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グッバイデイ非売品・そびえる900Mの壁

雪がすごい。シンプルに、すごい。
すごかったし、寒くて、顔が濡れ、あられがふったら、顔がちくちくして、痛かった、あられが降ると、家族と、「美容針~」と最近いうようにしている。
靴が濡れ、わたしは、昨年買ったブランドストーンというオーストラリアのメーカーの憧れの靴を、冬の靴では一足しかもっていないので、履いたきりで、手入れの道具も張り切って、みてくれよい油・みてくれよい布や靴墨を、これまたクレジットカードを切って買っていたのだが、そうすると、去年(23年)の家計(もへっちゃらっけもない)(めちゃくちゃ)(自転車でも三輪車でもとにかくタイヤというタイヤをまわしている状態)(回転車にのせられた鼠のように過ごしていた)が大変危篤、になっていたため、もう、見切り発車はやめましょう、今は、生協の宅配で頼んだ、靴磨きクリーナーという実用的なもので時々潤いを与えているけど、そういや、前は毎日新聞とか丸めて入れて乾かしたり、栄養クリームを塗ったくっていたのに、もう1年踏みつけたら終わりかよ、靴だって足蹴にされたくない、誠実に接するために、今日は、日曜日だから、靴を磨こう。

というわけで、冬になってからまともに服飾品を買わず耐えに耐え、書籍なども図書館で調達し、家族の図書カードも使って、三人分で、一人十冊、二週間借りることができるため、家計の管理もできないタイプの人間だから、返却期限の管理もままならず、期限遅れてびくびくしながらカウンターで謝ることもある、けれど、本は素敵だ。魔法だ。
帰りの苦労も考えずに、わたしは賢くなりたくて、賢い人と思われたくて、莫迦にされたくないし、阿呆扱いされたくないので、なるべく本を読んでやる、それに小説家になりたいから、「よく読む人は、書く!」とのジンクスを妄信しているから、食料品や日用品の買い物もあるのに、込み合うバスの車内では、本を開くことすらはばかられるのに、やれ、ハードカバーを五冊に、気軽に文庫も読みたいし、食べ物系の軽いエッセイなども気楽でいいじゃない等、図書館では気が大きくなる。
無料だからだ。
それに、家族が最近読書への目覚め第二弾中――なので、好きそうなミステリー作品を選ぶのが楽しい。
無料だし。


家族の小さい方が、3dsというゲーム機の、チャット式掲示板に出入りしていたことが発覚した。

「変なやつじゃないんだよね?」「うん、もちろん」
のやりとりで、あとは勝手にやってください式を通していたのだが……

わたしは、安心安全、天上天下、唯我独尊、任天堂内のゲーム機器、青少年のための健全たる社交場のような場所をイメージしていた。囲われた牧場、ふれあい広場、うさちゃんに餌をあげられるし、かわいい羊さんもいらっしゃるような。
家族は、リアルで交流することが少ないため、そういった刺激こそ、必要なのではないだろうか、なんて考えていたのだど。

スマホや、PCからもその掲示板にアクセスできると知って、その時もふーん、っていう感じで思っていたけど、日がな前は見向きもしなかった機器をにぎりしめ、朝から晩まで手放さない。どこかおかしいな?と思ったのが先先先先週くらい、つまり曖昧。
前々前世くらい。

とそのかなり前に、家族が得意げに、自分のハンドルネームを教えてくれていた。
いかにも、その名前は家族らしいチョイスだった。(きれいで儚い感じの名前)、なぜかわたしも、「次にハンドルネーム変えるときは、『ババダリア』とか『クレイジーチェンソー』とか、パンチのあるのにしなよ」と話していたのだ。中二病じゃない?と片づけられた。
そうだよ、宿痾だから仕方がないのだ。


先先週の土曜、職場の同僚の送別会第二弾目があり、昼から同僚と茶店にしけこみ、夕方から職場の医師にお肉とかワインの店に連れて行ってもらった。

トリュフの乗ったローストビーフの類まれない芳香と食感や、ワインもフェラーリという名前の、美しい飲み物や、とにかく全部が美味。夜の早い時間に、酔いをぶらさげて帰宅。酔ってコンビニで、お土産を買う。1000円くらい。気が大きくなっている。

帰宅。

家族がまたチャットしながらにやにやしていた。

ただならぬものを感じ、わたしもそのサイトを検索する。

昔の『魔法のアイランド』をもっとシンプルにしたような雰囲気で、たくさんのルームがあるけれど、そこまで煩雑じゃなさそうだな、なんて見ていくうちに、
『管理人のチンコは900mです』とか、『わたしの性癖をさらす』とか、『わたしのエッチな画像みて』とか、まるで、2ちゃんねるのようではないだろうか?
わが子の行方を捜す。幸か不幸か、IDの登録等は不要ですぐにチャットルームを覗くことができた。数か所のルームをさがしあぐね、ハンドルネームに見覚えのあるものを見つけた。
そこには、わたしの知らないわが子が、わたしの知らない話し方で他人と会話を繰り広げている茫漠が広がっていた。

『ねらー』か……?

一番ショックだったのが、そのチャットルームに、無修正の男性器の写真が添付されていたことだ。
唖然茫然として、高級な肉や、前菜の余韻もすっかり冷めてしまった。

そのあと、夜半まで、めったにしない『指導』をして、めったに泣かない家族もひたすら反省して、そのゲーム機は納得済みで没収することになった。はたして、これがいいやり方なのかわからないけれど。

今回のこの件に関して、わたしが伝えたことは、
○間違ったやり方で性的なものにふれてほしくないという気持ち
○興味をもつのはあたりまえ、だけど年齢を考慮しなくてはならない。※例をあげてTSUTAYAとかゲオとかの成人コーナーの前には、カーテンがかかっているし、年齢も制限されている。分別がつかないうちに、その場所に出入りすることは、社会一般通念でも禁じられている。
なぜか?
性的なことを曲解してとらえてほしくないからだ。
本来『性』とは、生きてくうえで人間にとって丁重に扱うべき大切なもので、最初に穿った知識や、汚れっぽく感じてしまっては、性に関する自身の人生に影響があるし、そうなってはほしくない……
と、説明した。

現代の子供たちがこのような闇にどんどん(これは闇なのかどうかてさぐりだけど)気軽にはまっていくことの恐ろしさに関して、わたしはひたすら考えて、ひたすら眠れなかったような気がして、あの、てらてらと輝いた、肉色の性器の色が、いつまでも頭にこびりついて、はがれなかった。

なにかの本を読んで眠った。なんの本だったのか思い出せない。

そして、翌日。
日曜日は寝込んだ。
なにもできなかったし、動けなかったので、夜、吹雪の中、駅の近くの中華料理店で食事した。3人で4000円くらいかかった……

わたしは、繊細さんなのでしょうか……

そんなスタートを切った、先週の平日。

職場は波乱続き。
同僚の引継ぎに投入されたのが、既存の職員ということで、一波乱・二波乱で、戦国時代突入といった感じ。松明をもやせ。不条理を打破!!
てな戦闘モードで仕事しているから、眠気がなくて助かっている。
わたしは、10年いた部屋から執務場所が移動することになり、残務整理の追いつかない中、引っ越しなどの準備を進めている。

そして、雪。
まいにち、ふぶきふぶき~っていう歌ほどではないけれど。

近ごろ観光の方が、わたしの近所に現れるんだけど、なぜこんななにもないところに中華圏の方が?と思うような場所でお見掛けする。
スノーウェアをまとった子供が、雪山をずんずん進んでいく姿を、楽しそうな声の調子で両親が見守っている。


アップロードした画像は、近所だけど、一度も入ったことのない個人商店のレジの前。

昨日、家族との待ち合わせの途中に通りすがり、大きなキューピー人形が飾られていたため、思わず中に入ると、昭和の駄菓子屋がそっくりそのまま残されているような店構えで、自宅と商店がつながった居間の方から、80代くらいの女性がでてきた。訝しそうにわたしを観察する。
「わたし、キューピが好きで、写真撮っていいですか?」と尋ねると、「どうぞ」と快諾してくださる。

店中に、ぬいぐるみがぶら下げられていたり、近所の小学生がきっと校外学習の一環で書いただろう手紙が、壁に飾られていた。

山口百恵の当時のポスターや、カトチャン人形、ぬいぐるみもたぶん80年代の雰囲気のものがたくさんあって、低い位置には駄菓子がびっしり並べられていた。
 わたしは、すごいすごい、素敵なものばっかりですね!と感動しながら店主の女性と話しているうちに、その女性の警戒も溶けたのか、「ここは、子供たちがよくきてくれるから、子供たちに喜んでもらいたいから~」と、コンセプトが暖かくて、急に切なくなった。
できれば、ずうっと、こういう店がなくならないでほしい。
レジ横のオルゴールを回してくれた。
「これね、グッバイデイ……」
「知ってます!来生たかおの、大好きな歌です!!」
次々に、オルゴールを回してくれる。陶器の女の人がゆっくり回りながら、メロディを奏でる。

わたしは、グッバイデイの余韻に浸りながら、襲い掛かってくる郷愁のような気持に耐えきれず、コーラもちという駄菓子を2つください、と言って、会計してもらう。
110円。
ちょうどの支払いを終え、思い切って、
「奥さん。このオルゴール、売ってくれませんか?」
とやわらかく言った。

店主の女性は、きちんと化粧した凛々しい顔で言う。
「ここにきて、子供たちがオルゴール回すでしょ?そのために置いてあるから、これは売れないんです」

店を出て、家族との待ち合わせ場所まで急いで向かう。

姿が見当たらず、立ち尽くしていると、家族が駆け寄ってくる。
「スマホ充電きれちゃって。探してもいないから焦った」

商店の事を話し、塾でのテストの結果を話し、話に話しながら、野菜などを購入し、帰宅。

夜はビビンバを作って、わたしは糖質減らし中のため、ニシンのマリネと、卵うどんの麺抜きと、はっさく、せとか等の柑橘を。

いつの日も、日にとって、忘れがたくなくとも、忘れられたくないだろうけど、こんな日は、日常にしおりを挟みたいな、と思う日だった。

そして、今日は日曜日。
精一杯、生きていきたいと、またわたしの大げさは、悪い癖。

「900メートルもあったら、災害だからね」
と付け加えたことも忘れずに記す。


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