うら可乃

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コリスポンデンツァロマーナ

7月1日に受けた試験に落ちてしまったのである。この試験に落ちるのは2度目。同じ試験に2度落ちるなど、3年制の1年目以来である。あの時はイタリア語のレベルも低く、外国人がイタリア人とくらべてどれくらいのレベルを求められるのか分かっていなかったし(それは同等に決まっていた)、試験をどう準備するか、いやそれ以前に文学は何を分からなければならない科目なのかも分かっていなかった。そして、試験中に(それは口頭であった)、「その作品は読んでいません」と言ったのだ。それは決して口にしてはなら

    • コリスポンデンツァロマーナ

      2023年11月にたどり着いたこのアパートはアレッサンドラのものである。10年前の2013年にも、私はここで6か月暮らし、その時もアレッサンドラはいた。けれども、当時彼女は週末はいつも両親のいる海辺の町に行って不在であったし、家にいても極度にインドア派の彼女は部屋から出ることはあまりなかったし、ローマ2年目の私は大抵図書館が閉まる19時まで大学にいたため、それほど関わることがなかった。でも話をした時はよく一緒に笑った。私立の学校に通った箱入り娘であるため、一般的なイタリア人女

      • コリスポンデンツァ ロマーナ

        やっとたどり着いたそのアパートにはアリーチェがいた。22歳、北部のすごい田舎から出てきた奇天烈な女子で、ローマ大と、サンルイという音楽学校を並行してやっている。 これまでのローマでの生活では引っ越しを繰り返してきた。このアパートを10年前に去ったのは、ウサギを飼っていた女が檻をキッチンに置き始め、放っておかれたウサギが暴れてフンがキッチンに散らばるようになったからである。その女はイラリアと言った。そのため、イラリアとは嫌な名前だと今でも思う。 そして今はアリーチェがいる。奇天

        • コリスポンデンツァ ロマーナ

          イタリアの大学は10月から始まる。2023年にも試験をこなす為5か月イタリアに来ていたのだが、その時も部屋探しは難航し、知人の部屋を3か月間貸ししてもらうという事で何とか解決した(残りは他州の友人宅へ避難)。しかしながら、今回はそこに空きはなく、どこかに部屋を見つける必要があった。ローマの友人が広告をチェックしてくれて、リンクを送ってくれていたのだが、気の触れたような住宅難の中、部屋は広告が出ると同時に消えて行き、時差がある日本からはどうにも太刀打ちできなかった。以前は部屋を

        コリスポンデンツァロマーナ

          コリスポンデンツァ ロマーナ     ローマ通信

          向いていないことでも10年やればプロになれるらしい。ローマに暮らし始めて10数年になる。とすれば私もローマ人と言えるのであろうか。そうかもしれない。最近日本に帰国した時、地下鉄で列に並ぶのを忘れてご婦人に怒られた。駅やバス停で列に並ぶという観念が頭から消えてしまっていたのである。けれど、大学で教授に何年ローマに住んでいるか聞かれ、「ほぼ10年になります」と答えて「じゃあ君もほとんどイタリア人だね」と言われたとき、私ははっきりと、とんでもないというトーンで「いいえ」と答えた。も

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