痛みについて勉強しなおす(0.5)---Rest(安静)の重要性を再認識すべき---

前回「痛みについて勉強しなおす(0)」では慢性痛と深い関係のある事柄を紹介しました。それらは全てクリアした上で「◯◯も試したけど治らない」と嘆くべき事柄で、実際には治療家にとっても患者さん側にとっても意外と見過ごされている事ではないかと思い紹介しました。

そして骨格筋痛の治療については過去のブログで紹介してきたようにBiopsychosocial model (BPSモデル)を元にしていくのが世界の常識になりつつあるのですが、そのBio(身体)的要素の中の一つで、実は私もあまり意識してきたことのないことがもう一つだけありました。多分言われてみれば「何当たり前の事言うとんねん!」って言う方々がほとんどでしょう。

それは何かと言うと「Rest(安静)」です。もうこの時点で「お前はアホやな!そんなこともわかってなかったんかい!」っていう方々はここで読むのを終了してしまっても大丈夫です。骨格筋の治療にあたって当たり前すぎる事柄であるはずなので、今回もシリーズ番号は(0.5)としました。

私がなぜ「rest(安静にすること)」を軽視してきたかというと、治療家になった当初から数年間盲信していたトリガーポイント理論、旧マイオセラピー理論に基づき、そして自分自身の勝手な思い込みで患者さんには「よっぽど痛くなければ安静にする必要はない。俺がトリガーポイントを治療したらすぐに治るから」とか「そこの部分が痛む原因である筋の緊張をとって体のバランスを良くしたら痛みがすぐになくなる」的なことを考えていたからでした。そしてそうやって偉そうに患者さんの前で言いふらしていました(涙)

また2016年頃に出会ったイスラエル人オステオパスEyal Ledermanの論文、著書(過去のブログで「体幹トレーニング神話」「プロセスアプローチ」「ストレッチの是非」「PSBモデルからの脱却」として詳しく紹介しています。全ての治療家に知ってもらいたい事柄です)に感銘をうけて、その中で繰り返し述べられていた「骨格筋の治療で重要なことは動くことだ。できるだけ早い段階から動かさなければならない」をその文字通り受け取ってきたからでもありました。

今オンラインで勉強しているイギリス人フィジオセラピスト達のレクチャー(リンク)でも、リハの部分にあまりRest(安静)は積極的に、そして具体的に含めていない印象もあります。おそらくそれはフィジオセラピストやオステオパス達にとって「当たり前すぎる事柄」だからでしょう。Eyal Ledermanにとってもイギリス人フィジオセラピスト達にとってもわざわざ強調しなくてもわかっているだろうから安静の重要性を述べていないのでしょう(と思いたい)。

その「安静」の重要性について認識した契機となったのが、去年からずっと熟読してきた骨格筋痛のマネジメントを詳しく紹介しているPaul IngrahamのE-bookでした。そのE-bookの中で特に治療が難しいものとして、膝痛と足底筋膜炎と腸脛靭帯炎があがっていました。理由は簡単、「安静」にすることが難しい箇所だからです(その中で特に「安静」にするのが難しいのが膝関節)。足底と腸脛靭帯を「安静にする」ということは体重をかけないということだろうと誰でもわかるとは思いますが、果たしてブログ読者達の中で、膝関節を安静にするということはどういうことかおわかりの方々はいるでしょうか?単に体重をかけない、膝が痛くなるような動きをしない、というだけのことではないようです。私はそのE-bookを読むまでは恥ずかしながら知りませんでした。

そこで今回はPaul Ingrahamの骨格筋の治療マネジメントのE-bookの中の特に痛みがなかなか治らない患者のケースの安静プログラムを紹介していき、安静の重要性について再考してみました。ただあくまでも骨格筋の治療においては、中程度ぐらいまでの症状だったらリハ(エクササイズ)が治療のメインになりますが、中程度ぐらいの症状でもなかなか治らなかったり、酷い症状の場合は安静プログラムを組むことがいかに重要かがわかると思います。


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