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[ FASTNER. vol.32 ] CONTENT心で触れる京和傘

FASTNER. vol.32 特集 雨のち晴れ

『ふだん目を向けることのない雨の可能性を、
五感の全てを尽くして感じてみてほしい』 

先日、FASTNER.から32号が発刊されましたことをお知らせします。
今号では雨にまつわるモノやコトを取り上げ、雨の日だからこそ五感で触れることのできる表現が詰まった一冊となっております。

『心で触れる京和傘』では、日本最古の和傘屋 辻倉で代表を務める木下さんにインタビューをさせていただきました。


Q1. 職人目線での和傘の魅力とはどのようなものですか。

職人目線となると、どう答えたらいいのだろうかっていう。
何百年もの間雨よけの道具は絶対に和傘で、日本人が必ず2,3本持っていました。現代のビニール傘状態だったものなので、職人としてそういった伝統的なものに携わって作っていきたいということが1番のモチベーションになっていると思います。

Q2.私たちはフリーマガジンという形で紙の媒体を通して情報発信しています。顧客層以外の和傘についてあまり知らない方に向けての、和傘に関する発信のこだわりを伺いたいです。

日本中にももうほとんどお店がないので、若い子や知らない人たちにはSNSで主に発信しています。Twitter, Instagram, Facebook, Googleもう本当に無料なものは全部使っています。SNSのあげ方もまずは英語の文章から、その下に日本語の文章っていう。日本語からだと見る人が1億2000万人ほどに限られてしまうので、英語からだともっと人口がね、見てもらえる人が増えるので、そういった工夫はもちろんしています。「ホームページ」にも力を入れていて、英語版サイトがあるので、世界中に発信して、少しずつみんなに知ってもらえたらなと。あとは、各イベントや各企業さんとのコラボレーションを通じて、知名度というか、和傘の認知度を上げていっているという感じですね。

Q3.なるほど。これまでどのような企業とコラボレーションされましたか。

有名ホテル、ブランド、時計屋さんだったらフランクミュラーであったり、 OMEGAさんだったり、もちろんディズニーさんもそうですし、そういったところとコラボレーションして、「和傘とはこういうものだ」と伝えています。

Q4.別のインタビュー記事を拝見した際におっしゃっていた「昔に戻ることは、実は今の時代とって新しいこと」という考え方が印象に残っています。このような考え方に至った経緯について詳しくお聞かせください。

単純にね、もう世の中から和傘が消えそうなのね。もう日本全国何十人、もう50人ぐらいしか携わっていないのではないかな。そのような中で、和傘を新しいものに変えようとするのが、ほとんどの人です。でも、なくなりそうなものを昔に戻していくっていうのは、実は一番難しくて、新しいものを作っていることになるじゃないかという考えに至りました。昔は作れたけど、今は作れない柄など、時代とともに技術が廃れていったものもたくさんあります。


「昔の技術をどんどん復活させるのも、新しい試みではないの」と単純に思ったので、決して和傘を何かに変えて、新しいものを作ろうとは思いませんでした。「ほんまもん」を残していこうと、ついだ当初から、「後ろへ戻る」ことを第一に考えています。途絶えた技術が世に出てくるから、昔に戻っていくけれども、先進的になっていくはずです。でも昔に戻るっていうのはね、言葉では簡単だけれども、ものすごく複雑。素材集めや技術面では、昔の人は手がすごく込んでいて、戻していくっていうのは、ものすごく困難だけれども、一番日本で古い店としては、「伝統文化」を残さなければいけないので。後ろにもどって、今まで廃れたことを復活させることが使命なんじゃないかなと感じています。

Q5. FASTNER. のターゲット層は主に「大学生」を中心とした若者です。伝統工芸に対して今後どのように向き合って欲しいか、または若者に伝えたいメッセージはありますか。

意外と僕たちが若い頃に伝統工芸なんて見向きもしませんでした。今の若い子実は、伝統工芸とかに興味を持っている子がすごく多くなってきたと思っています。現に若い男の子も女の子も買いに来るので、僕たちの時代よりは、伝統工芸に目をむけてくれているのではないのかなと感じます。伝統工芸品はこだわってずっと長い間続けてこられているものなので、何かしら日本人の心に引っかかるものだと思っていて。だから、僕もこの年になって他の伝統工芸品にも目が向くようになりました。急に興味をこちらに向けとは思わないけど、徐々に歳とともに少しずつ興味を持っていくものなのでは無いのかなと。それが順繰り、順繰り回っているのかなって思っているかなあ。

Q6.最後に、今後の和傘のあり方についてお聞きしたいです。

和傘屋で代表をしていますが、毎日和傘を使っている訳ではないので、もちろん洋傘は洋傘でいいところがたくさんあります。和傘と洋傘を棲み分けて使うことが大切だと思っています。和服に洋傘よりも和服に和傘の方が合いますし、時代劇であっても洋傘さして刀を持って歩くわけにはいかないので。芸妓さん舞妓さんも日用品として使っていますしね。日本の伝統と文化っていっぱいあって、まだまだ日本の伝統文化と和傘は一緒になっています。とはいえ、もっともっと一般の人に知られたら、今度は生産が追いつかないなんてこともあるかもしれない。ゆっくりとゆっくりとたやさぬように、必要としている人のために続けていければいいなと思っております。


京和傘というと少し崇高というか、どこか日々の暮らしとはかけ離れていた存在だと思っていた。

けれど、実際に『見て・触れて』みてもっと身近なものに感じられた。

古き良き伝統工芸品が、これからも日本人の心をほっと温めるものであり続けるには、新しいかたちで紡ぐことも大事だけれど、「昔に戻していくこと」も新しい試みなのだ。



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