【ss】やり残した事


“ なあ今から行っていい? ”

“ え、なに? ”

“ 今からそっち行くからさ。
家の前まで出とってや。頼むわ。 ”

“ いいけど…LINEじゃだめなの? ”

“ ええから待っとって! ”


普段からマイペースでお調子者だけど何故か人に嫌われない。
…いや、むしろ愛されキャラといっても過言ではない彼らしい突然のLINEに振り回される。

この忙しい年の瀬に何事かと思いつつも、言われた通り家の前に出てしゃがみこみながら君を待ってた。

寒空の下、少しだけ君に会える嬉しさを抱えながら。


「急にごめんな!」

完全な家着にダウンコートだけを羽織った姿で自転車から降りた君は、いつもより少し幼く見えて少し笑ってしまう。

「なんで笑うん?」

「いや、なんか可愛いなーと思って」

「えー、それ絶対褒めてへんやん!」

「褒めてるよ」

「ほんまに~?」

冗談っぽくおどける君に笑いながら頷くと、
スゥっと息を短く吸い込んで珍しく真面目な顔をした君に周囲の空気が少し張りつめた気がした。


「あのな…」

「うん」

「もうすぐ今年も終わりやんか」

「うん」

「ちょっとやり残した事思い出して…」

「私と?」

「そう」

「なに?」


おふざけなしの彼があまりに珍しくて、こっちまでかしこまってしまう。

そんな私の緊張感に気付いたのか少しだけ柔らかい笑顔を浮かべた君は……


「お前が好きや!」


嘘のない真っ直ぐな瞳でそう言った。


「えっ…」

「突然で悪いとは思ってんけど…、なんか今年やり残した事あったかなーって考えてたらお前の事しか浮かばんくて。
そしたらどうしても気持ち伝えたくなってもうて…」

「ビックリした……」


素直な感想を呟いた私に、君は少し眉を下げながら申し訳なさそうな笑顔で。


「そうやんな。ごめん。
答えとか別に急かすつもりは無いからさ、気持ち伝えたかっただけやねん」

「ううん、嬉しい。」

「えっ…」

「答えなんか決まってるよ。
ずっと私も好きだったんだから…」


みるみるうちに満面の笑顔に変わっていく君が愛しくて。

気持ちが通じ合うなんて思ってもみなかった。


今年最後で最大のサプライズ。



*end*



(来年も、ずっと宜しくね。)
お読み頂きありがとうございました。


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