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食堂かたつむり

小説「食堂かたつむり」は、小川糸さんの小説です。主人公の倫子は、同棲していた恋人に裏切られ、声を失ってしまいます。故郷に戻った彼女は、一日一組の予約制の食堂を開きます。そこで彼女は、お客さんの願いや悩みに合わせて料理を作り、人々の心に触れていきます。しかし、倫子自身も母親との確執や初恋の相手との再会など、過去の傷に向き合わなければなりません。

倫子の料理は、ただ美味しいだけではなく、食べる人の感情や思い出に寄り添っています。料理のレシピや調理法も細かく説明されており、読んでいるだけで食欲がそそられます。また、倫子の周りには、個性的で魅力的な登場人物がたくさんいます。彼らとの交流や、食堂かたつむりで起こるさまざまな出来事が、物語に色彩と温かさを与えています。

私は、特に印象に残った場面があります。それは、倫子がルリコという母親のために、エルメスという豚を解体して料理する場面です。エルメスは、ルリコが結婚式の食材にしたいと言って購入した豚でしたが、倫子はその豚と仲良くなってしまいました。しかし、ルリコの最期の願いを叶えるために、倫子はエルメスを屠殺し、その血や肉を無駄にしないように料理しました。この場面は、倫子の愛情と苦悩が深く描かれており、読んでいて胸が痛くなりました。倫子は、エルメスの命とルリコの命を大切にし、その両方に感謝することで、自分の声を取り戻しました。

この小説は、食べ物や人間関係について考えさせられる作品です。倫子は、食堂かたつむりで料理を作りながら、自分の人生を見つめ直し、前に進んでいきます。私は、この小説を読んで、料理の力や人との繋がりの大切さを感じました。


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