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オックスフォード大学とケンブリッジ大学(修士・博士)出願攻略(カレッジ出願・奨学金含む)

オックスフォード大学とケンブリッジ大学(合わせて「オックスブリッジ」と呼ばれる)の出願手続きについて少し書くことにした。その理由は、(1) オックスフォード、ケンブリッジ大学院(修士、博士)の出願に関する日本語での情報がインターネット上に少ない(特にケンブリッジ)、(2) 出願プロセスの機微を把握した内容が少ない、(3) 出願プロセスに関するオックスフォードとケンブリッジの比較が少ない、の3点である。この最後の点について、多くの出願者はどちらの大学にも応募するために、比較はある程度役にたつと考える。例えば、当投稿で書いてある通り、奨学金に関する審査はそれぞれの大学に置いて若干異なり、その違いを把握することは重要である。

このような背景から、私は日本語でこの投稿を書き、大学院の出願プロセスに焦点を当て、両大学の比較も交えながら、出願をより成功させるためのヒントを提供することを目的としている。なお、公式かつ最も正確な情報については、それぞれ大学に問い合わせる必要がある。


1. はじめに

中核の内容に進む前に、これらの大学について、簡単に話す。まず、この両大学はカレッジ制をとっている。カレッジとは、大学の自治組織であり、学術共同体(そして寮)のことである。学生一人一人に特定のカレッジは割り当てられ、そこが基本的に宿泊先となる。現在、オックスフォードには38のカレッジ、ケンブリッジには31のカレッジがある。この話題については後ほど触れることにする。

世界ランキングとこれらの大学の強みについて

出願するにあたって重要なのは、これらの大学の世界ランキングをあまり真に受けない方がいいということである(もし考慮する場合)。特にオックスフォードに行ったことのある人、ないしは合格した人は、オックスフォードが世界で最も高いランクにあることを強調しがちであるが、これは偏った情報である。確かにTimes Higher Educationのランキングではオックスフォードが最高位(例えば2022年)であるが、他のランキングではケンブリッジがオックスフォードより上位に来る。例えば、Times Higher Educationランキングと並ぶ権威あるランキングであるQSランキング(2023年)では、ケンブリッジが2位、オックスフォードが4位となっている。

ここで以下の通り記述することができる。(1) これらの大学ランキングシステムは、どのような基準を基に評価するかによってランキングがかわる傾向があるということ、(2) 上位5位はたいていの場合MIT、ハーバード、スタンフォード、オックスフォード、ケンブリッジであるという長期的な潮流があるということ。いずれにせよ、長期的視野をとおすと、全体として、オックスフォードがケンブリッジより優れているというわけではない。どちらの大学に出願することも奨励されるべきである。

しかし、少なくとも首相輩出数とノーベル賞受賞数では、この2つの大学には明確な違いがある。首相輩出数では、オックスフォードが28人(クライストチャーチが最多の13人)、ケンブリッジが14人(トリニティカレッジが最多の6人)と、オックスフォードの方が多く輩出している。ノーベル賞受賞者の数では、オックスフォードが69人(マダレン・カレッジが最多の8人)、ケンブリッジが118人(トリニティカレッジが最多の34人)である。

この点に関連して、オックスフォードは文系、ケンブリッジは理系というある種の固定観念である。以前はそうであったかもしれないが、そのような対照は失われつつあり、どのようなテーマであれ、どちらかを目指すことが奨励されるべきである。それよりも、プログラムの構成や、それぞれの大学にどのような教官や研究機関があるのかを考えたほうがいいかもしれない。

2. 出願について 

2.1 一般的な出願手続きといくつかのアドバイス

学士と修士以上の出願の違い

この投稿は大学院(修士・博士課程)への出願に関する内容とする。 実際の出願手続きに目を向けると、オックスブリッジの学士と修士の出願に関して、いくつかの明確な違いがあることにまず留意しておく必要がある。まず、学士課程では、オックスフォードとケンブリッジのどちらかを選択し、どちらか一方だけに出願することになる。しかし、大学院の出願に関しては、両方の大学に出願することができ、希望するプログラムにいくつでも出願することができる。複数のプログラムに合格した場合、そのうちの1つを承諾し、他のプログラムは辞退しなければならない。この判断は、例えば、奨学金を受け取れたかどうかで決めることもできる。

次に、学部課程では、オックスフォード大学またはケンブリッジ大学のいずれかのカレッジに直接出願し、そこから直接入学許可を得る。しかし、大学院の場合は、まず学部に応募し、そのプログラムから入学が許可されると、カレッジの選考を受けることになる。学部の場合、オックスフォードとケンブリッジのどのカレッジでも同じように出願が難しい(あるいは簡単)と公表されているが、その真偽はここでは関係ない。大学院のレベルでは、特定のカレッジに入ることの難易度が明らかに違う。これについては後述する。

出願に必要な書類

これらの教育機関に大学院レベルで出願する場合、多くの場合、(1) 研究計画書、(2) 成績証明書、(3) 履歴書、(4) ライティングサンプル、(5) パーソナルステートメント、(6) 推薦状、(7) 英語評価(IELTSなど)の資料が必要とされる。これらを順番に取り上げていくが、特にケンブリッジではオンライン・アプリケーションの概要が重要であることを追加で述べておく。

(1) 研究計画書は、特に博士課程レベルでは重要な要素である。注意すべきは、研究計画書は自分の研究内容を最終的に決定するものではない、ということである。博士課程では(修士課程でも)、最初の学年は計画書を修正・強化することが求められる。この時点で研究の内容が大幅にかわることもある。

しかし、計画書は少なくとも以下の情報を合否審査官に示唆する。(i) あなたが研究しようとする一般的な分野(例えば19世紀のイギリス史)、(ii) 文献を調べ、取り組むべき特定の問題を見つける能力、(iii) 首尾一貫した内容を構築し説得力のある主張をする能力、場合によっては (iv) 仮説を立てる能力。さらに、研究内容がどのように学術文献に貢献するのかということ、そしてその研究が実現可能であることを示す必要がある。大学やプログラムによって、要求される要素は異なり、また文字数も600から3000程度と、かなり幅がある。

(2) 成績証明書も応募書類の重要な要素である。このため、成績証明書を受け取るタイミングを見計らうといいかもしれない。つまり、ある時点での成績がもっとも有利な場合、そのときに成績証明書を念のために発行しておく。もっとも最新の成績表を提出する必要はない。重要なのは審査のために十分な情報を提供するということである。

また、出願書類のどこかに、GPAやそれに相当する英国での成績を記載することは意味があるかもしれない。日本の成績を記載しても、英国の大学の査定官にはすぐにその強みが理解されない場合があるからである。GPAで表記するとすぐにあなたの成績が把握できる。この場合たとえば3.8/4.0など、最高点が4.0だと明確に記述するべきである。なぜなら特定の成績システムではそれ以上の成績(例えば4.2)も可能であるからである。いずれにせよ、もし成績をGPA表記しなくとも、彼らにはあなたの成績と全ての過去の日本の生徒の成績を比較するデータベースがあると言われ、過去にあなたと同様の成績で入学したものが、どのような成績で卒業したかを分析できるようになっている。

(3) 履歴書は2ページ程度で簡潔にまとめること。内容は、学業成績、と出版物と職務上の経験(もしあれば)が中心であるべきである。英国の大学では、課外活動の重要性は米国に比べて非常に低いと言われている。強調したい点を太字するのも効果的である。なぜなら、これらの大学のプログラムは大抵の場合、多量の願書を受け取るので、願書の細部までしっかり読んでくれるわけではないと思った方がいいからである。また、(特に明記されていない限り、博士課程への出願で も) 多量の出版物は期待されていないことも留意しておくべ きである。出版物があることが有利に働く場合もあるが、一般的には必要とはされていない。

(4) ライティングサンプルは、パラグラフの構成が説得的であることを示すのに役立つ。英語は完璧である必要はない。また、自分の分析力や洞察力を示すのに役立つ。応募するプログラムによって、字数や必要数は異なる。

(5) パーソナルステートメントは、科目に対する情熱を示すことができる点で、重要である。オックスフォードではこの主観的な部分がより評価され、ケンブリッジではより客観的(例えば成績)などがより評価されるという説がある。実際にそうなのかは誰にも分からない。いずれにせよ、パーソナルステートメントは自身の文章力を示すものでもあるので、説得力のある表現をする必要がある。

(6) 推薦状も重要な要素である。オックスフォードでは通常3通必要であるが、ケンブリッジでは2通である。自分の専門分野の専門家から推薦がもらえるなら、それに越したことはない。そうでない場合は、あなたが出願者としていかに優れているかを示せるような推薦状をもらうといい。自分の大学における成績の順位等を示すと、役に立つかもしれない(特定のプログラムに応募する場合、自身の順位を示さないとマイナスの評価を受ける可能性がある)。プログラムのホームページをよく読むと、審査員が何を求めているかが記載されている場合がある。

(7) あなたがネイティブスピーカーでない場合、英語力の査定を提出する必要がある。IELTに関しては、ほとんどの場合、総合スコア7.5、各要素7.0が必要である。この点数さえクリアしていれば、英語力判定が出願の他の部分、例えば奨学金に影響を与えることはないようである。もし、予定されている期限までにこれらの点数を達成できない場合、何らかの困難に直面する可能性がある。

ただし、この点について両大学は柔軟なようである。例えばケンブリッジの場合、IELTSが数点足りない場合は特別に大学が催す試験をオンラインで受けることができる。そして、このテストはIELTSなどよりも簡単と言われる。オックスフォードでも、数点足りない場合は何らかの交渉が可能な場合もある。つまり、英語を理由に出願を諦めることはないということである。

ケンブリッジ大学 Postgraduate Application Formの重要性

最後に、ケンブリッジ大学では、インターネットでの出願内容の概要(「Postgraduate Application Form」と呼ばれる)が、オックスフォード大学と比較してより重要な役割を担っているようである。ケンブリッジでは、このフォームに現在と将来の成績と主な業績を記載しなければならないが、オックスフォードでは、同様の手続きで成績の分類(例えば、「distinction」)だけを記載し、正確な成績も主な業績も記載しない(そのため、これらの情報は別途、履歴書に記載する必要がある)。

したがって、入学審査の段階では、ケンブリッジの方が履歴書を精読する以前によりこの書類を重視する可能性があり、それによって入学審査が左右される可能性がある。オックスフォードでは、インターネットでの出願内容の概要も重要だが、履歴書をより詳細に審査するようである。いずれにせよ、これらの大学では出願書類を総合的に評価すると公表しているので、履歴書もある程度は審査するようである。

ケンブリッジのPostgraduate Application Formが重視されるのは、特に奨学金に関連して明らかで、一部の奨学金制度はこれを基に決定される(つまり、履歴書は査定では重要視されない)。この点については、後述する。

2.2 特定のプログラムに入学できる可能性

特定のコースに合格する確率は、プログラムごとに異なるので、一概に可能性があるかどうかは言えない。しかし、次の2つのことが言える。

情報公開請求 (FOI)について

まず、両方の大学に情報公開請求 (‘FOI’, Freedom of Information)をすることができる。何人中何人があなたの応募するプログラムに合格したかを明らかにすることができ、合格者の以前の大学はどこだったのか、どのような成績だったのか、などの追加情報を求めることができる。それにもかかわらず、非常に高い成績を持っていても、あるプログラムから不合格になることがある。これにはさまざまな理由があり、例えば、学歴は非常に良いが、応募した研究分野を指導できる人がいなかったため、不合格になることがある。このように、情報公開請求は参考にはなるが、あまり気にしすぎる必要はない。

出願が不合格になった場合も、何が問題だったのかを明らかにするために、情報公開請求をすることができる。不合格になった場合、多くの受験者が再度入学応募しており、情報開示を受けることは、今後の再応募に役立つ場合がある。ただし、合否審査は後で開示されるように書かれているわけではないことに注意が必要である。そのため、(1) 全ての情報(例えば何を話したか)が開示されることはない、(2) 不合格の理由はわかっても、そこに書かれているコメントは直接的で厳しいものである可能性がある。

合格者選定の流れ

通常、合否の査定は8-12週間の間に行われる。この期間をすぎて、まだあなたの申請が長い間「審査中, under review」である場合、これは、 他の応募者と比較してまだ審査中 であることを意味するか、あなたが合格用の待機リストに載っているかである。しかし、中にはもっと早く結果を知らされる学生がいる(特にケンブリッジの場合、admission on rolling basisではなく)。これには2つの理由がある。(i) あなたが格別に優秀な学生と見なされ、あなたの出願を上回る出願はないと見なされた場合、または (ii) あなたが明らかに有力な候補者ではないため、即座に不合格とされた場合。ほとんどの受験者は当然その中間に位置することになる。

しかし、この傾向は、必ずしもそうとは限らない。例えばオックスフォードでは、まず全合格者に合格通知を送り、その後不合格通知を一括して送り、待機リストに載っている受験生に通知する学部がある。

いずれにせよ、合否の通知は遅かれ早かれくる。異常に遅い場合、大学側に連絡することも可能である。特に忙しい期間は、大学側にミスがある可能性は上昇する。

2.3 カレッジ、特定のカレッジに入学できる可能性

カレッジ応募の流れ

前述したように、オックスフォードとケンブリッジはカレッジで構成されており、各学生にカレッジが割り当てられる。インターネットでの出願時に、オックスフォードではカレッジの希望は1つ提出できるが、ケンブリッジでは、第1希望と第2希望を提出することができる。また、「オープン」アプリケーションを提出することもできる。これは、カレッジの希望を一切出さず、大学側に選んでもらうというものである。もし、希望するカレッジからはじかれた場合、自動的にランダムなカレッジに振り分けられる。そのため、戦略的に選ぶことが重要である。個人的には、「オープン」な出願はお勧めしない。なぜなら、カレッジは大学生活において、重要な要素になるからとおもうからである。

選ぶときに考慮すべき点はいくつかある。例えば、(i) 宿泊施設の質(en suite、台所共有など) (ii) 歴史のあるカレッジか、あまりないカレッジか (iii) どのようなソサエティがあるか (iv) 所属学部への近さ (v) 学生数が多いか少ないか (vi) 成人学生だけの環境に配属されたいか、など。

カレッジの概要、合格率について

オックスフォードとケンブリッジには、両大学合計で69のカレッジがある。もちろん、そのすべてをここに書くつもりはないが、ここで少し触れておく。ケンブリッジには、特に有名なカレッジがあり、「ビッグ3」とも呼ばれている。それは、(i)キングス・カレッジ、(ii)トリニティ・カレッジ、(iii)セント・ジョンズ・カレッジである。これらのカレッジは、ほとんどの受験生が少なくともこれらのどれかを希望することから、このような呼び名がついた。そのため、各カレッジに毎年何千人もの応募がある。

それぞれについて簡単に説明する。キングスカレッジは、キングスチャペルなどのある、ケンブリッジの「絵葉書」カレッジであるとされる。キングス・カレッジに通う学生は特に自由主義的だという説もある。アイザック・ニュートンのカレッジとしても知られるトリニティ・カレッジは、学問的に非常に強いことで世界的に有名である。セント・ジョンズ・カレッジも、美しい建築と豊かなコミュニティで有名である。

これらのカレッジには、合格するのが非常に難しい。2019-2020年の出願に関連しては以下のとおり。キングス・カレッジ: 出願数1524(第一希望)、合格が95人、つまり合格率6.2%、トリニティ・カレッジ:出願数2702、109人合格、つまり合格率4.0%、セント・ジョンズ・カレッジ:974人の応募に対して109人の合格、つまり合格率は11.1%。

例えば、トリニティ・カレッジは、主に学業の優秀さに重点を置いている。トリニティ・カレッジは、そのカレッジからの卒業生(学士ないしは修士をトリニティで取得した人)しか受け入れないという意見もあるようだが、そんなことはない。ちなみに、(トリニティ・カレッジ卒業生ではない)日本人学生が修士ないしは博士号の受験においてこのカレッジに受け入れられることはない、という意見は間違いである。ただここで留意すべきは、ケンブリッジのトリニティ・カレッジはオックスブリッジの中でも合格率が最も低く、最難関であるということである。合格者の大抵は以前の学位で少なくとも学年中トップであり、多くは国単位で最も上級な学生達である。そのため、トリニティ・カレッジの学生は修士レベルでもほとんどが全額奨学金を国や大学側から得ている。

加えて、例外的に優秀な学生は、通常、学部・プログラムから先に合格通知を受け取るという点を思い出すべきである。これにより、カレッジは、各プログラムから、出願内容の格別に優れた合格者を先にうけとり、その中から適切な者を選択することができる。そして、出願を早々に済ませることも全く意味はない(admission on rolling basisでない限り)。他に、例えばこのカレッジからの奨学金を得ると必然的にこのカレッジへの所属になるが、この競争は極めて熾烈であると理解するべきである。これらの競争は大抵の場合、約100人程度(多い場合は300人以上)の中からトップである必要がある。

もう一つ指摘しておきたいのは、ビッグ3のいずれかを第2志望として出願すると、非常に高い確率で失敗するので、やめたほうがいいということである。2019-2020年の出願に関しては、第2志望合格率、キングスカレッジでは約0.51%、トリニティでは0.47%である。それよりも、第2志望をより多く受け入れてくれるカレッジを選ぶべきである。例えば、ホマートンやウォルフソンなどを選択するのが賢明なのかもしれない。ここでも、戦略的に選ぶことが重要である。第二志望にも不合格だった場合は、ランダムにカレッジが割り当てられる。いずれにせよ、各カレッジにおいてケンブリッジならではの体験ができる。

オックスフォードのカレッジに関しては、ケンブリッジのビッグ3のような著名なカレッジはないとされる。しかし、クライストチャーチ、バリオール・カレッジ、マダレン・カレッジは特に有名なようである。マダレン・カレッジとマートン・カレッジは学業の成績が高いようで、入学は少し難しいのかもしれない。その他、社会科学系では、ナフィールド が非常に有名で、入学は非常に難しい。これは、ナフィールドに合格すると、自動的にカレッジから全額資金援助が受けられるため、このカレッジへの応募が多いからである。オールソウルズ・カレッジはオックスフォード最難関のカレッジであるが、学生は受け入れない。

2.4 奨学金について 

可能であれば、日本国内から奨学金を得られたほうが良い

オックスフォードとケンブリッジは学費が高いので、入学を許可されたほとんどの学生にとって、資金をどうにか得ることは重要なことである。まず、修士と博士では後者の方がかなり奨学金を確保できる確率が高い。通常英国の大学院修士課程で、大学側から奨学金を受け取ることはかなりに難しいとされる。修士の時点で何らかの奨学金(全額・ないしは全額以下の額)を受け取っているものはおおよそ全体の10%である。加えて、全体的に、合格をもらっても実際に進学するものは合格者の半分程度である。つまり、全体の応募者の中から合格と奨学金の両方をもらうのは10%よりさらに少ない。もちろん、そのうちでも、全額の奨学金を受け取るのはさらに少ない。要するに、基本的に大学側からの奨学金を修士で期待するのはあまり賢明ではないと考えた方がいい。

一方、もし、あなたが国内(日本)の奨学金を確保できれば、それは素晴らしいことであり、競争率も比較的低い。なぜなら、国内選考では、日本人の学生と競争することになるからである。もし、オックスフォードやケンブリッジの奨学金を他の(日本人以外の)学生と比較することになれば、その競争は熾烈を極める。もちろん、候補者の業績は様々であるが、中にはそれぞれの国で最も優秀な学生も競争に参加する。当然、自分も非常に優秀でない限り、奨学金をもらうのはかなり難しくなる。特に有名なのは、オックスフォードのクラレンドン奨学金 (Clarendon)、ケンブリッジではゲイツ奨学金 (Gates)、ケンブリッジ国際奨学金 (International Scholarship)、ハーディング(Harding scholarship)などである。

これらの大学では、日本国籍であることが対象条件として奨学金をもらえる可能性がある。オックスフォード大学では、Kobe scholarship(修士・博士課程、2名)があり、ケンブリッジ大学では、Daiwa Anglo-Japanese Scholarship(修士課程、1名)、博士課程にはない。

プログラム(例えば歴史学の博士課程)からの奨学金はあまりないが、自分のプログラムに資金があるかどうか確認した方がよい。カレッジからの奨学金については、これもカレッジによる。どのカレッジが何を提供しているか、よく調べておく必要がある。日本人であることを理由にしたカレッジの奨学金は、オックスフォードのニューカレッジの麻生奨学金のみである(福岡県出身であることが条件)。それ以外のカレッジの奨学金は、基本的に非常に競争率が高い。

ケンブリッジのPostgraduate Application Formは奨学金の審査において重要

ここで、ケンブリッジのPostgraduate Application Form(オンライン出願の概要)に戻る。成績等に加えて、('Academic Awards') のセクションに自分の業績を明記することが非常に重要である。金銭的な価値のない賞も必ず記入するべきである。もし、自身の大学内における順位がわかっている場合(例えば、試験で200人中5位になったなど)、そのことを明記するといい。ケンブリッジの奨学金の中には、このPostgraduate Application Formをもとに決定されるものがあり、履歴書は見ていないと考える必要がある。出願書類の細部まで精読されるとは思わないで、このPostgraduate Application Formsにはできるだけ多くの実績・情報を記載するべきである。

このPostgraduate Application Formsに加え、所属学部によって奨学金のための30点満点でのスコアも受け取る。この点数は、(i) 学歴、(ii) 推薦状、(iii) 研究計画書の質からなる。27点以上の人は奨学金をもらえる可能性が高いという話もある。しかし、30点満点で30点だったとしても、奨学金を受けられないこともある(この点数は問い合わせると教えてくれる学部と教えてくれない学部がある)。仮に30点満点で30点を学部・プログラムからもらったとしても、候補者は全員再び奨学金を振り分ける機関 (Cambridge Trust)で再度順位分けされるのである。そのため、この点数をあまり当てにする必要はない。

オックスフォードでは、オンライン願書で正確な成績や学歴を指定することはない。そのため、過去の実績は履歴書が主な参考資料となるようである。

3. 最後に

これらの考察が、あなたの意思決定の一助となれば幸いである。もし質問があれば、連絡をfarseer822 at gmail.com


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