痛みについて勉強しなおす(24)---「Orthopedic Physical Examination Tests」の簡単なレビュー---

今回は痛みの治療に関係のある話題というところで「理学テスト」(整形外科的テスト」の本について簡単にレビューします。というのも、おそらくですが、私の調べた限りこの本は日本語に翻訳されていないので、日本人治療家達が情弱にならないよう紹介するのもいとおかし、かと思いまして(笑)

ところで私のブログ読者の徒手療法家の方々は普段の臨床で「理学テスト」を行なっているでしょうか。例えば有名どころだとSLRテストとかアドソン、ライトテストなどなど。

私はもちろん専門学校で勉強しましたし、だいたいの有名どころは知っていますが、実は今まで一度も使った事がありません。理由は理学テストを頻繁に行う治療院で働いて、実際に患者さんに使用し「診断(という言葉は本来使えませんが)」することがなかったからです。私が修行させてもらった治療院は「体の歪みをマッサージのような手技で矯正して痛みや病気を治そう(←もちろん今となってはナンセンス!)」というところと「トリガーポイントや筋肉の緊張を刺激して和らげ痛みや病気を治そう(←これもナンセンス!)」というところだったので、理学テストを先輩も院長もやっているところを見た事がありませんでした。

で、そうこうしているうちにイギリスに来て、解剖学と生理学を勉強しなおし、エビデンスベースの考えに以降していくと、実は理学テストはあまり当てにならないということがわかってきました。

下の画像は過去にもこのブログで何度も紹介している世界の「意識高い系」理学療法士達の間でシェアされている画像です。つまり理学テストの4%だけがそのテストだけで判断できるほどの信頼性があり(スタンドアローン)、また4%ほどしか高い信頼性がないという衝撃的な内容ですが、この事を知っている日本人徒手療法家はほとんどいないのではないでしょうか?

ちなみに私はアマゾンジャパンのポイントが貯まっていたのでアマゾンで購入しました。たった今まで知らなかったのですが、キンドルアプリ上で翻訳もできるので(DeepL.comと比べてあまり精度は高くないですが)、そこそこ意味はわかると思いますし、その理学テストの名前をyoutubeで探せばどういうやり方のテストかの動画が必ずでてくるので、洋書で購入して問題ないと思います。


で、中身をほんの少し紹介していくと下のサンプルページのように例えば膝の前十字靭帯の引き出しテストに関してリサーチされた論文が精査され、その論文でのSensitivity(感度)、Speciticity(特異度)、の総合的に判断し「ユーティリティースコア」を1から4点で評価しています。(1点が一番信頼性がおける)

[Orthopedic Physical Examination Tests]のサンプルページ5ページから引用 


で、全体のユーティリティースコアを見ていくと1がついているスコア(そのテストで判断できる可能性がもっとも高い)がいくつかあってそれはこの本で紹介されている全理学テストのほんの一部です。というか、かなり少ないです。なので、世界の理学療法士たちはいくつかの理学テストを行い、また問診等をよく行いながら(時には医師の画像診断を用いて)症状を判断するのが常識のようです。

以下、本で紹介されているスコア1のテストのリストです。ほとんどが徒手療法家には直接関係のない内臓疾患のテストと骨折のテストになっていますが一応リストだけでも紹介しておきます。(徒手療法家がちょっとは関係するかもしれないテストは太字にしてあります。

普段、外傷をよく扱う治療院で働く人やスポーツトレーナーのような仕事をしている人には買って損はない本だと思いました。

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