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フリーランスに仕事を発注することがあるなら、今年からは契約書を作らないと危険だよ、という話

現在、私は契約書を作成したり、チェックする仕事をしている。
だから契約書を結ぶことの大切さをよくわかっている。

だけど、以前にエンジニアとして活動していたころは、契約書を交わさずに仕事をうけることが多かった。

だって面倒だったから。

今思うと、これはもうムチャクチャ危ない。

今年中にフリーランス新法が施行されることもあわせて、これからは絶対契約書を交わした方がいいよ、という話をします。


契約書を交わさないことのリスク

契約書を交わさないことのリスクとして挙げられることはたくさんあるが、発注側が契約書を結んでないことのリスクには次のようなものがある。

仕事の内容と求める品質が曖昧になる

契約書がないと、仕事の具体的な内容、期限、品質基準などが明確に定義されていないため、期待される結果が得られないことがある。
私も「簡単な仕事だから後から説明すればいいか」と省略して、失敗したことがあった。
その仕事が簡単かどうかは、人によるのだ。

支払金額でもめる。使用条件でもめる

あとから、「最初の金額じゃできない」「そんな素材の使い方はさせない」といわれたこともある。
これは、契約してないのがよくなかった。

紛争時に証拠が無くなる

私は幸いなことに、大きなトラブルを抱えずここまでやってこれた。
15年間、まったくトラブルがなかったわけではないが、許してもらったというところが正直なところ。

自分事じゃないけど、契約書をチェックする仕事をしていると「紛争になりそう」「支払ってもらえない」「仕事をしてもらえない」という相談が来る。
尋ねてみると、契約書を作成していなかったという場合が多い。
この状態で弁護士につないでも「難しいですね」となる場合があった。

フリーランス新法は誰も無視できない

フリーランス新法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)が2024年11月までに施行される。

この新法は従業員のいないフリーランスのほか、代表取締役1名のみの法人に発注するときも適用される。

また、この新法は、フリーランスに仕事を発注する事業者だけでなく、フリーランス内で再委託をする場合にも支払い方法について一部適用される。

発注側からみたフリーランス新法のポイントは次のとおり。

書面等での契約内容を明示すること

次の内容を、書面で伝えること。メールでもOK。

・給付の内容
・報酬の額
・支払期日
・その他の事項(公正取引委員会規則が定める内容)

報酬の60日以内の支払い

・事業者はフリーランスが業務提供を完了した日から、60日以内に報酬を支払わなければいけない。

それ以外にも次のルールがある。

・再委託の場合は、元委託者からの報酬支払期日から30日以内と短くなる。
・支払期日を定めなかった場合 業務提供の完了日となる。
・業務提供の完了日から60日を超える支払期限を定めた場合は、業務提供の完了日から60日を経過する日となる。

今後トラブルが多くなるかな、と予想されるのは、まず、支払期日を定めなかった場合 業務提供の完了日となるという点。
支払日を決めていなかったとしたら「納品したらすぐに支払ってね」ということだ。

それから、支払日を決めていたとしても「月末締め・翌々月末払い」だと法律違反になるという点だ。ほとんどの場合、法定期限の60日を超えてしまうからだ。
納品から60日を超えて支払を延期することはできなくなる。
翌々月末払いにしている企業はたくさんあるので要注意。

禁止事項

フリーランス保護新法では、以下の行為が禁止される。

・フリーランスの責めに帰すべき事由がないのに納品を拒否すること
・フリーランスの責めに帰すべき事由がないのに報酬を減額すること
・フリーランスの責めに帰すべき事由がないのに返品すること
・通常の相場に比べ著しく低い報酬の額を不当に定めること
・正当な理由なく物を強制的に購入させたり、サービスの利用を強制すること

また、以下の行為によってフリーランスの利益を不当に害してはなりません。

・自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させること
・フリーランスの責めに帰すべき事由なく内容を変更させ、又はやり直させること

やり直しを繰り返し依頼することは、今後、問題になる可能性が高い。

募集情報の的確な表示

求人サイトやクラウドソーシングなど不特定多数が閲覧できる媒体でフリーランス人材を募集する場合、募集情報を正確に表示することが求められる。

たとえば「報酬目安:2,500 ~ 3,000円/時」として、実際にその金額が稼げなかったとしたら、問題になるかもしれない。

その他

妊娠、出産若しくは育児又は介護に対する配慮、など

通報と罰金

今後、フリーランスから通報する仕組みができる。
公正取引委員会、中⼩企業庁のウェブサイトに通報窓口が設けられる見込みです。

フリーランス保護新法違反が発覚した場合、公正取引委員会、中⼩企業庁⻑官、厚⽣労働⼤⾂が違反事業者に対して助⾔、指導、報告を求めること、帳簿書類その他の物件の⽴⼊検査、勧告、公表、命令といった行政指導を行う。
命令違反や検査拒否などがあった場合、50万円以下の罰金に処される可能性があり、企業の場合は行為者と法人両方が処罰の対象となる。

契約書を交わす仕組みを今から作ろう

契約内容は、メールでもOKとなっています。
しかし、営業担当者に任せてしまった結果、契約に関することを何もメールしていなかったという事が起こり得ます。
これまで制作会社の相談に乗ってきた経験からすると、メールで伝達することを社内でルール化することは難しいのではないかと、私は予想します。

今年、フリーランスにとって、通報しやすい仕組みができることになります。

トラブルを避けるためには、契約内容は、契約書や電子契約書として文書化して、管理した方がいい。

その契約書を作成し、保管する習慣を今から根付かせておく必要があるというのが、私の意見です。

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