今日の晩ごはんは たらこ スパ スパ 舌もこえあげ、ハスハスハス 食後のデザートに タバコ スハ スハ 隠し味に、満たされるひと時 このひと手間が大事なんでい 大事なんで欠かせないんじゃい ワシのフルコース、 おいしかろ うまいじゃろ (なんだトゥ!) 満足いかねえおめえさんには こいつでどうだ! 最終奥義、お子さまプレート! オレンジジュースも付けちゃろまい うまかろ おいしいじゃろ どうでい どうだい そうかい こんなもんで満たされるのかい こんな、笑顔になっちまうのかい
深呼吸をする理由は、 私という肉体の鼓動に 鈍感であるためだ 呼吸を学べば、 お前の話も聴けるのに 深く息を吸うことが、 正常とされている 私は! お前の生きていること、 その脈ドウさえ 深く沈めることで 忘れ去っていたのだ! ああ、今日も お前の ドウ哭が聴こえてくる 正常を取り払って 私は…
木に生えるくものいと それはまるで むしくわれた、 木の生長を支えるようで なにげない利己が 善行と解釈される、 自然さを目の当たりにした
ちょうちょもとりもはしやすめ ぽつぽつぽつとまえのめり きづかずかれらのテリトリー いまさらくつをぬいだって かれらはもう、つぎのたびゆき
おらのむねはね、 あったけえんだ おらのめにはね なんもかんも こびとさんが いっしょけんめいに まわしてみえんだ だもんで きみのむねもね、 あったけえんだ
そらをとぶ たおるひとつ へやかくれる くつしたひとつ したたるひかりをおうたのに なにわすれたかも さだかでない
身体のひとりが 限界だと寒さを訴える 途端、いちばん奥 芯のアルデンテまで 寒さは伝わり ガクガクブルブル 孤独に震えだす 走馬灯に似た、 通りあらしのなか 身体は 次第に丸みを取り戻して 自分を自分で抱いてやる ポーズを取る これを 愛と呼ぶことにしよう 寒さと孤独の子ども 愛は咲いたのだ
K、君は夜の眠りを 小さな死だと言っていたね。 その死骸の積み重ねで 私たちは構成されているのだと。 ならば、私が眠れないのは、 今日に!この世に! まだ未練があるから、だろうか。 そんな不安も 掻き消すように、 暗闇の足あとは 無遠慮に広がってゆく。 また、明日の私も 小さな死に悩むことになるだろう。 なにも置いてはゆけない 心残りも、そっと抱かれて…
ああ、やはり ここはよい 忙しない人の流れ 風とともに感じることは 心地がよい 自分だけ置いていかれたような 仲間はずれも忙しなさが連れてゆく 待つ、君も 同じ気持ちを味わったろうか 働きびとの帰路に交じりながら
雑草のチカラづよさみるやいなや 僕はこう呟いた、 「 弟子にしてください 」 咄嗟に見倣わねばならぬ、と 思ったのだろう いのちのかがやきに 恋していたのかも知れない 一生のおわり、 今日からのリザルト画面 屈んでいる時間は自然と多かった
いつだろう、昨日だろうか 置いていかれることに孤独を感じた頃は いつだろう、昨日だろうか 置いていかれることに平気になった頃は 待つ。楽しみがなくなった たった、それだけのこと それだけで 心のなかに空洞ができたよう 必死に蒔いた灰だって 雪と散りゆく 待つ、に倚りかかりたくはなかった 空しさだけ何も訊かずに寄り添った
用水路に流れる 水は 水のりみたく、 何層もの膜で ひかりを遮っていて 不純物まんてんだ だのに どこか 何カラットの輝きを 映していた
桜、お前は春になると 一所懸命に命を咲かせる 私は一瞬のお前だけを捉えて 持て囃すけれど 過ぎ去った春のなごりにだって お前は次の季節の準備に大忙しだ 一所懸命に命を実らせる 私と同じ 四季を生きる木々よ花々よ いっしょの季節に 喜怒哀楽で応えてくれて 生きて、いてくれて ありがとう
今朝も聴こえた お風呂から、洗濯機から 生活にまぎれた 助けて、とふり絞るような 不気味な音 夜が明けると、 昨日の私たちは用済みで 日常のなか 違う何かが 成り変わっているのではないか そんな予感 今日の私が 私らしく寝坊して 私だけはもとのまま、という わけでもないのに 他人がいっそう怖くなる いつか、いつかの好奇心で 手を伸ばしてしまったとしたら 今日の私もいなくなるのだろうか ああ それはとても さびしいような、気がする
目を、耳を澄ましてみる 色とりどりの小人の演奏会 時計が針を刻むように 気付いて、と 音を立て始めるのがわかった いままで気にも留めなかった 彼らの息づかい それはまるで 彼らには彼らの 定めた、 六十秒があるようにも思えて 時計を失ったら 僕らも その日暮らしのばか騒ぎ、に きっと 夢中で取り掛かれる 仲間はずれなんて、いない 一生を
鏡にうつる お髭ひとつ 生長する命を踏みつぶして 今日も、生活がはじまる 誕生を祝福できないこと、 死は事実になりさがったこと 洗面台に振り返るだけで 当たり前じゃないか、と囁かれる 今日の僕は誰の何を奪ったのか それすら定かではないけれど 人の迷惑、なんて言葉 生きるためには言えなくなった いただきますと、ごちそうさま おはようと、おやすみ なくしてしまった 生活のおと