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短編小説 「トイレ男」

トイレが好きだ
この世で1番落ち着く空間
自宅のトイレはもちろん
外のトイレも好きだ
あえて個室に入る。

あの空間は神様からのプレゼントだ
トイレに行くために出掛けるようなものだ

ここの店はこの特徴。
あのトイレはあの特徴と大体頭に入っている。

やはり座っているとす〜と心が落ち着く。
別に用など足さなくてもいい
座ることに意義がある。

だけど、許せないこともある
楽しみにさぁ、入ろうとすると
前の人の用を足した匂いがする
もっと許せないのは、用が便器の中にひっついている。

それだけで不愉快になる
人間だ、用を足したのが許せないのではなく、汚れているのが許せないのだ。
せめて掃除用具を置いておいてくれれば、私は掃除をし、そして安心して座れる。
別に人のを掃除するのは苦ではない

それほどトイレをこよなく愛しているのだ。

トイレこそが生きる原動力
明日へのエネルギー

特に凝った演出などいらない
ただ個室と空間と座れれば良いのだ

故にたまに見かけるトイレ内でのコンビニの弁当と割りばしの残骸は私のトイレ愛への屈辱極まりない。

食べた後、用を足したのか
同時なのか分からないが
それとも食事スペースとして活用したのか
見るとプルプルと込み上げる思いを押さえている。

ここを一体どこだと思っているのだ
弁当など外の公園で食べればいいだろう。
何でわざわざトイレの中で食べるのだ。

しかし、世の中には「権利」と言うものがある。
私がトイレを愛するように、トイレで食事をするのを好む者も少なからずいるのだ。

悔しいがこれが世の常というもの
弁当箱を片付けないのも
「私はここで食事をしました」
というメッセージなのだろう

どうか、トイレが永遠に聖地でありますように。

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