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小説・永遠の0

新党結成で話題沸騰中の百田先生。
日本保守党、どうなりますかね?
そんなタイミングで古本屋で見つけた「永遠の0」。話題になっていたのは知っていたけど百田先生の本は、今まで読んだことがありませんでした。
久々に休日の時間を読書に使いました。文庫本ですが中々の分厚さ。
でも面白すぎて2日で読破してしまいました。
「面白すぎて」という言葉でも間違いではないのですが、少し違和感があります。
唇震わせて泣いたし、色々考えさせられたし、勉強になった事も多かったし、、、。
「読んで良かった」
というのが一番率直な感想です。
すべての日本人に読んで欲しいと思える作品でした。


司法試験に落ち続け、目標を見失ってしまった健太郎。バイト生活をしている最中、フリーライターの姉から報酬付きの依頼を受ける。

「自分たちの祖父の情報を集めて欲しい。」
今の祖父と母に血縁がないことを知ったのは祖母が死んでからだった。本当の祖父は特攻で亡くなったらしい。戦時中に母が生まれ、戦後祖母が再婚した相手が今の祖父。血縁はなくとも健太郎にとって祖父といえばこの人しかおらず、尊敬もしていた。だから血縁上の祖父が戦争で亡くなっていた事を知っても、なんの興味も湧かない赤の他人だった。
気が乗らない話ではあるが、報酬を受け取った手前、調査を始めることに。

戦友会の名簿が公表されており、そこに問い合わせて「宮部久蔵」という人について知っている人がいれば、会いに行って話を聞かせてもらう約束を取り付ける。実際に会いに行くのは姉だというので始めたことだったが、成り行きで健太郎が中心になって動くことになる。

宮部久蔵は臆病者だったらしい。
ゼロ戦乗りでかなりの腕だったようだ。
当時の体験談と共に次第に集まっていく情報で、輪郭が見えてくる宮部久蔵の人物像。そして当時の人達を取り巻く環境やその想い。
その中で、皆の語る人物像からはかけ離れた宮部久蔵の最期に違和感を覚え始める健太郎だった、、、。


そんな、主人公が老人達からインタビューで話を聞くという形で進んでいくストーリー。戦争に免疫のない私達にとって、適度な距離感で当時と向き合えるこの構成が、この作品を非常に読みやすくしているのだと思います。
中国との戦争から始まり、真珠湾攻撃、ミッドウェー海戦、レイテ海戦、硫黄島、ジャングルでの餓死、カミカゼ、特攻。
様々な立場の人達から聞く、各地の話。破竹の勢いだった開戦直後の話から、劣勢の中奮闘した人達、敗戦間際の訓練兵まで、様々な視点から語られる戦争。

恥ずかしながら断片的に、朧気にしか知らなかった単語ばかりで、それがどういうものであったか、時系列で知ったのはこの本が初めてでした。
しかし今の日本で、私のような人間が大多数なのではないでしょうか?タブー化されている大東亜戦争。
積極的に情報を集めたことがない私の四十数年の人生で、当時の様子が耳に入ってくるのは断片的なモノばかりでした。
「軍国化した日本の過ち」という認識と、GHQに戦後洗脳されたのだという話、憲法9条の問題。
自分の中でハッキリとした答えは無く、当時の人達が頑張っていた事は否定すべきではない位の認識しかありませんでした。

作中に出てくるジャーナリストが、特攻を行った当時の若者たちは軍に洗脳されていた狂信者だったのだ、という説を唱えていました。
狂信者とはいかないまでも、洗脳状態であったというような話はありふれています。
特攻。
今の私達から見れば異常でしかないこの作戦はどのように行われ、その当事者たちはどんな気持ちであったのか。

彼らに下ったこの任務を肯定する人間は、現代社会に生きる我々の中にはいないでしょう。
しかし任務を遂行した彼らの決死の覚悟について、それを肯定することが憚られる今の風潮に違和感を感じないでしょうか?

この作品では、実在しない人物がヒロイックに描かれています。そのことで批判を受けやすくなっている面は否めませんが、それによって大衆が面白く読める作品になっています。
それでいて当時の様子が正確に鮮明に描かれているという当事者達の感想も寄せられているそうです。
戦後、突然悪者にされてしまった戦争参加者達は、大半が当時の想いを口に出せないまま亡くなっていきました。
記録に残らなかった活躍。いくつものドラマがあったはずです。戦後の風潮のせいで語られずに消えてしまった出来事の中に、エピローグのようなモノがなかったと誰が言い切れるのか!?という筆者の熱い思いを感じます。
涙なくして読むことはできませんでした。

戦争に関わること全てを全否定する風潮は、今なお強くなる一方です。
そんな中で、このテーマを扱った本を500万部以上の大ヒットにさせ、映画化も成功したという、この功績は計り知れないものだと思います。


当時の事を反省することもなく、戦犯者をつるし上げ他人事にしてしまった日本国民。
当時の自分達から目をそらし続けたままで良いのでしょうか?

戦争を体験した世代がいなくなる前に、この作品を創ろうとした百田先生に、感服と、感謝の気持ちでいっぱいです。

禁書にでもして焼き払わない限り、この作品は百年後も残るでしょう。どんなに教科書を改竄したって、真実は一つです。いつか、当時の過ちと謂れなき批判とを判別して、国の為を想って亡くなっていった方々に皆が素直に尊敬と感謝の気持ちを持てる国にしていかなければならないと、強く思います。

海軍が官僚化してしまったのだろうという下りは、今の日本の状況と重なって、日本人特有の気質、欠点が隠れているように感じます。
作中ではマスコミの罪悪にも言及しています。
それらについて語るには、私自身がもっと当時の事を知る必要があると感じました。

最後のエピローグて感じた興奮と感動は、言葉にできません。家族がいる居間から寝室に移動して、嗚咽を漏らして泣きながら読みました。
非現実的だという批判もあるでしょう。
しかし、これは、どんなに軍の上層部におかしな点があったとしても、戦争すること自体が間違っていたのだとしても、戦争に参加した我々の先祖たちは、悪者ではなかった。愚者ではなかった。国を守りたい一心で、強大な敵に立ち向かい、獅子奮迅の働きをし、驚愕の実績を残したという動かぬ事実があるのです。
その象徴として創られたエピソードなのです。
そこに美しさを感じる私の心が歪んでいるとはとても思えません。

戦争はするべきではないという話と、
起こってしまった戦争にどう向き合うべきかは全く別の話です。
戦争を止める役割は兵士ではなく世論にあるのです。残念な事実ですが、兵士の仕事は敵国の兵士を殺すことなのです。

目をそらせてはいけないのです。


映画の感想の中に、これは反戦を謳っているのだろうか?という戸惑いのコメントがありました。

この作品は、当事の軍部は否定しても、日本の為に戦った人達を否定はしません。
彼らの働きへの尊敬と感謝を感じつつ、
散っていった命の重さを受け止めて、反戦を決意する作品です。

長くなってしまいましたが、
読んで、そんな事を思いました。

ぜひ皆さん読んでみてください。
私は映画も観てみます。


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