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なぜ、「投資で一攫千金」は必ず破綻するのか?

世の中には、「株で大儲け」「FXでFIREを実現」
などという情報が溢れています。
でも、これらで富裕層の仲間入りを果たした、
という人には、お目にかかったことがありません。

一攫千金の投機的手法で勝ち続けることができないのは、
人間心理が大きく関係しているためです。

投機のような不確実性の高い行為によって、
人間の心理がどう変化し、
意思決定にどのように影響するのかを論じたのが
“プロスペクト理論”です。

プロスペクト理論の核となっているのは、
「人は、利得に対しては極力、リスクを避けようとする」
「人は、損失を避けようとして、逆にリスクを取りに行く」

という習性です。具体的に説明しましょう。

1、ここにAとBという、二つの選択肢があるとします。
Aを選択すると、何もしなくても50万円もらえます。
一方、Bを選択した場合、「くじを引いて当たりが出たら
100万円もらえるけれども、外れた場合はゼロ円」
になります。

この場合、Bが当たればAの倍の金額がもらえるのに、
ほとんどの人はAを選ぶでしょう。
これが「利得に対してはリスクを避けようとする」状態です。
では、次の場合はどうでしょうか。

2、Aは、何もしなくても50万円失います。
Bは、くじを引いて外れたら100万円失い、
当たりが出たら何も失いません。

この場合は、Bの選択肢を選ぶ人が多くなります。
もし、外れたら、BはAの倍の金額を失うというのに、
人は損失を回避できるかもしれない可能性に賭けたくなるのです。
実際は、期待値に注目した場合、AとBのどちらの選択肢も、
±50万円になるのですが。

かつての経済学では、「人間は合理的に行動する」
とされてきました。
しかし、ご存じの通り、人はしばしば間違いを犯しますし、
必ずしも合理的な行動をするわけではありません。
人は、利益よりも損失を回避しようとする性癖があり、
損失の痛みは、利益を手に入れた時よりも強く感じます。

ところが、同時に人は、目の前にある利益に対して、
我慢が効かなくなるという性質も併せ持っています。
だから、投機で勝ち続けるのは難しいのです。

【参考文献】
『ファスト&スロー』ダニエル・カーネマン他著、2012年、早川書房
『行動経済学の逆襲』リチャード・セイラー他著、2019年、早川書房、他


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