『推しの子』第十五話『感情演技』というタイトルに惹かれる

 テレビアニメ『推しの子』第十五話の『感情演技』というタイトルに惹かれた。なぜなら、自分自身も感情を動かしてしんどくならないと、心に届く演技にはならないのだと身をもって実感したことがあるからだ。

「自分がしんどくならないと」

声優養成所の講師の方が伝えてくださった言葉だ。
確かにそうだと思った。
私が演じるキャラクターは悲しみの果てにいるのに、演じる私がまだ立っていられそうだったらどうだろう。それは分離ではないだろうか。キャラクターと自分は違う存在でも、切り離してしまっては、キャラクターを孤独にしてしまう。同じ場所に立つことが必要であると感じる。

感情を大きく動かせば動かすほど疲れる。そして、その感情が大きければ大きいほど、辛くなる。

感情に蓋をするほどに、星野アクアが抱える感情が大きいということでもある。

 感情を動かすと言っても、そう簡単に感情は動いてくれない。
例えば、ひとりでカフェにいる時にパンケーキが相当おいしくて、おいしいと言いたくてもひとりなら声に出しては言わないことの方が多いのではないだろうか。
だから感情は常に解放されているわけではない。

普段感情を表していたとしても、誰しも大きく感情が表れるわけではないから、演技をしようとした時に急に大きく感情を動かすことは難しくもある。

アクアはまさにそうで、普段感情をあまり動かさないから、急に動かすことは難しい。そして今回は自分の人生と向き合わなければならないほど、大きく感情を動かされるキャラクター(刀鬼)と出会ったのだ。

 第十五話の『感情演技』も素晴らしかった。
自分がしんどくならないと伝わる演技はできない、芝居は感情と向き合う、人生と向き合うことだという俳優のリアルを見事に描いていると思う。
どの作品もそうだが、きっとたくさんの取材や情報収集のもと描かれているのだと思うと、尊敬せずにはいられない。

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