見出し画像

作詞家・小倉めぐみさんの好きな一曲

音楽を聴くとき、歌詞を重視して聴くクセがある。
なかでも、小倉めぐみさんの書く歌詞が好きだ。

私は主にSMAPから、小倉さんの曲に入っていった。
のちに南野陽子の曲もたくさん聴いて、ナンノの曲も好きになった。

小倉さんの書く歌詞には共感できたし、
つらいことがあったとき、いつも救われたような気持ちになった。


SMAPへの提供曲は、日常を切り取ったような歌詞が多く、
そこに潜むモヤモヤや、つらい心理を見事に描いている。

一方、南野陽子への提供曲は、
歌うのが同じ女性ということもあり、
「自分らしく生きたい」と思う強い心理を描いている。


私は小倉さんの曲を聴くたびに、
彼女はきっと、日常のひとつひとつの出来事にすごく繊細な感じ方をされる人で、

同時に、悲しんだり、つらい思いをしたり、
色々悩まれることも多かったのだろうなと思った。

でも「自分は自分のままで生きたい」という強い意志も持っている、
素晴らしい人なんだろうなといつも思っていた。


残念ながら、既に鬼籍に入られており、
また、表に立つことが少ない方だったので、
私は本当はどういう方なのか存じ上げない。

でも「そういう感じ方をする人でないと、こんな歌詞は書けないだろうな」という小倉さんの人柄が、一曲一曲から伝わってくる。


前置きが長くなってしまったけれど
私がとくに小倉めぐみさんの歌で勇気づけられた曲を1曲、紹介したいと思う。


愛がないと疲れる


この曲は、以前にもちょっと紹介したのだが
SMAPのアルバム「SMAP 011 ス」に入っている、
草なぎ剛のソロ曲だ。
実は小倉めぐみさんが、SMAPに提供した最後の曲でもある。


私はこの『愛がないと疲れる』に非常に励まされた。
うつ病でしんどかったとき、いつもいつも聴いてた。
「なんでここまで、抑うつで落ち込んだ人の心理を的確に書けるんだろう」って驚いた。

夜になると落ち込む
何度も起きてしまう
朝がだるい
胃がもたれる
食欲がわかない

描かれていることも、うつ病などの精神疾患の症状と重なる点が多くある。

「もしかしたら、小倉さんも
症状に悩まれることがあったのかもしれない」と、私は感じたのだ。


そんな辛い気持ちが描かれているなかで、
私が一番勇気づけられたのはこの歌詞だった。

君はただ 少しでも 理解しようとしてくれる
いつだって ほんとにありがと

SMAP『愛がないと疲れる』 作詞:小倉めぐみ


きっと、このようなつらい症状は
病気になっていない人には完全には理解できないだろう。
病魔が突然自分を襲ってくるのだ。
これは、病気にならないとわからない辛さだ。

この曲の主人公も、ずっとずっと悩んでいる。
励まされても、余計辛い思いになったりする。
私も同じような心理に悩まされたことがある。
誰もわかってくれないし、それが物凄く辛い。


でも、それでも、
少しでもわかろうとしてくれる人がいること。
そこに気付かされる歌詞に、すごく救われた気分になった。

完全にわからなくていい。
ちょっとでも理解してくれる人が、1人だけでもいる。
それだけで、本当に本当に、安心できる気持ちになる。

自分がこの世から隔離されて、
ひとりぼっちで一生彷徨い続けるような
不安な、つらい世界から少しでも脱することができる。

小倉さんの周りにも、
小倉さんをわかってくれる理解者が1人でもいたのだろう。
きっと小倉さんも、
その人のおかげで救われたんだろうな、とこの曲を聴いて思った。


私はこの歌詞を聴いて、家族を思い浮かべた。
私の家族も、完全には病気を理解できない。
同じ病気になったことがないからだ。

だけど、忙しくても、わからなくても、少しだけでも理解してくれる。
そのことで本当に救われている。

理解してくれる人が近くにいなくても、
行政や病院で、支えてくれる人はいる。
ちょっとでもわかってくれる人がいること。
そのことは本当に、病気の人にとっては
救われる思いなのだ。

今もこの曲を聴くと自然と涙が出る。
それは、“理解者がいてくれた”というほっとした涙なんだろうなあと思う。
“理解者”というのは、自分の周りにいる人のこともだが、
歌詞を書いた小倉めぐみさんのことも当てはまる。

小倉さんが誰かに理解してもらって気持ちが救われたように、
小倉さんもこの曲を通して、理解しようとしてくれる側になっているのだ。

小倉さんは亡くなられているはずなのに、
この曲を聴くと
「私は理解しようとするよ」、「話を聞くよ」と
言ってくれているような、そんな気がする。

今回は『愛がないと疲れる』のみをピックアップしたが、
小倉さんの書いた歌詞で、
この曲以外にも、考えさせられて、勇気づけられた曲はたくさんある。

いつも小倉さんは、歌詞を通して
「あなたはあなたのままで、強く生きていいんだよ」
「気持ちがわかるよ」と
言ってくれている気がする。

ここまで深く、人の気持ちに寄り添うことのできる作詞家さんはいないんじゃないかなと思う。

小倉めぐみさんは、亡くなられたあとも
歌詞の中で生き続けて、
今もたくさんの生きる人を支え続けている。


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?