2023年5月 読んだ本

 今年は1年の間に80冊以上本を読もうと決めたものの3,4月は忙しくて全く読めなかったから5月は焦って本を読み始めた。(読みかけの物も含めて)そうしているうちに本当の意味で本を読む楽しさというものを思い出すことが出来て、義務感ではなく意志での読書が止まらなくなった。7年前に登録していて少しだけ感想を投稿していた『読書メーター』というアプリで自分の読んだ本の記録や他の人の感想を見たりしながら気が向けば感想を投稿している。しかし、文字制限もありなんとなく書きづらいこともあるからnoteにも記録を残すことにした。

『後宮の烏』白川紺子
 最初は八咫烏シリーズを連想させるタイトルに驚いたが読み始めるとすぐに面白くなった後宮の烏シリーズ最終巻。少し時間が空いたのもあり、忘れていることは多かったものの悪くない終わり方だった。終盤は、寿雪と高峻の場面が少なかったから二人の関係性の深さをもっと丁寧に見ていたかった気持ちはぬぐえなかったがそれぞれが良いところに着地したと思う。もう一度最初から読み直したいシリーズの一つになった。


p124 「闇夜にまたたく星々をまなうらに浮かべる。冷ややかでやさしい星のまたたきが、胸にしみこんでくる。それは冷たくて、ほのかに光る。消えそうでいて、たしかにともる、小さな明かりだった。」

後宮の鳥7

『イニシエーション・ラブ』乾くるみ
 家に積読してある本はシリーズものばかりなので、一冊完結で未読の本を読みたくて探したら見つかった本。A面とB面に分かれているが、A面を読むときになかなかスピードが加速しなかった。そういうわけもあり、A面を読み終わったときに一度満足してしまい、一か月以上空いてB面を読むことになった。これを踏まえると当たり前のことだが「必ず2回読みたくなる」と評された驚愕のミステリーをすぐに理解することができず、結局ネットの考察を頼った。そこには、確かに思わず唸ってしまうからくりがあったわけだが好みの問題なのかもう一度読みたいとは思わなかった。


p30 「懸念が暴走しかけるのを、目を閉じ、息を大きく吐くことで何とか鎮める。彼女に再会できたという、ただそれだけのことが、これほどまでに僕の胸を熱くするなんて。」

イニシエーション・ラブ

『巴里マカロンの謎』米澤穂信
 これは再読の本。何回読んでも面白い。読書メーターで今年の冬ごろにこのシリーズの新刊が出るということを初めて知ってとても楽しみになった。

『冷静と情熱のあいだ』江國香織
 図書館で借りた本。タイトルから心惹かれるものだったから手に取ってパラパラとめくると、物語が始まる前の最初のページに「阿形順正は、私のすべてだった。あの瞳も、あの声も、ふいに孤独の影がさすあの笑顔も。もしもどこかで順正が死んだら、私にはきっとそれがわかると思う。どんなに遠く離れていても。二度と会うことはなくても。」と書かれていて思わず満面の笑みになった。『盲目的な恋と友情』と同様に、簡単に抱くことのできない熱烈な感情を確信したからだ。たまたまクラシックピアノのアルバムを流しながらこの本を読んでいたが、ピアノの音色によく合う小説だった。想像していたよりも、順正に対する感情全てを感じることはできなかったからそれは残念だったが、イタリアの薄暗い雨と共に進むあおいの生活と変わりゆく心情はゆったりしたものではあったもののそれなりに面白かった。順正側の視点の方はまだ読めていないから早く読みたい。「自分の人生がその人のいる場所、いたいと思う場所にある」という作家さんのあとがきも良かった。

『追想五断章』米澤穂信
 感想を書けと言われたらかなり難しいかもしれないと思った。この物語のなかに出てくるリドルストーリーも全てよく作られていてこちらの思考が働かされるものだった。米澤穂信の本は、シリーズ物以外未読が多いからもう少し読んでみたい。

『ランゲルハンス島の午後』
 村上春樹のある雑誌に掲載されていたエッセイ集。とても有名な作家さんなのに今まで一度も読んだことがなく、友人に勧められたから読んでみた。普通に面白かったがエッセイだったこともありそれ以上の感想が出てこない。

好きな表現
 「まるで心がゆるんで溶けてしまいそうなくらい気持の良い春の午後で、あたりを見まわすと、何もかもが地表から二、三センチぽっかりと浮かびあがっているように見えた。」

ランゲルハンス島の午後

 もう一冊読んだ本があってそれの感想だけを残していたが、あまりにも長くなりそうだからこの辺にしておく。


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