ボディイメージを育てることは大切
子育てのこと、こどもの運動発達のこと
なんでも相談できる小児整形外科クリニックがお送りしています。
さて、みなさんはどう考えるでしょうか。
先日こういったことがありました。
マネができない小学生
外来の際にある小学生に対してこんなお願いをしてみました。
「先生のマネして、同じ様な恰好してみて」
そんなに難しいことないですね。
お願いしたポーズは肩の可動域を見るために、両腕を耳の後ろまで上げて頭の上で手を重ねて肘を伸ばすいわゆる『ニョッキ!』の格好でした。
その子は目の前で腕を上げながらクネクネしており、どうしても同じ格好がとれませんでした。手の方向、重ね方、指先の位置やその向き。いろいろなチェックが入ります。
これは以前から参加している運動器検診でも行っていることです。
実際に行った動きは直接小学校の生徒に対して行っていることと同じです。健診の際にもたしかにこちらの行動の模倣ができずに追加で指導したり、言葉を選んで伝えることが必要な子がいます。
保育園や幼稚園など集団生活の経験がないと、だれかの真似をするという機会が少ないのかもしれません。または見ているものを自分の頭の中で想像することができないのかもしれません。
さすがに高学年になるとそんなことは少なくなりますが、中には手を重ねるのを間違えたり肘が伸びなかったりします。(まぁ普通の外来での大人の場合もありますが・・・)
ここでふと思ったのが、「うちの子はどうなんだろう?」でした。
『子育て=目の前で行われる人生という壮大な研究』と捉えている中川先生はさっそく同じ質問をむすめ(2Y6M)に投げかけてみました。すると楽しそうに完ぺきにこなしたのです。(親バカではないですよ!)
できなくなっていることとその原因
もちろん、初対面の人のマネをするので、真剣に行わなかったことや、小さい子がふざけているだけの可能性もあります。運動(ダンスなどは特に)をしている子は簡単にできているかもしれません。
しかし、これは確実に現代の子どもたちに起こっていることであり、体力の低下、食べ物が変わったからや、生活習慣が変わったからだけでは考えられないことです。
次々に新しいコンテンツが更新され、それらはタブレットやスマホの画面を通してのみ伝わってくる。そこからは「同じようにしてみよう」や、「覚えるまで何度も見てマネしてみよう」といった感情が消えてしまうのかもしれません。
加えて、定型的な遊び方が繰り返され、いわゆる『冒険ごっこ』や『建物内の探検』、『秘密基地』など、大人では思いつかない様な子どもならではの遊び場が少なくなっています。
これらの遊びや行動は、いわゆるボディイメージを育てることとして注目されています。身体の大きさや今の自分の形、どう動いているかを想像し、次の動きにつなげる大切な能力です。
人によってはその能力がどうして身についていないのだろうと思わざるを得ない経験でした。これではどんな指導を行ったとしても実行できないので、能力は上がりません。
学年が上がると、そこは修正されているのかもしれませんが、運動の得手、不得手はこういったところから始まるというのが、発達に興味がある人たちの見解です。
ボディイメージの育て方
このボディイメージとは赤ちゃんのころから作られています。
赤ちゃんは産まれたとき、おそらく自分に手足が付いている感覚もありません。
バタバタと動いているウチに、何かに触れた感覚、動いている感じ、目に見えたり音が鳴ったり。動くことに気付くと、自分が動かすことで周りの人が反応してくれる。そうしているウチに、自分の手足の存在や動かし方に気付いていきます。
これが以前股関節脱臼の予防でも触れた身体の動かし方の発達に繋がるのです。
自分の偶然の動きが正しければそのまま正しい動きへとつながります。しかし、その動きが ”たまたま” 間違っていると、間違った動きをそのまま覚えてしまうかもしれません。
また、自分の動きに気付かないまま身体が大きくなると、その分動かしにくくなってしまい、さらに正しい動きを覚えるのが困難になります。
昔はおそらくどの家庭にもあった姿見。家の中にあるでしょうか。自分がどの様に動いているのか。自分のことを見たことない子は気付かないままなのかもしれません。
体の動きはその後何度も修正する機会があったはずですが、もしかしたら現代の生活の変化の中では、気付かないうちにその機会を奪っているかもしれません。
歩き出すと、身の回りの大きなもの、小さい場所と自分を見比べて、高さや距離を覚えます。このころよく頭をぶつけるのは自分の大きさを自覚していないからですね。
体を自由に動かして通り抜ける『トンネル遊び』はボディイメージをフル活用しています。そういえば、同じ様な日常の動きありますよね。
着替えです。
お子さんは自分で着替えできていますか?
全部を手伝っていませんか?
目で見えない体の動かし方を覚えるのに最適です。
自分で動かすこと。その結果がどうなるかが積み重なると、動きにも変化が起こってきます。
情報があふれる中、正しい知識は実際に触れられる距離の人に教わることであり、あらためて大切さを身にしみています。このことは今後の課題にしていきたいと思います。
中川将吾
小児整形外科専門ドクター
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