牟曼台

誰も居ない、何もない空間は落ち着く。
広くて、穏やかで、安らぎがある。
荒んだ僕の心を優しく包む様に、その空間は広がっていた。
宇宙に果てがあるのか無いのか、そんなことを考えてみる。
あっても到達できないのなら、果てが無いのと同じだろう。
膨張を続けているという話も聞いたことがある。
ならば本当に果てなどないのか。
だだっ広い天井を見上げながら、ふと虚しくなった。
自分の人生もこの空間と同じだ。
無闇矢鱈に広がった莫大な時間をどう過ごせば良いのか、そんな不毛な問いが心に浮かんだ。
しかし、こんなことを考える僕は随分と病んでいるようだ。
まあ孤独なのだから仕方がない。
さて、この閉鎖的な現実の外に出るにはどうしたらいいのか?
一体いつからこんな現実に閉じ込められていたのか?
気が付いたらそうなっていた。
ならば気が付いたら出られるのか?
しかし、大体の場合、期待は失望へと変わる。
(くそっ、考えても不快なだけだ)
僕はこの空間から出るために一歩を踏み出した。
出口を探してひたすら走った。
全力疾走をしたのは何時振りだろう?とにかく気持ちが良い。
学生の頃の体育の授業を思い出した。
数年前の出来事が夢の様に思える。
あの光景はもうここにはない。
本当に夢だったのではないだろうか?
現実と夢に違いはない。
どちらもここにないものだ。
この現実も夢なのだろう。
ならばはやく醒めて欲しい。
悪夢を振り切る様に走り続けた。
暗中模索とはこのことだ。
しかし、どこにも出口らしきものは見つからない。
とうとう諦めて座り込んだ。
もうどうでも良くなった。
その時だった、微かな光が眼に反射する。
巨大な扉がゆっくりと開いた。
眩しい光を手のひらで遮りながら、ゆっくりと立ち上がる。
得体の知れない高揚感が全身に漲る。
僕は笑顔で走り出した。

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