客じゃないのに「俺は客だぞ、神様だ」と言ってくる人

ある自転車屋に「工具貸して」と言いながら入店してくる人がいたので「工具の貸し出しはやってません」と言ったら「なんでや!オレ客やぞ?」などと言われたという記事を見た。

日本で暮らしていて、仕事をしているとこの手合いはよく会う。客じゃないのに、客の振りして、神のようにふるまう人だ。
私の経験だと、以下のようなものがある。

イベントスタッフをやっているときに、イベント会場以外への場所の道案内を頼まれた。

東京ドームシティのイベントホール開催のイベントのスタッフバイトをやっていたときのこと。入場列の整理・誘導の仕事だったが、おっさんがやってきて、後楽園ホールか、ウィンズ後楽園のどちらか忘れたが、そこまでの行き方を案内してほしいと言われた。私はけっこう親切なので、プライベートの時なら、案内してあげるが、なにしろリアルタイムで、誘導と待機列の整理・送り作業と説明などしている暇はない。だいたいの方向はわかるが、丁寧に説明できる土地勘もない。どうしたもんかと困っていると、AD(アシスタントディレクター)が飛んできて、あなたの仕事はここで開催されているイベントのスタッフであって、東京ドームシティのスタッフではない、道案内する必要はないとおっさんがいる前で私に言った。まったくもってそのとおりであり、私が言いたいことを代弁してくれた。まあ、このケースは、おっさんから見ると、イベントスタッフ、東京ドームシティのスタッフの違いは分からなかったかもしれない。と思ったが、この後ADに食ってかかっていたので、このおっさんにとって、やはり担当場所なんて関係ないようだ。

お店のバイトで開店準備中、野良猫を抱いて入ってきたおばさんが毛布を出せと言ってきた。

CDと本を売るお店でバイトをしていたときのこと。冬の朝、副店長と開店の準備をしていたときのことである。まだ開店前まで30分前という時に、おばさんが猫を抱えて入ってきた。開店はまだです、お待ちくださいと伝えたところ、そこの道で猫を拾った、毛布を貸せと、怒った口調で当然のような口長で言ってきた。ここは宿泊施設じゃないので、布団の類は当然ない。副店長は丁寧に毛布は当店にはありませんとおばさんに伝えた。が、おばさんは、この猫は足にケガがあって血も出ていて弱っている。温めて手当もしてあげたい。その言いぐさは何だ、とブツブツ言い始めた。このおばさんは、なぜか我々に対して怒っている。まるで、この店の敷地内で猫が倒れていて、それを見つけたのに、放置していたようないい草である。私は、朝出勤したら、敷地と歩道の境に、お店ののぼり(セール中などの類ののぼり)を立てる作業をする。そのとき、敷地内に猫は見なかったし、おばさん自身がそこの道で拾ったと言っている。そもそも、おばさんは徒歩でやってきた。おそらく散歩中のところ猫を見つけた。猫は脚をケガしているだけで、車に轢かれて一刻も争うという状況ではない。徒歩で帰れる距離の自分の家で手当をすればいい話だ。なのに、近くにたまたまあったこの店が手助けをするのが当然で、自分はそれを要求する立場にあるのが当然だという態度だ。おばさんは、お湯をだせ、タオルを出せとどんどんエスカレートし、しまいには車を出せ、病院まで連れていけと言い始めた。副店長は、ひたすら平身低頭でそれはできませんと繰り返した。2人がフル稼働で、開店の準備をしなくてはならず、1分1秒すら惜しい時間に、そんなことをしている時間はない。というか、自分でタクシーでも呼べばいい話ではないか。タクシー代を払いたくないのか。しばらく不毛なやりとりをして、さすがにおばさんは帰っていた。おばさんが居なくなったあと、副店長は、「なんやねん、あれ。手当は自分でやれよな」とぐったりした様子で言った。その後、私と副店長は、倍速で開店準備をするはめになった。

以上である。2つめのエピソードは、改めてよくよく思い出してこうして書いてみると、狂っているとしかいえない話である。バイトしていた時は、いろんなパターンで、こうした客ではないのに、神のように振るまう人に遭遇した。その経験から言うと、こうした人は、中年か老年が多い。これは、世代的なものか、加齢による脳の萎縮によるものか。その両方か。
ともかく、こういう、客ではないのに俺は客だ、神様だという輩の相手をしていると、
「本来のお客を接客をする時間がなくなる」
「仕事が中断される。それによって、お客に本来提供できるはずだったサービスが提供できなくなる」
「本来のお客を逃がしてしまい、利益が出せなくなる」
というデメリットがある。
そういうわけで、客ではないくせに、客のように振るまう人には、
「あんた誰ですか。あんたの相手をしていると、お客様のお相手をできなくなる。お客様へサービスを提供できなくなる。失った利益分、お金を払ってくれるんですか
と言うことが、日本社会のコンセンサスとして、もっと普及してほしい今日このごろである。


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