サントリー「マル・デ・シャイン」濱田智子さんインタビュー
ファンベースなコミュニティを実践されている企業に対談形式でインタビューしていく連載企画「ファンベースなコミュニティを考える」。
第1回目はサントリーファンとのコミュニティ「マル・デ・シャイン」を運営するサントリーホールディングス株式会社 コーポレートブランド戦略部の濱田智子さんにインタビューを行いました。
※所属・肩書は取材当時のものです
サントリーでは2019年よりファンベースの取り組みを開始。その一環として取り組んでいるのがファンコミュニティの「マル・デ・シャイン」です。
ファンも社員も「マル・デ・シャイン」があってよかったと思えるコミュニティを目指していきたいと語る濱田さん。聞き手はファンベースカンパニーの池田です。
魅力を体感してもらうファンイベント
池田:サントリーさんとは2020年頃からファンミーティングやファンインタビューの実施、「マル・デ・シャイン」立ち上げ期の企画などでファンベースカンパニーもご一緒させていただきました。改めて、コミュニティを立ち上げられた背景をお聞かせいただけますか?
濱田:コミュニティを立ち上げた2019年頃はサントリー全体で“ファンを知る”ことに力を入れ始めた時期でした。ファンは何がきっかけでサントリーを認識し、好きになってくださるのか、まずは今いらっしゃるファンに向き合うことで知りたいと考えていました。
その中で、企業の商品広告だけでは情報が届きづらい課題感も日々感じており、活動の裏にあるサントリー社員の想いをファンの方に届けるべくコミュニティ「マル・デ・シャイン」を立ち上げました。名前の通りコミュニティ名は“まるで社員”にかけたシャレですが、私たちは愛着を込めてファンを“シャイン”と呼んでいます。
池田:ファンが自分も仲間なのだと感じられる素敵なネーミングですね。コミュニティ内ではどのような活動をされているのでしょうか?
濱田:ファンイベントを中心に行っています。コミュニティを立ち上げた当初は工場見学などのリアルイベントを実施していましたが、直後にコロナ禍になり、オンラインでの活動を模索しました。サントリーにまつわる色々な面を知っていただこうと、サントリーホールからバックステージツアーやミニコンサートを中継したり、OB選手が解説しながらスポーツの応援イベントを行ったり、ビール工場をオンライン見学したり、多様なジャンルのイベントを行っておりました。
コロナが落ち着いてからはオフラインでイベントを企画・運営しています。一緒にスポーツを楽しんだり、ビールを飲みながら交流したり、やはり実体験に勝るものはないと実感しています。
池田:幅広いジャンルのイベントで、楽しみながらファン度があがっていきそうですね。何度も参加されている方も多いのでしょうか。
濱田:私の肌感覚としては半々くらいです。イベントきっかけで登録して参加してくださる方もいれば、何度も顔をあわせている方もいらっしゃいます。何度も参加いただいている“シャイン”の中には、応募フォームに「お久しぶりです、濱田さん。」と名前を書いてくださる方がいらっしゃったり、サントリーの価値観の1つ”やってみなはれ”のオリジナルTシャツを作って当日着てきてくれた方もいます。顔が見えるコミュニケーションをとれていることを担当者としてとても嬉しく感じています。
”傾聴”を軸とした顔が見えるコミュニケーション
池田:濱田さんからサントリーの魅力が伝わっているように感じます。コミュニティ運営される中で大事にされていることを教えていただけますか?
濱田:リアルイベントでもアンケートでも、いただいた声をじっくり聴いて社内の活動に活かしていくことを大切にしています。おひとりおひとりの”シャイン”の声に向き合うことで、サントリーに対して持つイメージや想いを知ることができます。
池田:いただいた声を社内の活動に活かすというのは具体的にどのようなことをされているのですか?
濱田:企画にあわせてアンケートやレポートを設計し、”シャイン”に回答いただいた内容を各部署に共有しています。ともに企画をしてくれた部署の方はイベント当日も参加してもらうことで、定性的な部分とアンケートでわかる数値を一緒に見ることができます。
アンケートやレポートはかなり具体的で、“こんな部分が好き”というような好意的な内容から“もっとこうしてほしい”というご要望まで、多くの声をいただきます。過去には負担になっていないかと“シャイン”にきいたこともありましたが、「むしろ協力できることは声をかけてほしい」と積極的に言ってくださって。どの部署もダイレクトに施策に活かしてくれていると感じますし、普段なかなかお客様との接点がない部署としては、直接声をきけること自体に価値を感じるとも言ってくれています。
池田:ファンの声って本当に大きなエネルギ―になりますよね。社内もすごく協力的。
濱田:コミュニティを立ち上げた当初は色々な部署に「一緒にやってくれませんか」とお願いしていましたが、今は「今年もイベント一緒にできますか?」「こんな企画、”シャイン”のみなさんに楽しんでもらえるかな?」と相談してくれる社員も増えてきて、今までやってきたことが実を結んできたように感じています。
池田:“シャイン”との活動が、社員にとっても価値のある場所になって。そんな好循環が生まれているのですね。
濱田:「マル・デ・シャイン」の活動に関しても色々な声をいただいて、そのお声を元に私たちが企画しています。今開催しているイベントは首都圏が多いのですが、先日開催した「ザ・プレミアム・モルツ」神泡体験会も三重から夜行バスで来てくださる方や、静岡から新幹線で来てくださる方もいました。そこで「東京以外でも開催してほしい!」というお声にお応えしてはじめて創業地である大阪でも開催することになりました。一歩一歩ではありますが、サントリー創業当時から大事にしている「やってみなはれ」精神で、熱いお声に応えていきたいと思っています。
池田:ここでも「やってみなはれ」精神が。ファンベースなコミュニティってやってみないとわからないことも多いから、日々トライ&エラーですよね。
濱田:そうですね。大切にしている価値観が社内に浸透しているからこそ、新しいことにも取り組み続けられると思っています。イベント名も「○○してみなはれ」というように「やってみなはれ」をもじっているので、”シャイン”の多くも認識してくれています。
数字では測りきれない熱量の高さを重要視
池田:ファンの方の熱量が素晴らしいのはもちろんのこと、濱田さんに伝えればいい方向に変わるという実感があるからこそだと思います。数値目標のようなものはあるのでしょうか?
濱田:最初は会員数を増やすことを意識していましたが、今はそれよりも熱量の高さを大切にしています。指標としてみているのは、参加者の好意度とNPS(顧客推奨度)です。登録してくださる”シャイン”の方は推奨度がもともとかなり高いのですが、イベント参加後はさらに推奨度があがります。今いる“シャイン”の熱量が上がることで推奨がどのように起きるかは意識しています。
池田:熱量の高さはコミュニティを続けていくうえでとても大事だと思います。まず、熱量の高いコミュニティを設計するために工夫されていることはありますか?
濱田:入会する際に“エントリーシート”と名付けたフォームに記入いただき、あえて心理的ハードルをあげています。ファンベース診断の設問を入れてファン度を確認したり、フリーアンサーでエピソードをお答えいただいたり。そうすることで、はじめからサントリーに興味を持ってくれている方や”シャイン”として活動したいと思っている方々に登録いただいているように感じています。
池田:”ファン”に参加してもらう入口、とても大事だと思います。イベントも参加することで自然と推奨も起こりそうですよね。
濱田:そうですね。先日行った神泡体験会でも、グラスの洗い方やビールの入れ方で味に影響があることを実践してもらったのですが、「早速会社の同僚に伝えました!」「家族と飲み比べしてみました。」というお声を多くいただいております。何よりも参加した”シャイン”の方が楽しんでくださればと思い企画していますが、やはり周りの方に伝えてくださるのはそれだけ印象に残っていただけたんだなと嬉しく思います。
池田:参加者の方はおひとりで来られる方も多いのですか?
濱田:スポーツ観戦など企画によってはペア参加可能にしているものもありますが、おひとりでいらっしゃる方がほとんどです。”シャイン”の方のコミュニケーション能力の高さには毎回驚かされます。初対面でもサントリー商品きっかけですぐ打ち解けて和気あいあいとしていたり、アンケートでも「ビール好きな仲間とのコミュニケーションが楽しかった」というような声を多くいただきます。過去には「マル・デ・シャイン」のイベントきっかけで出会って結婚した方もいらっしゃるんです。おふたりの大好きな白州で結婚式もされて、それも共有してくださって。当日電報をお送りしたのですが、私たちも幸せのおすそ分けをいただきました。
池田:すごい!今後さらに取り組んでいきたいことはありますか?
濱田:そうですね。今以上にコミュニティで聞くことができた“シャイン”の声を社内に活かしていきたいです。いい循環を生むことで、”シャイン”が参加できる企画の幅も広がりますし、サントリー社内でも”シャイン”の声をさらに活かすことができる。社員も”シャイン”も「マル・デ・シャイン」があってよかったと思えるコミュニティを目指していきます!
池田:私自身“シャイン”のひとりとしてもこれからが楽しみです。ありがとうございました!
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