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【詩】影絵

窓辺に立つ
影が揺れる
あの日の君を
思い出す

指輪のない
左手が
ポケットに
潜り込む

春の風に
桜が舞う
二人で見た
あの景色

約束の言葉は
風に乗って
どこかへ

結ばれなかった
糸の行方を
追いかける日々

写真立ての中で
笑う君は
まだ若かった

しわの増えた
鏡の中の私は
君を探している

電話の向こうで
君の声が
途切れそうに

「やっぱり」と
言いかけて
飲み込んだ言葉

別れた日から
時計の針は
止まったまま

カレンダーだけが
季節を
教えてくれる

花屋の前で
立ち止まる
君の好きな花を
見つけても

買わずに
そのまま
通り過ぎる

駅のホームで
すれ違う
カップルたち

手を繋ぐ姿に
目を逸らす

独りの食卓
テレビの音だけが
響く部屋

携帯の中の
君の番号
消せずにいる

忘れたはずの
君の誕生日
ケーキを買う

ろうそくの火を
吹き消すのは
いつも私

友人たちの
結婚式で
祝福の言葉を
口にする度

胸の奥で
何かが
軋む音

「幸せ?」と
尋ねられて
微笑むだけ

答えられない
質問の重さ

夢の中で
君と歩く
目覚めると
涙が頬を

留守番メッセージに
残された
君の声を
何度も聞く

消えかかった
言葉の端々に
すがりつく

クローゼットの奥
しまい込んだ
君からのプレゼント

開けられない
箱の中の
思い出たち

雨の日は
傘を共有した
記憶が甦る

濡れた肩を
寄せ合って
歩いた道

今は独り
雨に打たれながら
歩く

歳を重ねる度に
増える白髪を
染める指に力が

入らなくなる日が
来るのだろうか

老いていく体に
君がいない未来を
見る

それでも
明日が来ることを
知っている

新しい朝は
いつも
やってくる

窓を開けると
風が入り
カーテンが揺れる

君のいない
部屋に
光が差し込む

「さようなら」と
言えなかった
あの日から

幾つもの季節が
通り過ぎた

それでも
君への想いは
色褪せない

時々
君の名前を
呟いてみる

空気の中に
溶けていく
言葉たち

いつかまた
君に会えたら

そう思う
瞬間がある

でも
現実は
違う道を歩む

それぞれの
人生を
歩んでいく

交わることのない
平行線を
描きながら

それでも
時々
君のことを

考えてしまう
そんな自分が
いる

年を重ねても
変わらない
この気持ち

永遠の
未完成な
ラブストーリー

それが
私たちの
物語

終わりのない
続きを
綴っている

そして
これからも
綴り続ける

君のいない
私の人生を

それでも
前を向いて
歩いていく

新しい朝に
希望を見出す

そんな
私でいられる
ように

君への想いを
胸に秘めたまま

人生という名の
詩を
紡いでいく

(画像:Adobe Firefly)

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