドとクレジットされる通り世界的バンドのメンバーとしての実績もさることながら、世界を席巻したソウル・II・ソウルのプログラミング、シネイド・オコナーの「愛の哀しみ(Nothing Compares 2 U)」、マッシヴ・アタック、アラニス・モリセットの作品などメガ級の名曲に欠かせない“この人あり”というワールドクラスのプレイヤーのひとりだ。

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フィジカルからデジタルの移行期のイノベーションに加え同時に携わったヒット曲の全世界の再生数は日本人ミュージシャンの中でもダントツ。演奏者としてジャック・ブルースからの高い信頼からこの企画を実現させる決め手にもなったという。

Jack,Char & Gotaの演奏から感じられる音楽愛と互いのリスペクト

相手を見ないで一心不乱に弾きまくるオリジナルのクリームがライバルむき出しの“破壊的創造”だとしたらJack,Char & Gotaはミュージシャンシップが生んだ音楽愛と互いのリスペクトに溢れた演奏、まるで違う表情のクリーム楽曲を堪能できる組み合わせだ。

僅か30分のリハーサルから本番に突入した初日の大阪公演を経て、東京の1stとセットを重ね、この演奏ではより互いの連携が熟成されている。肝臓がんの手術後も体調不良が伝えられていたジャックだが、このライヴではあの野太いベース・サウンドとスリリングなインプロヴィゼーションを聴かせる。

攻めるジャック・ブルースに呼応し、CharとGotaもこれに応える。共にクリームのライヴ・アレンジを高い再現性でプレイし、同時に即興部分は自身の色を織り交ぜたりと多彩。何よりもジャックとCharがアイコンタクトを交わしながら演奏する姿は実に楽しそうだ。

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公演当時、トレードマークのムスタングやストラトキャスターではなく、クリーム時代のクラプトンの象徴だったギブソンのSGでこのライヴに臨んだCharのチョイスがファンの間でも話題になったが、選曲も然り。クリームの解散ライヴのラストを飾った「Steppin' Out」をオープニングに選ぶセンスも意外性に溢れてて実に粋だなと感じる。

フレッテッドベースを手にしたジャック・ブルースの勇姿に注目!

粋といえばジャック・ブルースがこのライヴに敢えて60年代当時のようにフレットのあるベースで挑んた点にも注目して欲しい。

もともとクラシック畑出身でチェロ奏者だったジャックにとってフレットレスベースが演奏しながら歌うという演奏スタイルの最適解ということは幾度となくインタビューで語られてきたし、ギアへの拘りという面でも勝手の違うベースを手にするのは異例中の異例のこと。当時の証言によると実に「25年ぶりの試み」だったとか…。

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このような小さなネタ探しも楽しいが、前述のとおり伝説的ベーシストで作曲家、歌手であるジャック・ブルース最晩年のクォリティの高い演奏記録、日本が誇るCharとGota、名手3人による記念碑的パフォーマンスをぜひ追体験して欲しいと思う。

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早坂英樹

ライター/ジャーナリスト/Web編集者。音楽ライターやフェス・ウォッチャーとしてミュージック・マガジンなどに寄稿。ルーツ音楽、ジャム/インプロのある音楽をジャンルを問わず愛する。格闘技/スポーツ記事なども手掛けている。

なお「FAVER」の「JACK BRUCE, CHAR &GOTA ABSOLUTE LIVE JAPAN!! #1」アーカイブ期間中はクリームについて個人アカウント(@HIDEMUZIC)でツイートします〜!。