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元銀行員の日常【電話編】

私は以前銀行の支店に勤務していた経験があるのですが、基本的に仕事のできないポンコツ社員でした。「アナタ、よくそれで銀行の事務やってるよね」と職場の先輩たちからも何度も言われたことがあります。

社会人になるまでは、自分の性格は慎重な方だと思っていました。だから細かい事務はきっと向いているのではないか…と。しかし仕事をしているうちに、本当は大ざっぱで、あまりよく考えないうちに「えいやあ」で行動に移してしまうタイプだったことが分かりました。

そしてたちの悪いことにプライドだけは今よりもさらに高かったので、当時は仕事の出来ない自分をなかなか受け入れられなかったのです。
今になって思えば、あの頃は「自分は出来ない人間だ、と認めること」イコール「開き直ること」だと誤解していて、つまりそれは自分の成長が止まってしまうことになるのではないか?という懸念もあったのかもしれません。
…なんてカッコつけてみましたが、実際のところはプライドの問題が90%以上です。

毎度のように前置きが長くなってますが、今回は私が銀行勤務時代に経験したエピソードを紹介してみたいと思います。プロフィールで元銀行員を名乗っている割には最近そちら関連の記事を書いていないし、記事の数も少ないなあ…と気付きまして。
今日は電話ネタを2つほど。


電話①聞き間違い

私は支店で後方事務を担当していたので、毎日お客さんから支店へかかってくる電話も取っていました。色々なタイプのお客さんがいましたし、用件も多岐に渡っていました。

そして電話といえば必ず起こる「聞き間違い」。特に私は普段から英語どころか日本語のリスニング能力も怪しいので、頻繁に聞き間違いを起こしていました。

聞き間違いで一番多いのは、お客さんの名前。
例えば、
「加藤さん」なのか「佐藤さん」なのか、
「津田さん」なのか「須田さん」なのか、
「佐々木さん」なのか「鈴木さん」なのか、
…など。
しょっちゅう聞き直してしまいます。

濁点の有り無しパターンもありました。
「なかしま」か「なかじま」か、
「しばさき」か「しばざき」か
…などなど。
今は改善されているかもしれませんが、例えば本当は「やまさき」さんなのに、顧客検索のシステムに「やまざき」と濁点を入れて入力してしまうと、本当はあるはずの顧客データが呼び出されなくてお客さんを電話の向こうで待たせてしまったり…なんてことも。

電話②なんじゃそりゃ

私がいた銀行は株式事務の代行という業務もやっていたので、株式を持っているお客さんから株式配当金や株式相続のお問い合わせを電話で受けたり、店頭で手続書類を預ることも時々ありました。

新人時代の特に支店に配属されたばかりの頃は、そんな業務が存在するということは知っていても、具体的な仕組みや手続き方法についてはまだ全然理解できていませんでした。

そんな頃にある日私が取った電話は、その株式についての問い合わせでした。お客さんからは

端株(はかぶ)の相続をしたいのですが…」

と言われました。

ちなみに端株とは、1株未満の単位の株のことを言います。
2005年以前の制度によるものなので現在の上場企業では端株は現存しないそうですが、この電話の時は10年近く前で、かつ相続のお話だったので亡くなった方が古い株式を持っていたのかもしれません。(なんとなくの知識なので、もし正しい理解でなかったらすみません…)

しかし、株の知識なんてまったくなかったその時の私はもちろん「端株」という意味はおろか、単語の存在すら知りません。
少々お待ち下さい、と電話を一旦保留にして、近くの席にいた先輩に自分が聞こえたままを伝えました。

「あの、お墓の相続をしたいそうなんですけど」

「…は?」

墓場(はかば)の相続をしたい、とおっしゃっていて…」

「え、ちょっと意味が分かんないけど、とりあえず替わるよ」

親切な先輩はそのまま電話を替わってくれて、スムーズに2、3受け応えをした後に専門部署らしき内線に電話を転送していました。銀行の相続業務はお墓の管理までやっているのかな…なんて思ったのですが、どうやら全然違ったようです。電話が終わった後、先輩に大笑いされました。


…という感じで、今日は電話について書いてみました。先ほどもちょっと触れましたが、電話は本当にいろんなお客さんがいました。第一印象はぶっきらぼうでも、話してるうちに気さくな雰囲気になってくる方、逆に一見穏やかで親しみやすそうな雰囲気でも、実は気難しい部分がある方…特徴的なお客さんについては支店の事務メンバーの間でも有名だったりしました。
あと、私がいた支店は比較的高齢のお客さんが多いエリアだったのですが、時々電話口からお孫さんらしき小さなお子さんの声やお家のワンちゃんの声が聞こえてくる時もあって、忙しい業務の合間に少し心が和んだことも。

他の電話ネタもしくはそれ以外のエピソードを思い出したら、シリーズ化するかもしれません。
それでは、また〜。