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「FAR夢」フェンスで日本の農業を変革する夢 ⁃ 創業精神秘話

私は現在、ファームエイジという、酪農畜産における「放牧」のトータルサポートを行う会社を経営しています。

この会社を立ち上げる前、私は飼料計算ソフトなどを販売する会社で営業をしていました。いわば、アメリカの穀物戦略の第一線に立っていたわけです。当時はそんな意識は全くありませんでしたが。
そんなある日、「ニュージーランド(以下、NZ)の電気柵を売ってみないか」という話を社内でいただいたこと、それが全ての始まりでした。

当時、日本の酪農業界では、「牛から乳をたくさん搾れば搾れるほど優秀である」という価値観が強く根付いていました。
そんな中、当時のNZで生産されていた乳量は日本の半分くらいのもので、NZに注目している企業はあまり多くはなかったように思います。

しかし、どうやら聞くところによると、NZの酪農家の生活はとても豊かだというのです。庭にテニスコートやプールがあって、奥さんはきれいなドレスに身を包んでいるとか。
その話を聞いた私は直感的に「もしかして、乳量と豊かさは全く別のものなんじゃないか」と思うようになりました。

またある日、獣医師さんの紹介で、乳量が二年連続日本一の酪農家さんとお会いする機会がありました。さすがは偉大な牧場主、ただならぬオーラを放っています。
そんな彼に、私は素直に尋ねてみることにしました。

「儲かってるんですか?」

すると、たちまち彼のオーラはスッと消えました。

「実は、全然儲かっていないんだ」

増やしすぎた牛のエサ代に追われ、その牛たちもたちまちすぐに病気になってしまう日々。
彼は日本一である反面、ひどく疲弊していました。やっぱり、別なんだ。

そこで私は彼にNZの酪農の話をしてみました。先進的に行われている集約放牧の仕組みなどを、たどたどしいながらも一生懸命に。
それでなんとか、近隣の酪農家さんも一緒に電気柵を何セットかだけ、試しに購入してもらうことができました。


その約一年後、再び同じ場所を訪ねると、遠くのほうからこちらに向かって勢いよく走ってくる人影が。それは先日柵を売った、近隣の酪農家さんの一人でした。
彼は私の目の前まで来るやいなや、私の手をがっしりと握りしめ、言いました。

「あんたのおかげだ」

彼は興奮しながら、牧場で起きたことを語り始めました。
これまで農協などから勧められてきたやり方はすべてうまくいかなかったこと。柵を立て、放牧を始めたら、乳量はそのままに経費が減って手元にお金が残るようになったこと。使える時間が増え、仕事が楽になったこと。
そして彼は最後にこう話しました。

「俺みたいなどこにでもいるような小さな酪農家でもうまくいったんだ、これは誰でも同じことができるぞ」

私は衝撃を受けました。もし彼の言うように、日本中の経営に苦しんでいる酪農家たちが皆、放牧に本気で取り組むようになったら、日本の農業は、大きく変わることができるかもしれない!

この衝撃はそれから私を大きく突き動かします。
当時は電気柵の販売なんてせいぜい一年間に100万円程度の規模のものでしたが、それによって生み出される可能性は無限大。やらない手はありません。


私は、日本での放牧の普及を自身のライフワークにすることに決め、日本の未来に向けて全速力で走りだしました。


#農業 #酪農 #畜産 #放牧 #SDGs #ファームエイジ

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