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『テラスハウス』で恋バナ経験値取り戻し中

子どものころのわたしは、席替えするたびにとなりの男の子のことが気になってしまうような惚れっぽい性格で、中学を卒業する頃までは常に誰かに恋をしているような状態だった。

ただ、その秘密を誰かと共有するのはとても稀なことで、違う人に気が移って随分経ってから「実はあのとき〇〇くんが好きだった」と友人に話すのがやっとだった。

みんなと一緒になって「〇〇くんが気になるけど、彼女いるのかな?」「わたしのことをどう思ってるのかな?」なんて話してみたいという憧れはあったけど、それよりも、もし秘密がみんなに知られてしまったらどうしよう、という不安のほうが大きかったのだ。引っ込み思案で、自分に自信がなかったので、好きな人に「好き」と知られることが恥ずかしくて怖くてしょうがなかった。

大人になるにつれ、人の話を聞かせてもらってばかりで、自分からは何も話ができないことが申し訳なくなってきて、恋バナのような空気を察知すると、存在感を消したり、他の人に話を振ったりするようになってしまった。

そのため恋愛偏差値がいつのまにか最底辺レベルに達し、誰々が付き合っているらしいといった恋愛の噂にはめっぽう疎かったし、親切な友人が教えてくれるまで、わたしに好意をもってくれている男の子がいることに気づけないこともしばしばだった。

恋愛絡みのトラブルに巻き込まれないという利点がある一方で、みんなが知っていることを自分だけ知らない、という疎外感をずっと心のどこかで感じていた気がする。

『テラスハウス』に出会った26歳

昨年の春ごろ、とあるアニメ作品を観るためにNetflixsを契約した。友人にその話をしたところ、『テラスハウス』を観たほうが良いと熱烈にプレゼンテーションされた。

テラスハウスは、見ず知らずの男女6人が、一つ屋根の下で共同生活する様子をただただ記録したものです。用意したのは素敵なお家と素敵な車だけ。台本は一切ございません。(YOUさんによる、番組冒頭の定番セリフ)

わたしが大学生のころはたしかテレビで放送していたので、タイトルと、ふんわりした概要は知っていた。とはいえ恋バナ経験も少なく、この世代の人が愛聴してきた『あいのり』も見ずに育ってしまったので、「たぶん楽しんで見られないだろうなあ」と思った。しかし友人のプッシュがあまりにも強いので、そこまで言うならと、その日の晩に観てみることにした。

深夜0時、気付いた頃には、第6話が終わろうとしていた。

驚いた。ものすごく面白いのだ。

明らかにひとりの女の子を意識してついつい格好つけてしまう男の子。
気になる人がかぶったことを察知した後の、探り合うような女子同士の会話。
今にも付き合いそうな男女がデートに出かけた日、そわそわとする仲間たち。
勇気を出して外へ誘ったけど、アピールだと気付いてもらえず落ち込む子。

それまでわたしが見てこなかった「誰かの恋愛が成就するまで」が、画面のすぐ向こうにあった。

第3者の恋愛事情が見える面白さ

テラスハウスの鑑賞を通じて、わたしはいろいろな初めてを経験した。

ときには、恋するメンバーの気持ちに共感して一緒にどぎまぎする。
またあるときは、他の「それはちょっと違うんじゃない?」というメンバーの意見にうんうんと頷く。
そしてときには、誰にも共感できなくてうーんと首を傾げる。

26歳にして、恋バナの面白さを初めて理解できた気がした。

また、テラスハウスの面白さというのは、ただ鑑賞するだけにとどまらない。同じストーリーを観た人同士で感想や意見を交わし合う「擬似恋バナ」こそが、その真骨頂ではないかと思うのだ。

自分の恋愛観について、白紙の状態から語ることは難しくても、テラスハウスの感想を通じてなら、「ああいう状況でのキスは、ありか、なしか」というように、自分の恋愛観について話しやすい。なにより、学生のころに感じていた「恋バナについていけてない自分」という孤独感がものすごいスピードで解けていくカタルシスを感じた。

テラスハウスに出会ってそろそろ1年。今では、毎週新着エピソードが公開される火曜日を心待ちにする毎日である。

これからテラハを観る人にオススメのシリーズ(独断)

わたしのように、恋バナは苦手だけど克服してみたいという人には、自分と全く関係のない第三者の恋愛を眺めることができるという点で、テラスハウスの鑑賞を強くオススメしたい。

テラハデビューにどのシリーズが良いかレコメンドするとしたら、2016年の『TERRACE HOUSE ALOHA STATE』が断然オススメ。

恋愛が絡めば、いやでも人間関係がギクシャクしてしまうことがある。気まずい雰囲気になったり、ちょっとしたこと(たとえば食器の片づけを誰がやるかとか、共用スペースの使い方だとか)でケンカをしたり、テラスハウスではそういうリアルな情景を観察することも醍醐味の一つだけど、わたしのように恋バナ経験値が2くらいしかない人は、まず「恋愛の話って、面白い!楽しい!」と思えるところから始めた方が良いように思う。

このシリーズは、舞台となるハワイの美しい景色や温暖な気候が、恋愛のリアルな部分をちょうどよい具合に調和してくれているのか、全体的にスローというか、“チルアウト”な非日常感が漂っているのが特徴だ。メンバーも国際色豊かな人ばかりで、ひとりひとりの夢や恋愛観を垣間見るだけでも面白いので、進みが遅くて飽きてしまう、ということもない。家のソファでリラックスした気持ちで見ることができる「ちょうどよい」感じがわたし好みだった。

ちなみに、テラスハウスは副音声をオンにすると、スタジオメンバーと呼ばれるタレントたちの意見を聴きながら観ることができる。観ている自分と同じ気持ちが叫ばれたり、複雑な恋愛模様についての考察が話されたりするので、ひとりで見ていても、誰かと気持ちを共有する擬似体験ができる。非常に面白い。

これをオンにして観るか、オフにして観るかは人それぞれだけど(ちなみに友人はどちらも味わうために2回観るらしい)、これから観始めるという人はまず副音声ナシで見て、ある程度慣れてきてから副音声をアリにするのが良いかなと思う。恋バナ経験値が低すぎるうちは、まず住人達の会話に耳を澄ませるところから始めた方が混乱しなくて済む気がするから。

あと、慣れてきたら誰かと一緒に、感想を言いながら鑑賞する「スタジオメンバーごっこ」もたいへん楽しいのでオススメ。

とりあえず面白いからテラスハウス観て(語彙力喪失)

そういえばあのときの友人も同じように語彙力迷子になっていたような気がするのでした。
おしまい。

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