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「祖母と柏餅と柏の葉」

私の祖母は明治の生まれでしたが、このあたりの時代に生まれ育った人は食べる物は何でも自前で作る事が出来ました。

味噌なんかは勿論手作りしてましたし、近頃はやりの甘酒なども私が子供の頃はかなり頻繁に作ってくれました。

甘酒を飲むときは必ずスプーンも一緒に持ってきてくれて、底に沈んだ麹をすくって食べながら飲むのが決まりでした。

甘酒の甘さは砂糖の甘さではなく、もっと地味な甘さなので子供の舌にはそんなに美味しくは感じませんでしたが、それでも嫌いではなかったのでいつも出された分は全部飲んでいました。

柏餅なんかも作ってくれた記憶があるのですが、柏餅と言えば柏の葉で包んだお菓子です。

柏の葉が手に入らないことには作れないわけですが、幸いなことに私が育った地域は山奥の村でしたので、ちょっと山に入れば柏の葉などはすぐに手に入れることが出来ました。

端午の節句に食べる柏餅は縁起物なわけですが、柏の葉は新芽が生えてくるまでは枯れていても枝から落ちること無く冬を越す事から、途切れること無く代を繋ぐ葉として子孫繁栄の意味があるそうです。

ただ、同じ様に落葉せずに新芽を待つ植物は他にもありそうなものですし、柏の葉が持つ独特の風味が餅を美味しくさせる事が、やはり柏の葉を使う一番の理由ではなかろうかと個人的には思ったりもします。

桜餅なんかも、桜の葉の香りがするから美味しいのだと思いますし笹の葉で包むチマキもそうですね。

ところで今からほんの60〜80年ほど前の日本の田舎は、基本的には自給自足でほとんど現金が必要のない生活をしていました。

これは父から聞いた話しですが、昔は囲炉裏の周りに天上から小さい川魚(主にフナ)をわら縄に結わえて吊り下げ干物にし、それで出汁を取っていたそうです。

今で言うイリコの川魚バージョンですが、海から遠い地域では鰹節や昆布などは貴重品だった様で、普段の出汁には近所の川で捕った小魚を使っていたわけです。

そうして年に一度、お正月のおせち料理を作る時だけは昆布をふんだんに使って昆布巻きを作ったりしたのが、とても贅沢だったのだろうと思います。

今年ももうすぐ端午の節句がやって来ます。

今年はそんな祖母の事を偲びながら、柏餅を食べてみようと思います。

◎介護食(ユニバーサルレシピ)専門サイト
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