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閑話休題「山里の春」

数年前から必死で否定しつつも、ついに昨年花粉症のデビューを認めざるを得ない状態になったのですが、50代後半になってから嫌なものを抱える事になりました。

つまり春は自分にとってあまり嬉しい季節では無くなってしまったのですが、それでも私はどの季節が一番好きかと聞かれたら迷わず春と答えます。

これは子供の頃に過ごした田舎での思い出が今でも心を温かくさせてくれるからです。

私の田舎は冬にはしっかりと雪の積もる場所でした。豪雪地帯ではありませんが、それでも年に数回は大雪警報が出たりする地域でした。

雪に閉ざされる地域にとって、春の雪解けはそれだけで心浮き立つ物がありますし、沢沿いの雪の下から小さなフキノトウが顔を覗かせると、子供心に春が来たんだなと本当にウキウキした気分になりました。

フキノトウが沢山出ると大人達はそれを醤油で炊いてご飯にのせて食べていましたが、私の祖父は少し変わっていて、生のフキノトウを食卓にそのまま持ち込んで熱い味噌汁の中に花の部分を手でちぎって入れていました。

私もそれを真似てやったものですが、正直そんなに美味しくは感じませんでした。ただ独特の香りが一番楽しめる食べ方だったかもしれません。

フキノトウが終わると今度は土筆があちこち顔を出し始めます。それを祖母と一緒に沢山摘んできて、指の先をアクで真っ黒にしながらハカマを掃除します。

それを私の家では胡麻和えやお浸しにする事が多かったです。子供の頃、野菜の胡麻和えは嫌いではないけど好きでもないといった料理でしたが、土筆の胡麻和えは結構好きで食べていました。

土筆が出る頃には沢には芹の新芽が芽吹きますので、冷たい沢に入っていって芹を摘んで帰ると、味噌汁やすまし汁の中に入れてくれました。

そうして本格的に温かくなってきたら日当たりの良い土手や道ばたにワラビが沢山出る様になります。

私はワラビが大好物でしたから、学校から帰るとすぐに飛び出してワラビを収穫に行きます。

子供が取る量なんてたかが知れているのですが、母は嫌な顔をせずにそれを料理して食べさせてくれました。ワラビが出る間は、それこそ毎日ワラビを取りに出かけるのが子供の頃の春の年中行事でした。

そうして徐々に春も終わりに近づく頃、4月の終わりから5月に入る頃になると、私の地域ではようやくタケノコが採れるようになります。

タケノコを掘る時だけは、大人達も一緒に竹藪に出かけていき、皆で沢山掘って帰って煮物にして食べるのが定番でした。

結局全部の記憶が食べる事と結びついているのですが、そんな豊かな春がまたやって来ます。今年もクシャミしながらスーパーの山菜コーナーを見ては遠い故郷に思いを馳せたいと思います。

◎介護食(ユニバーサルレシピ)専門サイト
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