第一章 崩壊

202X

グルント連合

首都 バラント

評議会場 会見広場

報道官「昨今の周辺国との関係の悪化は深刻なものであり....

(ありきたりな言葉をつらつらと並べ、のらりくらりと喋る報道官の姿はテレビ越しにでもとても滑稽に見えた。)

(くだらん。)

チャンネルを変えようとした瞬間、悲鳴にも近い記者の質問が報道官の言葉を遮った。

「我が国の多数の軍事基地からミサイルと思しき飛翔体や軍用機が飛び立ったそうですが本当ですか?!」

言い終わるとほぼ同時にテレビの付属スピーカーが震える程の、【ゴォォォォォ】という低い唸り声のような激しいノイズが身体を突き抜ける。

まるで恐ろしい何かが濁流の様に押し寄せる感覚。これまでに体験したことのない不吉な予感がする。本能が非常ベルを鳴らし、逃げろと叫ぶ。だが、テレビから目が離せない。

ざわつく報道陣、その慌ただしさから自体の深刻さがテレビ越しにでもわかる。

だが、一番狼狽えていたのは他でもない報道官その人だった。数秒の沈黙の後、次に彼が口を開いたとほぼ同時に[パァン、パァン]と

乾いた、だが確かに聞き覚えのある不協和音が報道官と隣に呆然と突っ立っていた秘書であっただろう人物の頭を撃ち抜いた。

会見台後ろの壁が赤く、だがどこか芸術的に染まる。数秒の沈黙の後、叫び声、怒号が飛び交う。突如画面が大きく傾き、人々の靴を映す。おそらく逃げ惑う誰かが三脚を倒したのだろう。

しばらく逃げ惑う人々を映した後、突如拾い上げられ、再び会見台を映し出した。まだ煙を吹いている拳銃を片手に、会見台へゆっくりと、だが、どこか優雅に登壇した白い長髪の軍服姿の女性。

俺はこの人を知っている。

兵役時代、厳しくもどこか優しかった彼女。

そして誰よりも国を愛し、誇りを持っていた。国家安全最高軍事司令官

”ミリヤ.ノーヴェス”

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