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【詩】今日も私は登場人物【なもなも】


■本日の詩『今日も私は登場人物』


一日の始まりに震えが止まらなくなったら
こうやって自分に言い聞かせる

「これは誰かが書いた物語の一ページで
あなたはその登場人物に過ぎない
だから心配しなくても大丈夫
あなたが悩まなくても 結末はきっと決められてるはずだから」

見えない大きな手に導かれるように一日を始める

「何があろうと それもただのワンシーンに過ぎないから
だから心まで壊れる必要はないのよ
あなたはただの 登場人物なんだから
あなたが例えどんなに大きな失敗をしようと
ページは破れたりしないの」

息が止まりそうなほど生きるのが苦しくなったら
こうやって自分に言い聞かせる

「そんなに深刻に捉えないで
どうせこれもただのワンシーン
あなたのすぐそばにはカメラマンがいて
その後ろには監督がいるの 
もう少ししたら『カット』って声をかけてくれるはずよ
そうしたら笑って共演者にお礼を言ったらいいわ」

誰もが寄り添い合って歩いてる公園を
泣きながら一人駆け抜けなきゃならない時は
ありったけ劇的にすればいいわ
だってこれって見せ場でしょう?
アカデミーを狙うのよ

涙が止まらなくても笑うの
後で綺麗な音楽がつくはずだから

「そんなに怯えなくても大丈夫
ただページが一枚めくられただけよ
悲惨なシーンだったとしても
あなたは物語を動かすためだけに配置された単なる登場人物
だから深刻になる必要はないのよ
これを書いた人はきっと あなたを傷つけるためにこのシーンを考えたわけじゃないから」

震える手を隠して 顔をあげるわ
何があろうと それもただの演出に過ぎないのだから


(作 なもなも)



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