作者の出身地で日本一周の旅(九州編)


初めに

とうとうここまで来ました。最終回、九州編です。

福岡県:1ミリの後悔もない、はずがない/一木けい

タイトルがまずいいですよね。刺さります。そりゃ人生に後悔がないはずないです。内容もとても刺さるものでした。自分の学生時代のことを思い出してうわーー!となりました。この本が刺さる人は同じような体験をしたことがある人かもしれません。椎名林檎がおすすめしていると知り、なるほど、と納得した記憶があります。椎名林檎の曲が好きという人にもぜひ。

佐賀県:水を縫う/寺地はるな

主人公は高校生男子で手芸が好き、ということで、自分に似ているなと思い読みました。私自身、小さいころに祖母から刺繍を教わり、後々それが趣味になった人なので、自分の周りに手芸が好きな人がおらずに話が合わなかった覚えがあります。かわいいものが嫌なお姉ちゃんにも親近感がわきました。
寺地はるなの作品は穏やかな時間を提供してくれるものが多い気がします。落ち着きたいときや、激しいどんでん返しに疲れてしまったときにおすすめです。

長崎県:最後の息子/吉田修一

吉田修一で初めて読んだのが「最後の息子」でした。多作な人ですが、印象に残っているので選びました。
内容から人におすすめするのが難しい本かもしれませんが、当時BLという言葉が市民権を得ていなかった時代に読んで、こんな小説もあるんだなと学びました。人生の中で欲望を持て余す時期のことを考える小説です。
映画化された「悪人」や「怒り」もおすすめですが、短編を読みたいという方はぜひ。

熊本県:黄泉がえり/梶尾真治

タイトルは知っていましたが、どんな小説かは調べずに読みました。今の自分は熊本地震が起こったことを知っているので、まるで予言かのように感じました。もし死んだ人が自分のもとに還ってくるとしたら、と考えてみましたが、小説の中のようににこやかに自分のもとに来てくれる人はいないように思いました。もし同じシチュエーションになったら、自分のもとに還ってきたい、と思わせるような生き方をしたいと感じました。

大分県:九年前の祈り/小野正嗣

芥川賞受賞作です。読んでいて、深いところから語りかけてくるような文章だと思いました。大分県には行ったことがないのですが、その土地の空気を吸っている感覚になる本でした。外国人との間にできた子供を連れて田舎に帰り、その子供は思い通りになってくれないという辛さをひしひしと感じました。じっくりと本を読みたいときにおすすめです。

宮崎県:殺人鬼フジコの衝動/真梨幸子

読み始めたらぐっと引き付けられて最後まで一気読みしてしまった本です。虐待され、親がいなくなり、周りに合わせて生きるようになった藤子がタイトルの通り殺人を繰り返していくのですが、一つ一つの殺人が怖いのではなく、全体を通して、思い通りにならない人生をどう切り抜けるか?が問われている気がします。

鹿児島県:海うそ/梨木香歩

梨木香歩は「西の魔女が死んだ」の印象が強いですが、数年に1冊は自然と手に取り読み進めている作家です。植物にまつわる作品が多い気がしますが、これも離島での自然と生活を解き明かす小説です。現代化されコンクリートで固められた場所で読むと、もっと豊かな土地に行きたいと感じる小説です。

沖縄県:リアルフェイス/知念実希人

とても人気な作家だと知りつつも、手が出なかった作者の、初めて手に取った本です。(私はあまのじゃくなので人気なものは敬遠してしまいます。早く読めばよかった…)
医療もののミステリですが、疾走感もあり、最後には謎に対して納得感もある作品でした。ミステリを読んでいて、これはちょっともたつくな、とか、このオチは無理があるのでは、と感じることもあるのですが、この作者はそんな気持ちになることもなく鮮やかに書いていると感じます。

終わりに

作者の出身地で日本一周の旅もこれにて終了です。実はこの企画のために読んだ本も何冊かあります。他のテーマは読んだことのある本の中から選んでいるので簡単なのですが、今回は読んだこのない本を読むいい機会になりました。作者の名前は知っていてもなんとなく読んでいなかった本にもこうして出会えたので、この企画を勧めてくれた人たちに感謝です。またお題をください…。


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