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「殺し屋」という非現実的な世界を通して見る「私」|グラスホッパー

伊坂幸太郎(いさか こうたろう)
- 1971年千葉県生まれ。東北大学法学部を卒業後、2000年に『オーデュボンの祈り』で第5回新潮ミステリー倶楽部賞を受賞し、文学界にその名を轟かせる。『アヒルと鴨のコインロッカー』で第25回吉川英治文学新人賞、短編「死神の精度」で第57回日本推理作家協会賞を受賞。08年には『ゴールデンスランバー』で第21回山本周五郎賞、第5回本屋大賞を受賞するなど、その才能は多方面にわたり認められている。

彼の作品は、ジャンルを超えた独特の世界観と、鋭い社会洞察を織り交ぜた物語で読者を魅了し続けている。伊坂幸太郎は、現代日本文学を代表する作家の一人として、その地位を確固たるものにしている。


グラスホッパーのあらすじ

伊坂幸太郎の「グラスホッパー」は、復讐を求める一般人と、変わった個性を持つ3人の殺し屋たちが交錯するハードボイルド小説です。

  • 鈴木:一般人でありながら、妻を殺された復讐のために行動します。

  • 押し屋:車や列車の前に相手を押し出して事故を装い、殺す殺し屋。伝説的な存在です。

  • :自殺させる殺し屋。幻覚・幻聴のような不思議な能力を持ち、死人と対話します。

  • :倫理観に欠け、ナイフ使いの殺し屋です。

殺し屋がメインということで、かなり非現実的な作品に見えますが、鈴木という一般的な感覚の持ち主を通じて、読者にも身近に感じられるよう工夫されています。

登場人物の一人称視点が感情移入を促し、物語が後半に向かうにかけてどんどんボルテージが上がっていくため、かなり興奮できる一冊です!


心が”きゅっと”するほどにリアル。

第一印象として、情景描写が本当に上手だと感じました。

例えば、一番最初の自殺シーン。

男の首に、黄色いビニール製のロープが食い込む。下顎から、耳の後ろへとロープが締まる。鼻が、息を吸い込むために震えた。喘ぎ声が出る。

この三文だけでも、リアルで、胸が”きゅっと”してしまいます。。。

さらにこの後に続く文章は、ここで書くのがはばかれるほどに強烈な印象です。

人は信じられない光景に直面した時、理解速度が極端に低下すると思います。この本は、そんな理解速度の低下を巧みに利用し、情景描写をゆっくりと丁寧に表現しているのが特徴です。

上で書いた自殺シーンの一文。「鼻が・・・震えた。」

息を吸う。と表現するのではなく、鼻が震えた。と表現する。
これは、自分が本当に目の前で自殺を見ているような、視覚的な文章表現で、心を揺さぶるシーンを作り出しています。

天才か…って感じです、


「殺し屋」という非現実的な世界を通して見る「私」

特に印象的なのは、「鯨」というキャラクターです。

彼は「自殺をさせる」殺し屋という、一見矛盾しているような、よくわからない設定を持ちますが、彼によって自殺をする人々にはある共通点があります。

それは、鯨の光が見えない瞳を通じて暗闇に落ち、罪悪感に苛まれながら、自ら望んで自殺をするところです。

鯨は「人は誰でも、死にたがっている」と言います。

いろいろ考えさせられる一文。

私たちは誰しも、現実世界における孤独や絶望の瞬間、暗闇に落ち、自己嫌悪にさいなまれますが、鯨の目を見た人たちも同じ気持ちだったのでしょうか。


意外なラスト

この作品は、伊坂幸太郎の筆致が生み出すテンポの良さと、意外なラストが特徴です。復讐相手の正体や殺し屋たちの運命が絡み合い、予想外の結末に導かれます。

読者は、鈴木の復讐の旅と、殺し屋たちの個性豊かなキャラクターに引き込まれ、最後まで目が離せないこと間違いなしです。

総じて、「グラスホッパー」は、伊坂幸太郎のファンはもちろん、未読の方にもおすすめの作品!

リアルな感情描写と、非現実的な設定のバランスが絶妙に取れており、読後には多くの思索を促されます。また、ただのエンターテイメントに留まらず、人間の心理や社会に対して考えるきっかけを与えてくれるので、ぜひ一度読んでいただきたいです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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