【詩】稜線をいく
一瞬の逆光が山に沈む
稜線をひたすらに進む男
幾度そんな夢を見たのだろう
男の顔は逆光の影
見えない男のその顔に
何故、涙していると思うのか
耐え忍ぶものとは思われず
歓喜のものとも感じられず
ただ、沈みゆく光の美しさに
男は涙を流していた
もう一度
もう一度
その道を歩き
その景色を捉え
その空気を吸うために
男はそこにいるのだろう
男がもとめたその山も
きっと男の足音を待っていた
稜線をひたすらに進むのは
男とその山の約束だった
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