映画 もののけ姫

ナウシカについて書いたので、その勢いで書こうかと。
もののけ姫を初めて観たのは高校生の頃でした。映画館で観終わって思ったのは「ナウシカのリメイク?」でした。

怒った王蟲が一匹出てきて、
クシャナ殿下が森を焼こうとして、
第三勢力がちょっかいかけてきて、
王蟲が怒って大群でやってきて、
巨神兵が暴れて、
クシャナ殿下の作戦が失敗して終わり。

なぞったような展開。
なんじゃコリャと。がっかりしたもんでした。

でも、今では大好きな作品です。
何がキッカケというわけでもなくて、数年経って観た2回目が面白くて、その後何回も観返しました。

 

注意!ネタバレしてます!




自然と共生していくべきだというテーマはナウシカと変わりません。
ただ、皆さんが感じている通り大きな違いが3つあります。

その1。自然が弱い。

イノシシにしろ、シシ神様にしろ、人間に負けちゃうんですよね。神様なのに。意外ですよね。
ここは大きな違い。
ナウシカでは自然は絶対的なものとして描かれていました。どうせ敵わないんだから共存を目指していくしかないじゃんっていう。
でもそれは空想の世界の話で、実際には、大昔から自然と共存してきた人間が、鉄を精製し、火薬を手に入れ、自然を恐れず、神をも殺せるようになってしまった。
地球上の生物で人間だけが、ある一線を超え、後戻りできなくなってしまった現実。
直視しがたい事実ではありますが、その上に成り立つ文明に暮らす私達は、この映画の結末の先を考えなければないけないのでしょう。

その2。サンもアシタカも万能ではない。

ナウシカは良くも悪くも超人的な活躍をします。
もののけ姫では、アシタカが人間の限界を超えた能力を得てはいますが、怒れる王蟲の群れを止める程の力ではありません。
ナウシカのカリスマ性に魅せられた当時の少年少女の一人である私ですが、大人目線で言うと万能過ぎるキャラクターはいない方が好ましいです。でも子供にはナウシカの方がスッと入ってくるし痛快です。平たく言えば、
もののけ姫の方がより大人向けの作品なんだろうと思います。

その3。第三勢力の存在が格上げされた。

お上の指令を受けて暗躍するジコ坊。ホント憎たらしいですよね!映画ナウシカで言うとペジテのアスベルのお父さんって事になってしまうんですが、お父さんには悪いけど、存在感が比べ物にならない。(笑)
漫画のナウシカには、人間の欲望代表の神聖皇帝兄弟がいて、そこのポジションになるのかな。

人間は自然を滅ぼす力を得てしまった。
そして、とどまることを知らない欲望を抱えている。
欲望に任せて自然を破壊し尽くせば、待っているのは人間の滅びである。
既にもう後戻りはできない。
その上でこれからどうやって進むのか考えよう。
もののけ姫は、そんなテーマなんだと思います。

これって、漫画の方のナウシカのテーマと同じなんですよね。漫画のクライマックスでナウシカは言います。「善性しか持たない人間なんて人間じゃない。善性と悪性、どちらも抱えているのが人間なのだ」と。(うろ覚えですけど)

ジコ坊を悪者にして彼一人を断罪したところで、シシ神様は生き返らないし、森の生き物から見た人間の立ち位置は何一つ変わりません。人間は自然界のはみ出しものであり、厄介者です。
物語の結末でエボシ御前は過ちに気づきますが、人間の欲望はなくなりません。お上は次の要望を突きつけてくるでしょう。
エボシ御前は、そういった欲望に塗れた人間社会の中で、森との共存をどう成立させるのかを考えていかなければならないんです。

考え直したエボシ御前であれば、少なくとも太陽光パネルを設置する為に山の木を伐採しまくって禿げ山にするなんて事、絶対にしない。(笑)


私はこの作品の一番の見どころは、ジコ坊の存在だと思います。アレこそが人間なんです。ずる賢く自分の欲望を押し通す。森の生き物がどうなろうと知ったこっちゃない。
でも、当然、人類が滅んでも良いと思っているわけでもない。自分だって死にたくはない。
だから、話し合いが全くできない相手って訳でもないのです。その辺の描き方、絶妙ですよねぇ。
結局彼は生き延びて、改心するわけでもなく、また問題を引き起こすかもしれません。

もう一つ良かったのはエボシ御前。 
カッコよかったですよねぇ。
たたら場の統治、外敵への備え。政略、決断力。弱者への救済。どれをとっても理想の統治者。
森の怨嗟を一手に引き受け、なおかつ先頭に立つ姿!
最終的には過ちを犯し、右腕とたたら場を失うことになった彼女ですが、きっと再建できると信じられる人物でした。このカッコ良さは子供にはわかりにくいかもしれませんね。

たたら場の村人達も良かったです!
素朴で逞しくて。そして自分たちの村に、生き方に誇りを持っている。
ああいう人達ばかりなら世の中もっと上手くいくんでしょうけど、そうでないのか現実です。
ジコ坊と話し合うことはできると書きましたが、勘違いしてはいけません。善性も悪性もどちらもあるのが人間なのです。人間から悪性が消え去る事はないのです。

その事実から目を背けてしまうと、
「日本は自衛隊(米軍基地)なんていらない!話し合えば戦争なんて起こらない」なんて事を言い始めちゃうんです。
話が逸れました。(汗)

室町時代というと戦国時代に突入する時期です。
たたら場はその後どうなっちゃうんですかね?
あまり良い未来は想像できないですが、、、。
「生きてりゃあなんとかなる!」
刺さったなぁ〜。
今の日本も大変な状況ですけど、希望を捨てちゃいけませんね。

そんな訳で、映画ナウシカでは描ききれなかった内容を見事に2時間で描ききった「もののけ姫」。
素晴らしい作品です。

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