見出し画像

変化する結婚市場 若者たちは“結婚”に何を求めているのか?

みなさん、こんにちは。
多様な家族形態が当たり前に認められる社会の実現を目指す「Famiee」では、2021年2月25日より、同性のパートナー向け「パートナーシップ証明書」を発行していますが、これに続くフェーズ2として、異性同士を含めた「多様な家族関係・形態の証明書」をリリースしていく計画です。そこで去る2021年9月、私たちの活動に賛同いただいている皆様のお声を今後の活動に生かすべく、計3回にわたるディスカッションを開催しました。今回、ご紹介するPART3は、婚活支援サービスを展開されるIBJ代表取締役の石坂茂さんをゲストとしてお招きして同月27日に開催されたもの。石坂さんに近年の婚活マーケットについてお話しいただいた後、Famieeの学生サポーターズを中心とした20代の若者を交えてのディスカッションを開催しました。

※ Famieeとは
Famieeでは、2021年2月25日に家族関係証明書の第一弾、同性のパートナー向け「パートナーシップ証明書」の発行をスタートさせました。2021年12月現在、従業員向けの福利厚生や、一般顧客向けのサービスにこの証明書を導入している企業・団体や自治体などは、55社/団体にも上ります。
Famieeでは、同性パートナーを対象としたフェーズ1に引き続き、フェーズ2として、異性同士を含めた「多様な家族関係・形態の証明書」をリリースしていく計画です。

Famieeディスカッション「結婚について考えてみる」 
PART 3・・・開催日:2021年9月27日(月)

婚活支援サービスの現場から見た婚活のトレンド

PART3の前半では、全国の結婚相談所をネットワークして婚活支援サービスを展開されるIBJ 代表取締役の石坂茂さんに、この20年間の若者の結婚観の変化や、昨今の婚活事情などについてインタビューを行いました。

――まずは自己紹介をお願いします。
石坂:IBJは、婚活支援サービスを展開している会社です。マッチングアプリも運営していますが、中心となるのは結婚相談所の相談員を介した人的なサービスで、現在、全国2,800社(現在は3,000社)の結婚相談所をネットワークして、月に4万件以上のお見合いをコーディネイト、年間で1万組前後の結婚カップルを生み出しています。弊社では結婚カップルをマッチングするだけではなくプロポーズのサポートまで手掛けているのが特長で、世界的にもユニークなサービスを提供していると言えるでしょう。今日はこうした立ち位置の中から見えてきた、20代の若者の結婚観と、コロナ禍での彼らの婚活状況についてお話ししたいと思います。

画像3


――結婚に関する考え方はどのように変化していったのでしょう?
石坂:私が起業した約20年前には、今で言う婚活はこっそりやるもので、婚活サービスを利用したことは知られたくないという人が99%でした。最初は「婚活」という言葉さえもなかったのですが、2005年前後にこの言葉が誕生すると、婚活する若者が増加すると共に、これをオープンにするようにもなってきました。その一方で、「結婚しない」という選択肢が若者を中心に広く社会に認められるようになり、都市部を中心にメリットがあれば結婚する、なければしないという女性が増えてきました。つまり、若者を中心に結婚の捉え方が変わり、婚活サービスもそれまでの駆け込み寺的な存在ではなくなっていったのです。
――実際に結婚する人は減っているのでしょうか?
石坂:国立人口問題研究所の第15回出生動向基本調査(2015年)によると、いずれは結婚しようと考える未婚者の割合は、18~34歳の男性では85.7%、同女性では89.3%と高い水準にありますが、一方で「一生結婚するつもりはない」と答える未婚者は微増しており、男性では12.0%、女性では8.0%に達しているそうです。
――結婚したくない人が増えている理由はどこにあるのでしょう?
石坂:結婚すると自分の自由な時間がなくなったり、何らかの折り合いを付けなくてはならなかったりする。例えば、アーティストなど自分の才能を信じている人は、誰かに依存する必要がないので、結婚しないという選択はありだと思います。
――結婚相談所の会員になっても、なかなか結婚に踏み切れないという方もいらっしゃいますか?
石坂
:相手があることなのでミスマッチが生じるケースはありますね。特に交際の経験があまりなく、理想が高い方は、お相手に求める条件が増えがちになります。ですが、最終的に結婚できるかどうかは条件とはあまり関係がありません。実際問題、弊社が「婚活中にお相手に求めていた条件で結婚するにあたり譲歩した条件」を調べたところ、男性では年齢、女性では年収がトップ。また、「プロポーズした/受けた決め手」は、性・年代を問わず「ずっと一緒にいたいと思った」というあいまいな選択肢がトップで、条件とは異なるところで相手を決めるという結果になっています。
――コロナ禍のもとでの婚活状況についても、調査を行ったと伺いました。コロナ前と現在とで、何か特長的な変化は見受けられましたか?
石坂:新型コロナウィルスの影響で特に20代の婚活意欲が高まっており、当社のサービスに入会する20代も増加しています。これは健康や結婚への不安を感じるようになったため。そもそも20代の若者は他の年代に比べて外で人と知り合うケースが多いのですが、コロナ禍によりそうした機会が減少したことで振れ幅が大きかったのです。しかし弊社のアンケート調査でも「婚活意欲が高まった」と回答したのは全体の24%で、半分以上の人は変わらないのが実情です。

画像5

20代の若者たちが語る結婚のあるべき姿

PART3の後半では、Famiee学生サポーターズを中心とした20代の若者に、既存の婚姻制度についての意見や、理想的な結婚のカタチについて尋ねてみました。参加者は全部で5名。うち大学生が男性2人(A、B)、女性2人(C、D)の計4名で、残り1名(E)は唯一、社会人の女性です。

■いずれ結婚したい? したくない?
それぞれの結婚意向を尋ねてみると、Bさん、Cさん、Dさん、Eさんはいずれ結婚したい派で、うち1名は事実婚でも良いとのこと。Aさんは、パートナーは欲しいかもしれないけれど、今は結婚したいとは思っておらず、その時々の状況によって気分が変わるとのことでした。
次に結婚したいと答えた4人に結婚したい理由を尋ねると、Cさんは子供は欲しくないと思っているので、経済的な理由だと思うとのこと。Dさんは子供が欲しいのが一番だが、何かあった時に一緒に泣いたり笑ったりしてくれるパートナーが欲しいとのこと。Bさんは、自分の子供ができた時の気持ちを味わいたいとのこと。
一方、Eさんは、子供が欲しいとは思わないし、積極的に結婚したいとは思わないとのこと。両親が不仲で離婚しており、幼い時から「幸せな夫婦像」を見ずに育ってきたため、結婚へのあこがれが育つ土壌がなかったとその理由を分析します。しかし最近、大好きだった祖父が亡くなり、家族葬に参列したのをきっかけに、パートナーが欲しいと思うようになったとのこと。そもそもは他人同士だった夫婦やその子供たちが1人の死を中心に厳かな時間を共有する中、「この葬式に参列している人たちはそれぞれに家族の面倒くささを引き受けているのだ」と思ったら、そうした人間関係も悪くないと感じたのだそうです。
ちなみに、石坂さんによると、日本における結婚は子供と経済に重きを置いているとのこと。前者については、60%が婚外子と言われるフランスでは、結婚していなくても社会的に守ってもらえるという前提があるのに対して、日本においては苗字が異なることや、制度的に差別を受けると考える人がいることから、子供をもうけることが結婚の大きな意味と捉えられ、先進諸国の中でも婚外子率が低くとどまっているのだそうです。後者については、日本の婚姻制度は、夫婦の収入に開きがあればあるほど収入が少ない方のメリットが大きくなっているとのこと。

■みんなはどう思う? 結婚の機能
次に、結婚の機能を分解した上で、若者の結婚観を尋ねてみました。具体的には、結婚の機能を経済面(収入)、そして精神面(愛情)、精神面(安心・保護、精神的な拠り所)、肉体面(性的関係)、生殖(子供を産む)、扶養(育児、介護、乳幼児のケア)、教育(子供を育てる)、対外的ステータス(対家族、対社会)、文化・倫理規範継承(「家」の維持)、相続(財産、社会的地位)に分解。今では共働きが一般的だとか、性的関係は結婚しなくても結べるとか、精子&卵子バンクを利用することでパートナー間以外の子供が産めるといったことを例示した上で、それでも本当に結婚が必要なのかを問いかけてみたのです。

スクリーンショット 2021-12-22 0.22.46


Aさんは、その時々で必要な機能が選べれば生きやすいとした上で、子供を産むという意味では、結婚しなくても子供を産み育てられるような制度があれば良いけれど、仮に制度が変わっても、愛情や性的関係においてはパートナーへの独占欲があるのではないかと主張。これに対してCさんは、結婚すると一人では買えないものが買えたりするという意味で経済面のメリットがあることに加え、Aさんの独占欲に関する発言に触れ、法律で関係が保証されれば安心できる面もあるとして、選択肢があれば結婚したいと主張。加えて、結婚式に憧れがあったり、対外的ステータスも少しはあったりすると自らの気持ちを吐露してくれました。
続いてDさんは、子供を産むことについては、自分が産んだ子供だけでなくても良いと思うので、精神面が最も重要だと回答。一方でEさんは、自身の過去の同棲生活を振り返りながら、話し合いができることの重要性を強調。話し合うこと自体が精神面でプラスになるかもしれないし、そもそも話し合いができないと、経済面も整理できなければ、性的関係も家事の分担も決まらないので、これが一番ネックだと語っていました。

■みんなにとって理想的な結婚のカタチは?

次なるトピックは、理想的な結婚のカタチについて。既存の婚姻制度は、男性と女性とか、一対一とか、そのカタチが大まかに規定されています。またこれは法律ではありませんが、男性が生活費を稼ぎ、女性は家事育児一切を担うといった昔ながらの文化も今なお残っているかもしれません。そこで参加者たちに、現在の婚姻制度の変わってほしい部分を挙げてもらいました。
「家事は絶対、分担したい」という一言で口火を切ったのはEさん。基本的には、それぞれが得意分野を担えば良いものの、どちらかに過度に偏ることなく、適切に分担できるようにしたいとのこと。合わせて選択的夫婦別姓の重要性も強調されていました。一方でCさんは、自分がレスビアンであることを明かした上で、同性婚を受け入れてほしいと主張。また、相手には働いてもらっても良いものの、自分は家事が苦手なので、家事は相手に頼みたいとのこと。選択的夫婦別姓には賛成だそうです。
続いてAさんは、家事の分担には大賛成だと言います。父親が仕事ばかりで家事を分担しないことで夫婦喧嘩が絶えなかったり、幼いころは子育ても母親に任せきりだったりしたのを見て育ったこともあり、男性が家事や子育てに参加することは必要だと強調。また自分自身は、パートナーと一緒に暮らさなくても、一緒に旅行に行ったり、買い物に行ったり、遊びに行ったりする関係で良いが、子供が欲しくなったら一緒に暮らすかもしれないので、そうしたことも想定した柔軟な制度が望まれるとのことでした。
またEさんは、自分自身は子供が欲しくはないが、子育ては社会全体で考えていくべきであり、その中で男性も主体者としてきちんと育児参加することが必要だと主張。日本はまだ男性が育児参加しにくい社会ですが、この問題を掘り下げていくと、いわゆる「有害な男らしさ(Toxic Masculinity)」(支配・独立独行・競争などの伝統的な理想の男性像の行動への同調がもたらす弊害)に行きつくのではないかと語っていました。

画像3



■ディスカッションのまとめとして
最後に、参加者が新しい結婚のカタチとして工夫したい点を以下の3つに整理した上で、追加意見を求めてみました。

①二人で決められる新しい結婚のカタチ(同居の有無、家事の分担、育児の分担)
②法律を変えることで実現する新しい結婚のカタチ(同性婚)
③社会や会社の考え方を変えることにより実現する新しい結婚のカタチ(男性の育児参加を常識にする、子供を社会全体で育てる、子供を会社に連れて来られるようにする)

ここでEさんが、考え方とはすなわち社会のニーズなので、これが変わらないと法律は変わらないのではないかと指摘。またAさんからは、例えば勤め先の制度を利用して仕事と子育てをうまく両立しているシングルマザーもいるが、長期的に見たらやはり法律を変えることが望ましい。とは言え、すぐに暮らしに活用できるのは会社の制度なので、まずはこれが変わっていくことが求められるという意見が提示されました。
一方、Cさんは、1年前に選挙権を得て、政治を動かすことの難しさと、人の意見を変えることの難しさを感じたそうです。1点目は、多数派の意見が反映されるデモクラシーにおいて、選挙によって同性婚を実現すると言っても難しいということ。2点目は、相手が感情に走っていると、理論では納得してもらえないということ。このように社会の意識を変えるのは難しいし、ましてや国全体を変えるのは容易ではないという中、Famieeのような民間で使いたい人だけが使えるサービスがあるのは大変良いことだと私たちの活動に高い評価をいただきました。


PART3では、今の若者たちの結婚観にフォーカスしましたが、結婚のあり方、そして家族のあり方は、社会の基盤とも言える重要な要素です。
このディスカッションを通して寄せられた若者たちの声を今後のFamieeの活動に生かすことにより、日本の未来を担う若者たちに、より暮らしやすい社会を残していけたらと思っています。


今回、「結婚について考えてみる」をテーマに3回に渡り、ディスカッションを行いましたが、今後もこのような機会をもうけ、多くの人と議論をしていきたいと考えています。
多様な家族が当たり前に認められる社会の実現のために、Famieeはこれからも活動を続けてまいります。


本ディスカッションにご参加いただき、貴重なご意見をいただいた方々には、心から御礼を申し上げます。

※本記事についてのご意見ご感想は、info@famiee.orgまでお願いいたします。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?