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【コラム】職業倫理を自分に問うこと〜「仕事」を盾に、相手を傷つける質問をしていませんか?〜

最近、思うことが色々重なり、昨日とどめを刺すような悲しい話を聞いたので、気持ちの昇華と自戒をこめて残しておこうと思います。
初の有料記事がこれで良いのか、という気もありますが、センシティブな話題がありますので、ご了承ください。

「人の話を聞く仕事は、相手になんでも聞いて良いわけではない」ということを改めて認識したく、この記事を書きました。

職業倫理を養う

職業倫理とは、プロとして求められる行動規範のことを指します。
どの職業にも潜在的にあるとは思いますが、弁護士、公認会計士などのいわゆる士業や医師、社会福祉士、臨床心理士などの医療従事者、キャリアコンサルタントなどの専門職には、具体的な倫理規定・倫理要綱が存在します。

倫理規定が定められていなくても、企業ごとのコンプライアンスや、プロとして研鑽を積む中で個人のプロ意識として、倫理観は醸成されます。

しかし悲しいことに、プロとして業界に染まるからこそ、何かが麻痺して倫理観が失われていくケースもあります。
いわゆる「自社(業界)の常識は世間の非常識」というやつですね。

とある記者会見であった不躾な質問

昨晩、個人的に信じられないような話をみて、悲しくなりました。
Xで話題になっていたので見た方もいらっしゃるかもしれません。

Xで見た情報から、確実性が高そうな情報(全く別の複数人が同じ書き方をしているなど)を元に、起こったことをまとめてみました。

あるタレントさんが、ファンもいるお祝いの場で短時間の記者会見を開きました。その時ある記者の方が、数週間前に亡くなった当該タレントさんの愛犬の話題を振ったそうです。
タレントさんが「僕の心の傷が開くので・・・」と話題を変えようとすると、記者の方は「では今度、(その傷を)開かせてください」と笑顔で答えたそうです。

いかが思われますか?
個人的には、あまりの性格の悪さデリカシーのなさに驚きました。

生死に関わる内容であること、本業には関係がないことから、そもそもが不適切な質問だったと感じます。
さらに、百歩譲って悪気のない質問だったとしても、断られた際に、「(落ち着いたら)聞かせてください」ではなく、「(心の傷を)開かせてください」と笑顔で言ってしまったことは、事実であれば、どう頑張ってもフォローできません。

少し前に、某政治家に対して失礼な質問を投げかけた記者の方が話題になりましたが、わざわざ取材相手を不快にさせたり傷口に塩を塗り込む記者の姿には、不快感を禁じ得ません。

これは対岸の火事なのか?

子供の頃、可愛い可愛い愛犬がいた私にとって、この記者会見の話はとても腹立たしく悲しい話でした。
しかし、これは「非常識な記者がいた」、「マスコミはク○」という話で終えて良いのでしょうか。

記者だけではなく、キャリアコンサルタントをはじめ、相手の情報を得ることを仕事の一部にしている人全員が注意すべきことではないでしょうか。

例えば個人の懐事情や将来設計を聞く、フィナンシャルプランナーや銀行・保険の営業、不動産営業の方。
個人の年収や経歴を聞く、採用面接官、人材紹介・人材派遣の面談担当者。
個人や家庭の問題に介入する弁護士、心理士、など。

「仕事で必要」ということを盾に、人を傷つける質問をしていませんか?
仕事だから何を聞いても良い」と勘違いしていませんか?

個人情報や個人の価値観に触れる仕事の人は、誰しも、業務上必要な確認と無闇な深堀りについて、自らの職業倫理観を持って線引きしないといけないと思います。

ちなみにキャリアコンサルタントの倫理綱領では、質問内容の規定はありませんが、下記のような項目で自制を促していると考えられます(先輩キャリコンの皆様、もし違ったらご指摘くださいませ)。

第一条
キャリアコンサルタントは、キャリアコンサルティングを行うにあたり、人間尊重を基 本理念とし、多様性を重んじ、個の尊厳を侵してはならない
2 キャリアコンサルタントは、相談者を人種・民族・国籍・性別・年齢・宗教・信条・心 身の障がい・文化の相違・社会的身分・性的指向・性自認等により差別してはならない
第二条
第2条 キャリアコンサルタントは、キャリアコンサルタントとしての品位と矜持を保ち、法律 や公序良俗に反する行為をしてはならない
第八条 
キャリアコンサルタントは、キャリアコンサルティングを行うにあたり、自己の専門性の範囲を自覚し、その範囲を超える業務や自己の能力を超える業務の依頼を引き受けてはならない。
※少しずれますが、専門外のことに触れるな、という意味で入れました。

キャリアコンサルタント 倫理綱領 令和6年1月1日改正
https://www.career-cc.org/files/rinrikoryo20240101.pdf

仕事を盾に人を傷つける質問をしてしまう時

人材業界においても、無闇に個人情報に触れて求職者を傷つけることがあります。
私が体験した事例から読者の方にも考えていただきたいと思いますが、センシティブな話になります。
事例は色々ぼかしますが、念の為ここからは有料とさせていただきます。

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