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東京タワー

先日友達と東京タワーに行った。

スカイツリーじゃなくて東京タワーなんだよな
って言ってた。

ちょっとわかる。


この塔の周りで、たくさんのドラマが生まれたのだ。
いろんな人が、いろんな感情で、いろんな思いで
この赤い塔を見つめてきたんだ。
言葉にできないからって、エモーショナルで片付けたくないけど
私も東京タワーを見て、胸が少しキュッとなった。


この日の東京は太陽がてりてりしてて、
汗ばんだシャツに、たまに吹き付ける風が待ち遠しかった。


ひと。
どこ見てもひと。
多い。
みんなそれぞれ何か抱えて生きてんだなって。


東京タワーに登り、灰色の街を見下ろす。
高くてちょっと怖かった。
高いのダメなんだよな。
でも、上から目線は気持ちが良いものでもあるな、と思ってみたりもして。
なんだかんだ楽しかったよ、東京タワー。



渋谷に帰る。
満員電車に乗る。
目の前に立つ女性のLINEのトーク画面が見えた。
彼女は肘を窮屈に曲げながら、指先を動かす。


「もう私頑張れない。」


恋人か、友人かわからないけど誰かにそう送っていた。


「大丈夫だよ、」


って返信が来てた。
彼女は
「そうかな」
と返信した後すぐに画面を閉じた。
顔をあげた彼女は時速60kmで流れていく景色をただ見つめている。
携帯電話は小さな手にぎゅっと握りしめられていた。



みんな頑張ってる。
その一部を見た気がした。
別にだからと言って私も頑張るという活力にはつながらなかったけれど
確かにそこには
矛盾と不安と生活を抱えて生きる人がいた。


彼女だけじゃない。みんなそうだろう。
みんなやるせないんだ。
よくわかんないモヤモヤの中で
何で頑張ってるんだろうって思いながら頑張ってる。



今日も東京タワーにはたくさん人が集まってる。
人の数だけドラマがある。
そのドラマのワンシーンに東京タワーがいる。


人生の名シーンはいつだろう。
今までにあるかな。
これから作っていくのかな。
わかんないけど、
カットできる瞬間はひとつもない気がするよ。
どれも大切でどうでもいいワンカット。





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