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読書記録『リベラリズムの終わり』

 私はあんまり本を読まなくなったのだが、年末年始は暇すぎて2冊読んだので紹介する。
 1冊目は『リベラリズムの終わり』である。


 題名はリベラリズムの「終わり」としているが、内容はリベラリズムの「限界」と「矛盾」を示している。

婚姻制度はリベラルか

 矛盾の例として婚姻制度を挙げている、リベラリズムは自由に重きを置き、同性婚はリベラリズムによって肯定される。しかし、同性婚が法制化されている国でも近親婚・重婚は認められていない。本人の自由意思で望んだとしても近親婚・重婚はできないのだ。この理由について簡単に言うと、筆者は嫌悪感があるからだとする。
 確かに自分の嫌悪感を正当化するための理論を持ってくるような人は最近よく見かける。そしてその場合はリベラリズムやポリティカルコレクトネスがよく採用されているが、上記のような矛盾点を解消できていないのが現状だ。逆に同性婚に反対する人も、その根底にあるのは嫌悪感があるからだと言えるかもしれないが。

右傾化の原因とは

 そして、最近のナショナリズムの台頭や右傾化、すなわちリベラリズムが凋落している理由は、国家全体のパイが少なくなったからだとする。パイとは福祉などに使える財源、すなわち国家収入である。経済が成長している状況で支持を集めたリベラリズムの問題点が、日本経済は後退している状況下で顕在化してきている。
 生活保護不正受給バッシングや外国人排斥は、財源が足りず自分の生活が不安だという問題意識から起こっているのであり、寛容や共生を掲げたところでは問題は解決しない。


 内容としては少し薄く、読み切った感じはしなかったが、矛盾を抱えたリベラリズムの問題点を功利主義との対立を踏まえた上で指摘し、その原因が割と読みやすく考察されている。
 個人的に感じたのは「純粋なリベラリズムは存在するのか」という点である。人間は都合の悪いことに目を瞑るので、リベラリズムを100%実践するのはおそらく不可能である。
 リベラリズムは純粋で絶対的な規範などでは決してなく、そのリベラリズムがこれからどのように他の主義主張に作用していくのか、そのターニングポイントは近いような気がする。

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