【超短編】光と影の狭間にて
光と影が交差する狭い路地裏、コンクリートの壁には剥がれかけたポスターが貼られ、都市のざわめきが遠くから響いてくる。
足元には水たまりがあり、そこに映る街灯の光が揺れるたびに、空気が少しずつ冷たくなるのを感じる。
二人の人影が、静かにその場に佇んでいた。
「この世界は、ただの夢の続きなのかもしれないな。」
「夢？それとも悪夢か？」
「どちらでもない。ただ、夢という概念そのものが現実を浸食しているのかもしれない。
例えば、君が今見ている私が本当に存在しているのか、それとも君の頭の中にしか存在していないのか、考えたことはあるか？」
「君が消えたら、私の現実も消えるということか？」
「そうかもしれない。だが、現実とはそもそも何なのか？
形あるものがすべてではないとしたら、形のないものもまた現実なのではないか？」
「形のない現実…。それは、愛や信念のことを言っているのか？」
「愛も信念も、どこかで形を持ち始めた瞬間に、それは消えてしまうものだろう。
人はそれを捉えようとするが、捉えた途端にそれは形を変え、まるで砂のように指の間からすり抜けていく。」
「そうか、それはまるでこの街のようだ。
過去と未来が入り混じり、何が本当で何が嘘なのか、誰もわからない。
この路地も、昨日の路地と今日の路地は同じものだと思い込んでいるが、実際には違うのかもしれない。」
「その通り。
人は自分の思い込みに囚われている。それを現実だと信じ込んでいる限り、本当の現実は見えてこない。」
「じゃあ、本当の現実を知るためにはどうすればいい？」
「それを知るためには、まず現実という概念を捨てることだろう。
夢の中の自分を解放し、現実と夢の境界を曖昧にする。
そして、その曖昧さの中で、自分の存在を問い直すのだ。」
「それは難しいことだ。現実にしがみついている限り、私たちは夢の中に取り残される。」
「その通りだ。
だが、夢を見ること自体が間違いだとは限らない。
夢を見ている間にこそ、人は自分の本当の姿を見つけることができるのかもしれない。」
沈黙が訪れる。
都市の喧騒が徐々に遠ざかり、二人の間に漂う空気が重くなっていく。
影は次第に薄れ、光がそれを包み込むようにして消えていった。
（画像：ImageFX）
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