見出し画像

【ファンベース事例③ 一般社団法人 日本自動車連盟 (JAF)編】ファンとの共創を通じて、地域会員と深く交流するコミュニティを設立。JAFがファンベースで目指す未来とは?

こんにちは!ファンベースカンパニーのウェブサイトで紹介している「ファンベース事例」をnoteでもご紹介します。
今回は一般社団法人 日本自動車連盟 (JAF)によるファンベースの取り組みをご紹介します。ぜひご覧ください。


ドライバーであれば、誰もが名前を耳にしたことがある一般社団法人 日本自動車連盟(以下、JAF)。クルマのトラブルがあれば、365日24時間、いつだってJAFの隊員が救援に駆け付けてくれます。1963年に創立されたJAFは、クルマ社会の発展と共に成長し、その会員数は2,000万名をこえる規模となっています。

サービス精神をもって、社会のために尽くすことを事業推進の基本とするJAFでは、2022年よりファンベースの取り組みを開始。ファンベースカンパニーでは、組織内におけるファンベースへの理解浸透や支部のファンベース施策の実行支援など、多岐にわたるサポートを行ってきました。

JAFがファンベースに力を入れて取り組む理由とは。また、ファンベースを通じて実現したい未来とは。活動の推進を担っている経営企画部長の酒井明夫さんとマーケティング本部長の森保人さん、静岡支部にてファンベースの推進役を担っている望月かおりさんと黒川杏奈さん に話をうかがいました。聞き手は、ファンベースカンパニーの沼田直希です。

開かれたJAFを目指し、組織風土の改革に着手

FBC沼田:2022年よりご一緒させていただいていますが、このタイミングでファンベースの取り組みを開始された背景をお聞かせいただけますか?

酒井さん:2021年度は、私たちにとって大きな転換期でした。JAFの会員数は1963年の発足当時よりほぼ右肩上がりに増加しており、2021年10月には過去最多の2,000万名に到達しました。一方で、国内の人口減少や自動車保有台数の頭打ちという現実を踏まえると、これからは会員数が減少していく未来が予見されます。

さらに、組織内部にも大きな課題がありました。JAFといえば「お堅い組織」というイメージがあるかもしれませんが、実際にヒエラルキーが強く、本部が各支部を評価する指標が40項目も存在していました。これにより、現場はその指標を追うことに忙しく、顧客のためにと思いながらも、与えられた指標のために頑張ってしまう傾向がありました。

こうした課題感から、2021年度に業績評価の仕組みを抜本的に見直し、各支部の評価指標を「3+1」に集約しました。具体的には、支部ごとの収支、在籍会員数、ロードサービスの現場到着時間。そして、最後の「+1」として、地域で暮らす人々の声に耳を傾け、地域の課題を探り、それを解決する活動の推進を加えました。

同時に、①困りごとのある場所・場面にいち早く駆けつけ「寄り添う」こと。②相手の目線に立って、課題や要望に「向き合う」こと。③旧来の手法にとらわれず「刷新する」ことの重要性をメッセージとして発信してきました。このように、顧客と真摯に向き合い、自由な意見が飛び交う「開かれたJAF」を目指す風土づくりを始めたのが2021年度だったのです。

JAF 経営企画部長 酒井明夫さん(右)・マーケティング本部長の森保人さん(左)

森さん:さらに、2022年度にはマーケティング本部が新たに立ち上がりました。以前は広報部という名称でしたが、広報という言葉には一方的に発信するイメージがあります。顧客の声を積極的に聞き、顧客の課題や要望に応える活動を推進するには、もっと双方向のコミュニケーションが必要です。そうした想いから、組織の役割も変化する必要があると感じたからです。

顧客の声をどのように聞いていくかを考えるなかで、ファンベースの考え方に行きつきました。SNSを見ていると、JAFを応援してくださる投稿があり、JAFのファンと呼べる方々が存在していることを実感していました。であれば、こうしたファンの声をしっかりと聞き、様々な活動に反映していくことが重要ではないかと思いました。

そこでファンベースカンパニーさんに声をかけ、まずはファンベースとは何かを組織内で共有するために、全国の支部の事務所長が集まる場で講演会を開催してもらいました。そして、ファンベースを自分たちも実施したいと思う支部が現れたら、その支部が主体となって挑戦してほしいと考えていました。

ファンベースを実行する現場の熱量が何よりも大事

FBC沼田:講演会の結果、手を挙げてくださった支部のひとつが静岡支部でした。その後、ファンベースカンパニーでは静岡支部の皆さんとご一緒させていただき、ファンミーティングの実行支援やファンコミュニティの設計支援など、様々な取り組みをサポートさせていただきました。

静岡支部の取り組みをサポートさせていただくなかで印象的だったのが、本部の皆さんが支部の皆さんの自主性を最大限尊重していた点です。この方針について、本部の皆さんはどのような意識を持って支部の活動を見守っていたのでしょうか?

酒井さん:もともとヒエラルキーが強い組織でしたので、我々が必要以上に現場に介入すると、「本部からの指示で行っている」という雰囲気が出てしまうと思ったんです。ファンの方々と実際に向き合う現場の意志を尊重するために、距離感には特に気を遣っていました。

そういう意味では、ファンベースカンパニーさんのファシリテーションには本当に助けられました。本部としての方針を踏まえつつ、現場の職員の意向を上手く引き出して、一番良い着地点を一緒に模索してくれました。そうしたスタイルは我々にとって新鮮で、多くを学ぶ機会となりました。

FBC沼田:現在は静岡支部のみならず、様々な支部でファンベースの取り組みが開始しています。どの取り組みにおいても、その支部の職員の方々が自主的に取り組まれている状態ですよね。

札幌支部ではファンミーティング開催後、ワークショップなどを継続して開催した

森さん:そうですね。ファンベースの取り組みが広がってほしいと考えていますが、全支部が足並みを揃える必要はないと思っています。ファンベースにおいて最も大切なのは、「ファンとしっかり向き合いたい」という現場の熱意だからです。本部からのお達しのような形でファンベースに取り組んでは本末転倒だと思っています。

静岡支部においても、発起人となったのは所長ですが、所長がファンベースへの想いを支部内で伝えて、その上で一緒に実行する仲間を募っています。だからこそ、プロジェクトメンバーには熱量の高い職員が揃い、いい取り組みへと発展していったのではないでしょうか。

ファンベースの考えに共感し、自分たちも挑戦したいと手を挙げてくれた支部を、本部としてしっかりと後方支援する。そして、共感する仲間とともにファンベースの輪を組織内で少しずつ広げていけたらと思っています。

会員との交流を深めるコミュニティ『静岡クルマ大学』

FBC沼田:ここからは、静岡支部でファンベースの推進役を担っている望月さんと黒川さんにお話を伺いたいと思います。まず、ファンベースに取り組むと聞いたときの印象はいかがでしたか?

黒川さん:当時はファンベースという言葉自体を知らなかったので、そんな考え方があるのかと驚きました。同時に、静岡支部で実施するとなると、どのような形になるのか興味が湧きました。ただ、JAFのファンと自称してくださる会員様が本当にいるのかは不安に思うところもありました。

望月さん:私も同じく不安でした。会員の方との親睦イベントは開催していましたが、ファン向けのイベントとして実施したことはなかったので、どうなるか心配でした。しかし、ファンの方々の声を聞き、ファンの声を支部の様々な活動に活かしていきたいという想いがあり、ファンベースの取り組みに期待もしていました。

FBC沼田:期待半分、不安半分という中で始められたのかと思いますが、これまでの活動内容をご紹介いただけますか?

黒川さん:最初に行ったのは、ファンミーティングです。JAF静岡支部に在籍している会員の方に、メールマガジンでイベントの告知をし、参加者を募集しました。イベント当日は、「JAFのどこが好きか?」「JAFをもっと好きになるには?」というテーマで、グループごとにディスカッションしていただき、どんな意見やアイデアが出たかを発表してもらいました。

JAFファンミーティングin静岡を開催

望月さん:その後、ファンミーティングで寄せられた声をもとに、ファンの方々との交流をより深めるコミュニティ『静岡クルマ大学』を創設することを決めました。そして、具体的なカリキュラム内容をファンの方々と一緒に考えたいと思い、約100名のファンと一緒に『静岡クルマ大学立ち上げプロジェクト』という共創プロジェクトを約1年間行いました。

取り組み内容としては、ファンからアンケートで募ったカリキュラムを、私たちのほうで整理し、「どのテーマの講義に興味がありますか?」「どのイベントに参加してみたいですか?」と、ファンに投票をお願いしました。そこで支持が多かったものをベースに、静岡クルマ大学のカリキュラムを組み立てていきました。

黒川さん:静岡クルマ大学は2023年10月に開学し、翌月からカリキュラムがスタートしました。「クルマをしっかり学ぶ」「静岡を楽しく学ぶ」「仲間と楽しむ・出会う」をコンセプトに、様々な企画を実施しました。2024年3月には「大人の修学旅行」と題して、静岡クルマ大学の参加者の皆さんが作成したドライブコースを1日で回る企画にも挑戦しました。

2024年3月に開催した「大人の修学旅行」

ファンと接することで、仕事への向き合い方にも変化が

FBC沼田:取り組む前は「本当にJAFのファンは存在するのだろうか?」と不安を抱えていたと話されていましたが、実際にファンの方々と交流してみて、どのように感じましたか?

黒川さん:まずはファンの方々の熱量の高さに驚きました。ファンミーティングの参加申し込みの際に、「JAFのどんなところが好きか」をお聞きしたのですが、長文のメッセージを数多くいただいたんですね。「ロードサービスでお世話になったことがあり、それ以降、JAFさんには感謝の想いでいっぱいです」みたいなメッセージだったり。

望月さん:ファンミーティングでファンの方々とお話しさせていただくと、JAFの様々なサービスや取り組みをご存知の方ばかりで、本当に私たちの活動に注目していただいていることが伝わってきました。そのため、「JAFをもっと好きになるには?」というテーマでは、多岐にわたるアイデアが生まれて、話が尽きなかったです。

FBC沼田:そういったファンの熱量に触れる中で、仕事への向き合い方に変化が生まれたりしましたか?

黒川さん:ファンの方々が自分たちの取り組みに注目してくださっていることを肌で感じ、「ファンの方々の期待に応えるような仕事をしなくては」と背筋が伸びる思いです。自分たちは誰のために仕事をしているのかが以前より明確になり、日々の仕事に対する意識が高まりました

望月さん:私も同じですし、ファンベースの取り組みに参加した私たち以外の職員も同様だと思います。職員同士の何気ない会話でもファンの方々の話題が増え、それくらいファンの方々は大きな存在になっています。その結果、支部全体としてファンベースにしっかりと取り組んでいこうという気運が高まっています。

FBC沼田:そうした声が支部内からあがっているのは、私たちとしても嬉しい限りです。最後に、これからのファンベースの取り組みへの展望を教えてもらえますか?

黒川さん:静岡クルマ大学の活動を継続していくなかで、私たちが最終的に目指したいのは、「JAFのファンで良かった」と心から思ってくださるような関係性をファンの方々と築くことです。いわゆる「ファン度」を高められるような活動をしっかりと行っていきたいです。

望月さん:そうですね。ファンの方々が「静岡クルマ大学に参加して良かった」と思ってくださったり、「静岡クルマ大学に参加すると楽しいよ」と周囲に伝えたくなるような、そういうコミュニティに育てていきたいと考えています。

JAF静岡支部のファンベースに取り組む職員のみなさん

支部ごとの課題に寄り添い、ファンベースの輪を広げていく

FBC沼田:静岡支部のお二人にお話を伺いましたが、ファンベースに取り組むことで仕事に対する姿勢に変化が生まれたという話がありました。静岡支部のみならず、他の支部でもそのような変化を感じていますか?

酒井さん:JAF職員の中で会員の方々と直接接する機会があるメンバーは意外と少なく、法人向けの営業や事務所内での業務を行っているメンバーは、会員の声を聴く機会がほとんどありません。そのため、会員の方々から感謝されていると聞いても、実感しにくい部分があったと思います。

そういう意味で、ファンの方々とお会いし、直接声を聞かせていただくことで、自分たちの仕事に自信や誇りを持てる職員が増えているように感じます。実際、ファンベースに取り組んでいる様々な支部から「日々の業務に対するモチベーションが上がった」という話を多数聞いています

森さん:支部内の若い職員が中心となってファンベースの取り組みをすすめていることが多く、そのメンバーたちを非常に頼もしく感じています。自分たちで考えて施策を実行し、ファンの方々と接することで成長していく。ファンベースの取り組みは、そうした成長の機会にもなっていると感じます。

FBC沼田:JAF内でファンベースの輪を広げていくために、本部として注力していきたいと思っていることは何ですか?

酒井さん:先ほどもお話ししたように、ファンベースの取り組みが広がってほしいと考えていますが、本部からのお達しのような形で取り組みを推進することは避けたいと考えています。

ただ、静岡支部のように「ファンベースに取り組みたい」意志はどの支部にもある中で、様々な業務との兼ね合いで実行に移せないという現実もあります。 そうした課題を抱えている支部に寄り添い、どうやったら活動を始められるのかを本部としてサポートしていきたいです。

森さん:ファンベースの取り組みが3年目に入るなかで、ファンベースの理解者を組織内にどう増やしていくかが、マーケティング本部の重要な課題になってきていると感じます。こうして根づきはじめているものを、現在取り組んでいる人たちだけで終わらせるわけにはいきません。

そのため、今まさに、ファンベースに取り組んでいる職員たちを中心とした「社内コミュニティ」を作ろうとしています。知見を共有したり、支部ごとの課題を一緒に解決する場として、ファンベースカンパニーさんにも運営を手伝ってもらいたいと考えています。こうした場や仕組みを整えていくことが、直近の重要なテーマになると思います。

FBC沼田:我々としても、JAF内でファンベースの輪を広げる取り組みを今後もご一緒させていただきたいです。色々とお話を聞かせていただき、ありがとうございました。

◆担当プランナーの沼田目線のエピソードはこちらをご覧ください

◆ファンベース事例はこちらのマガジンをご覧ください♪

◆ファンベースに関わる最新情報を月1回メルマガで配信しています!
 
セミナー情報、ファンベース事例などファンベースに関するお役立ち情報を毎月1回配信しています。ぜひご登録ください♪


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?