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オランダで農業従事者による大規模デモ

2022年6月下旬からオランダで、農業従事者による大規模なデモが続いているようです。

原因は「脱炭素」政策への反発。

 

ことの発端は2019年10月にさかのぼり、オランダ政府が窒素排出量削減のため、畜産農家に対して規模縮小を図る方針を打ち出したことが始まり。

家畜から排出される窒素に対し、2030年までに排出量を半減させるという目標を発表。

一部の畜産場は政府によって一方的に閉鎖される可能性もあるとか、
要請に応じない農民に対しては土地を没収すると警告しているとか。

オランダ政府側が、けっこう強引なようです。

 

こうした政府の方針に反発した農業従事者などが大規模なデモをおこない、コロナのおかげでいったんは鎮静化、しかしここにきてまた再燃し始めたとのこと。

一部のデモ参加者が、パトカーを破壊したり、トラクターやトラックを動員してスーパーや高速道路を封鎖したりと、抗議活動はかなり激化してる模様。

スーパーの商品棚はほぼ空っぽになってしまっているそうです。

 

 

オランダはFARMYのお手本

オランダにはHernborren (ヘーレンブーレン/ヘレンボーレン)という農業の取り組みがあります。

安心安全なものを食べるため、自分の食べる野菜は自分で作りたい。
けど自分では仕事をしながら農作業まで手が回らない…

なので、みんなでお金を出し合い土地を準備し、プロの農家さんを雇う。

そして農家さんと相談しながら時に自身も農場の運営や畑仕事を手伝いながら、農家さんと二人三脚で自分たちが食べる分の野菜を作っていく、というシステム。

 FARMYのシステムも、実はこのヘーレンブーレンがモデル。

それもありオランダって農業先進国でお手本とする国なんてイメージがあり、そんなオランダで農業デモが起きてるとは、しょっとショックでした。

でも詳しく調べてみると、オランダは確かに農業先進国なのだけど、それは同時に効率化と生産量を重視したいわゆる『慣行農法』も、より効率的により大規模に進んでいるということでもあるらしい。

 

そしてオランダ政府は2060年までに
『サステナブルで循環型、かつ社会的なつながりも大事にした食料生産システムをオランダ全土で作っていきたい』
という大きなビジョンを掲げている。

このあたりが、今回政府と国民がぶつかる原因になったのかもしれません。

表明の仕方が悪かったのか、進め方が強引だったのか、はたまた受け取る側に問題があったのか…

いずれにせよ、もしかしたらちょっとしたボタンの掛け違いで起きてしまったことなのかも。


もうひとつのシステム『CSA』

余談ですが、ヘーレンブーレンのほかにも
CSA(Community Supported Agriculture)、日本では『地域支援型農業』
と呼ばれる農スタイルもあります。

消費者が生産者に代金を前払いし定期的に作物を受け取る契約を結んで、生産者が抱える経営上のリスクを消費者が共有するというところがポイント。

消費者は、天候や病気、害虫などによる不作によって作物の収量が減る、つまり自分たちに届く野菜が減るリスクもあることを理解した上で、購入契約をします。

また、消費者自身が農作業にも参加して、積極的に生産者を支援したりも。


農家さんにとっては不安定になりがちな収入面のリスクを減らせ、
消費者にとっては顔の見える農家さんから安心できる食材を手に入れられる。

双方にとってメリットのあるシステムで、ヘーレンブーレンと似ています。

名称や細かいスタイルは違えど、世界中でそういった新たな農スタイルが注目をあつめ定着しはじめているなか、なぜ日本ではCSAもヘーレンブーレンも定着しないのか?

理由としては、前払いシステムに対する心理的ハードルと、認知拡散・集客へのハードルがあると言います。

たしかに
「どれだけの野菜が届くのか分からないのに前払いしたくない」とか、
「野菜なんてすぐ買えるんだしわざわざ特定の農家で買うことない」
と考えている人は多そう。

スーパーへ行けば24時間なんでも手に入る、その便利さが日本の消費者を食を自分事ととらえる意識から遠ざけてしまっているのかもしれません。


デモが落ち着き、新たな手本となりますように

ヘーレンブーレンは英語にすると『紳士の農園(Gentleman's Farm)』という意味に。

みんながハッピーになる方向に、紳士的に落ち着いてくれることを願いつつこれからもオランダの動向を見守っていこうと思います。

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