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完全自殺を目指した大人になれない悲しい男【深海で死んだ7歳の男の子】大人の為のシリアス絵本

完全自殺を目指した大人になれない悲しい男
【深海で死んだ7歳の男の子】大人の為のシリアス絵本



深海自殺をすることなく、気持ちよく生きる方法とは? (坂庭 鳳(さかにわつとむ)さん)
自己肯定感が高いとはどのような状態か?

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【深海で死んだ7歳の男の子】 完全自殺を目指した大人になれない悲しい男

https://open.spotify.com/track/5hcjogigWOYyG4qoqelTnv?si=I-gr1p0NRiGHYo4Ap0Obng 【ご覧になる前にここをタップしてBGMをかけてください】

 その日、コタロウは、ゆらゆらと深海へ沈んでいった。

 どんどん、どんどんと沈んでいって、ついには深海へ到達した。

 もう3時間も、クラゲの様に揺らめきながら、暗い海の底を漂っている。




 両足に、ロープでしっかりと、大きなダンベルをくくりつけ、

 深海に向かうほど、気圧で押しつぶされ変形した身体が、まるでスルメのようだった。


 口と肛門からは内臓が飛び出して、クラゲやイソギンチャクの様に、潮の流れになびいていた。

 しっかりと睡眠薬を飲み、念のため排便も済ませ、怖がりのコタロウが失禁することもなく、無事に海に飛び込むことができたのだ。


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 “飛び込む”と言う表現は正しくない。

 ダンベルを一つ両手で持ち上げると、ドボーン・・・。

 続いてもう一つを、ドボーン・・・と海に投げ入れた。

そして、ボートの中を這いずるようにして、滑り落ちるように入水したのだ。

 一時間も前に飲んだお腹いっぱいの睡眠薬で、視界はかすみ、意識は朦朧としていた。

 そんな時にもコタロウは、

「ふふ・・・ “朦朧”は“ツキ偏”だけれど・・・。身体を表す・・・さまざまな・・・漢字・・・。そう“腰”とか“腕”とか“膝”などは・・・“ニクヅキ偏”なんだ・・・。
 左側が偏・・・ 右側が旁(ツクリ)・・・ もう死ぬから・・・何の役にも立たないなあ・・・ ふふふ・・・」

そんなことを考えていた。

 海に落とした、ダンベルに繋がるロープを縛った足首が随分と痛い。

 鬱血して、やや紫色めいて冷たくなっていた。

 コタロウは少し傾いたボートの上で、赤ちゃんのように四つん這いで後ずさりした。


 少しずつ脚を水面に入れ込んでゆく。

 衣服があると鮫が食べにくいかもしれないとの配慮から、全裸の姿で片脚をあげる姿が、“犬の小便”のようで滑稽だった。

 先ほど、ダンベルを海に落とした際に、跳ね返って頭部に浴びた塩水が、垂れ落ちて来て眼にしみる。


 ダンベルが余りにも重いから、両手で掴まるボートの端が傾いて、今にも反転しそうだった。

 (さあ、この手を離したらおさらばだ)

 片手でナイフを掴むと、反対側の手首に、そっと切り傷を入れた。

(これで鮫を誘き(おびき)寄せられるだろうな・・・)

コタロウは意外と冷静な自分に不思議な感じがした。


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昨夜は岸辺に近い寂れた旅館で一泊した。

 女将もおらず、フロントには、何かと兼務であろう、普段着のままの男性二人が突っ立っていた。

 最後くらいは固形物を食べてみようかと一瞬 頭によぎったが、やはり食欲はわかず、一日中お腹がグーグーと鳴るのを楽しんだ。


 何も食べていないのに、随分と便がしっかり出ることに驚いた。

 お腹がぺちゃんこになって、むしろ軽やかな気持ちだった。

(ふふ。自害の前のファスティングか・・・)

 コタロウの残りの所持金は、この旅館へ一泊する分だけだった。

 ボートは昨夜のうちに、岸辺にいた漁師と交渉して、倉庫の中から出てきたボロボロのものを5万円で譲り受けた。

 エンジン付きだ。簡単には救助されない場所まで行くにはエンジンがいる。


 日焼け止めは持参しなかったが、愛用のサングラスだけは携行するつもりだった。

 前夜のうちに、旅館の無愛想なフロントスタッフに支払いと挨拶を済ませ、まだ暗いうちに目を覚ますと、ゆっくり海岸まで歩いた。

 ボートの浸水とエンジンの作動だけは、漁師から紹介を受けた近所の業者に確認してもらった。

 漁師「こんで大丈夫だっぺ〜!おんめどこさいぐだ〜? 鮫に食われんようこっただ心配だべなあ(笑)」


 昨夜の漁師の明るい声援を思い出すと胸に沁みた。

 海岸に着くと早速、係留柱に括りつけられたロープを外し、エンジンをかけた。


 外はまだ暗くて寒い。

 何羽かの鳥が、エンジン音に驚いて飛び立ったが、すぐに舞い戻り、元いた場所で何かを啄(ついば)んでいる。


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 コタロウの年収は100万円程度だった。

養育費を年間に100万円ほど支払っていたから、実質は手元に残るお金がなかったが、こっそりやっている小遣い稼ぎがあった。

 その、わずかな小遣いで、何とか住居の家賃、税金、光熱費などを支払うと、手元に残った金で食材を買うのは無理だった。

 何かの集金が来るのにビクビクして、いつも隠れるように生きていた。

 役所に窮状を訴えに行ったこともあったが、

「もっと大変な人がたくさんいますから・・・」

とため息混じりに言われ、冷めた目で一蹴されれば、

 (そうだな・・・。100万円もあるんだから、甘えたこと言ったらあかんね・・・)

 そう納得してやり過ごした。

 幼少期から、教師や両親、兄や近隣の保護者から体罰を受け、辛辣な言葉を浴びせ続けられた。

 いつも “自分が間違っているに違いない” と信じて疑わなかったから、

 その裏返しに、虚勢を張っては威張り散らした。


 虚栄心の延長線上にある筋トレが好きで、食べなきゃ筋肉がつかないことはわかっていたが、そんな食生活では、やってもやっても故障続きだった。

 幸い、多くの人から、栄養剤などを恵んでもらい、それを節約しながら摂取して健康を維持していたが、いつも疲れて眠そうだった。

 (何とか子供たちに迷惑をかけずに死んでゆこう・・・)

そんな思いが焦りとなって、今回の自害に至ったワケだが、

実際のところは、死ぬ寸前まで、「迷惑をかけない」と言う建前の、

“承認欲求”、“自己肯定感”への寂しいこだわりがあった。

 コタロウはこの計画を3年がかりでおこなった。

「自殺でも保険金がおりますか?」と確認した上で、安っぽい生命保険に入り、

 あらゆる所有物を処分し、最後に携帯電話やアパートの契約も解除した。

 きっと、死んでからでさえ、

「あの役立たずの親父、最後まで迷惑かけて死んでいきやがって!」

と、否定されることに怯えていたのだ。

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(さあ、これで俺は自由だ。呪縛から自由になれる・・・)

 両手を離すと、二つで60キロのダンベルが、豪快にコタロウの身体を下へ下へと引っ張ってゆく。

(ああ・・・。いつかダイビングやってみたかったんだ・・・)

 最初の数分間、本能的に呼吸をしようとすると、苦い海水を飲み込んだ。

 (苦い!(にがい!)苦しい! 辛い!(からい)、辛い!(つらい)、塩辛い! 辛苦了!(Xīnkǔle オツカレ!))

これが、コタロウの最後の記憶だった。

 さぞ、塩辛い人生を歩んで来たであろうコタロウは自由になった。


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 数ヶ月後に沖で見つかったボートには、奇麗に畳んであった形から崩れかけた様子の衣服、サングラスが一つ。たった3行の遺書、そしてどす黒く変色した、わずかな血痕だけが残っていた。

ボートは漁師に返還され、漁師は、コタロウの家族あてに、5万円を香典として送った。

 コタロウの死後に、何かの契約解除や葬儀、物品の処分などで手間取る人は誰もいなかった。

 世にも珍しい直筆の死亡届は、自害ののち、期日指定で市役所に届いたが、死体が見つからず失踪宣告が必要であったので、その点のみが残された者たちの手間ではあった。

しかし、無事に裁判所で特別失踪が認められ、一年ばかりで死亡保険金が支払われるに至った。

 初めの3日間ほどは『小太郎不安苦LOVE』の会員たちが、1人は菓子を片手にボリボリ食べながら、1人はテレビでお笑いを観ながら、1人は自慰行為に耽りながら涙に暮れたが、すぐに忘れ去られた。

 秋田県に住む、仏師で、仏壇会社を経営をする、弟のサンタロウが、手彫りで小さな木彫りのコタロウを彫って、右胸辺りに髑髏💀と蝮(マムシ)を描き込んだ。

 (アニキ、やすらかに眠れ。もう誰もアニキを傷つけないし、アニキが傷つけることもない。完全犯罪ならぬ完全自殺だったなあ(笑)アニキらしい・・・)


 太郎はエホバの神に心の中で祈った。

 花ちゃんは四人目の子供の祝儀をもらい損ねた。

涼夏は、「ううう・・・だからマッサージに来いってしつこく言ってたのか・・・」と独りごちた。

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♬ ぼ〜くは、こ〜た〜ろ〜う〜、
あ〜たまは な〜な〜さ〜い〜
いつまでたあ〜っても おとな〜に〜は なれないよ〜♪

タイ国に行くことが念願であったコタロウ。タイ語で「タイ」は自由と言う意味だ。

深海にある自由の世界へ、お気に入りのダンベルと共に・・・

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それから3年後・・・

《三太郎》「いやあ〜、まさか兄貴(小太郎)、あの作文を忠実に実行に移すとはなあ・・・。3年前は、またバカなこと書いてるよって笑ってたのに!」

《花》「うん・・・。嗚呼、お兄ちゃん・・・」


《太郎》「こんなことなら1000万円くらいあげたらよかったなあ・・・」

《三太郎》「え!? お兄(太郎)、京子さん(3人目の最後の妻)に聞いてないの? 兄貴、預金口座や証券口座に13億も残してたんだぜ?」

《太郎/花》「ええ!?」

《三太郎》「兄貴らしいよ・・・。13億の金よりも愛が欲しかったんか?」

「あっ、花、これ兄貴から。期日指定で京子さんのウチに今日届いたらしいよ。4人目の子のご祝儀」

《花》「えええ!? まだ産まれてないし・・・。予定日はお兄ちゃんが失踪した日よ・・・」

《三太郎》「中身いくら? 1億?」

《花》「やあねえ。えっと・・・。10万円よ。お兄ちゃんありがとう。あっ手紙が奥に・・・」「『花ちゃん、お腹の子も元気かな? もう産まれる頃だね。その子は俺の生まれ変わり・・・』」

《太郎/三太郎》「ええ!?」

《花》「『ではない・・・』」

《太郎/三太郎/花》「かっくぅ〜!!」

エンディング曲 【ここでタップして切り替えてください】
https://open.spotify.com/track/6wc8Sge5ZaBGdBDcFAdjOB?si=ugjEuggCTc2zCYtEke66qg
Naked City (John Zorn) - Bonehead

小太郎の頭の中の混沌曲の次に、好きなタイミングで以下へ
 https://open.spotify.com/track/7o2CTH4ctstm8TNelqjb51?si=nMPPn8QQQhqNF7Y8Ny9zeA
Guns N' Roses - Sweet Child O' Mine(私のかわいい子供)

Sweet Child O' Mine

She's got a smile that it seems to me
Reminds me of childhood memories
Where everything was as fresh as the bright blue sky

彼女の微笑みは子供の頃の記憶と重なるよう
真っ青な空のようにすべてが新鮮だったあの頃の記憶

Now and then when I see her face
She takes me away to that special place
And if I stared too long
I'd probably break down and cry

時折彼女の顔を見ると
僕をあの特別な場所に連れていってくれる
だけど見つめすぎると
たぶん僕は泣き崩れてしまうだろう

Oh, sweet child o' mine
Oh, sweet love of mine

僕の子供の頃を映し出す人
僕の大切な愛しい人

She's got eyes of the bluest skies
As if they thought of rain
I hate to look into those eyes
And see an ounce of pain

彼女の瞳はこれ以上にない空の青さを感じさせる
まるで雨を思いめぐらしているかのよう
僕はそんな彼女の瞳をのぞきこんで
ほんの少しの苦しみでも垣間見たくはないと思う

Her hair reminds me of a warm safe place
Where as a child I'd hide
And pray for the thunder and the rain
To quietly pass me by

温かく安全な場所を思わせる彼女の髪
それは子供の頃に隠れていた場所
そこで雷と雨が静かに通り過ぎることを僕は願った

Oh, sweet child o' mine
Oh, sweet love of mine

僕の子供の頃を映し出す人
僕の大切な愛しい人

Where do we go?
Where do we go now?
Where do we go?

僕たちはどこへ行こう
今からどこへ。。。
どこへ行くのだろうか

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

後味が悪い方は「お心治し」にご活用ください。

https://open.spotify.com/track/1bigLNQU7PHLYtTTCbpb7c?si=u86-8U07TrOyRnE-idiHiQ
グッバイ ララバイ(子守唄よさようなら)

ご覧いただきありがとうございました😭

皆さんお幸せに。

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